Yahoo!ニュース

シーズン再開前に…リーグワンD1・第6節ベスト15/クロスボーダー独自表彰【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
古巣チーフスを相手に奮闘のボーシェ(写真:つのだよしお/アフロ)

 日本ラグビー界のトップを決めるリーグワン1部は2月17日からの約2週間で第7節を消化。約1カ月間の中断期間を経ての再開となる。

 この間、前年度4強勢はスーパーラグビー・パシフィックのチーフス、ブルーズを招いての「クロスボーダーラグビー2024(CBR)」に参戦。故障のリスクと向き合いながら、公式戦以上の高強度のゲームへ身を投じた。

「ブルーズ戦、ありましたっけ?」

 冗談の口調で話したのは東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督だ。2月3日に組まれたCBRのブルーズ戦で7―43と敗戦。非公式戦とあり深い振り返りはしていないというが、列強国から学んだことは簡潔に整理していた。

 まず強い相手への防御では「受けるようになったら通用しない」。最初の踏み込みの一歩、それ以前のマインドセットを顧みている。

 さらに感銘を受けたのは、相手の接点での姿勢だ。ボール保持者への援護役に、ただ球を守るのではなく、「人(相手のジャッカル)に対して掃除していく」ような姿勢が見られたという。参考にしたいと言いたげだ。

 17日の第7節では、ここまで負けなしの埼玉パナソニックワイルドナイツを相手に6勝目を狙う。

 一昨季まで2シーズン連続日本一というワイルドナイツは、今度のクロスボーダーラグビーでチーフスを38―14で下している。向こうが若手主体でワイルドナイツが主力勢ぞろいであったのを踏まえても、愛好家に与えたインパクトは小さくない。殊勲のロック、ルード・デヤハーは言う。

「(CBRは)自分たちにとっていい試合になると思っていました。公式戦ではないですが、今後のシーズンを戦ううえで、チームにとってのいい試合になると捉えていました。今後上位陣と戦いますが、その前に身体を動かせた。サンゴリアス戦へいい準備ができた」

 ワイルドナイツの長所のひとつには 堅い守備がある。

 ひとりめの防御役が走者を倒すやすぐに起立。接点にふたりめが絡む間、ひとりめを含む14人のうち12人が堅陣を敷く。隙間を埋める。

 サンゴリアスとしては「人を掃除する」ようなファイトでひとりめ、ふたりめを接点に巻き込むなどして相手の快適さを奪いたいだろう。田中は言う。

「プレッシャーのなかでどれだけ我慢できるかが大事です」

リーグワン ディビジョン1 第6節 結果

三菱重工相模原ダイナボアーズ 34―36 東京サントリーサンゴリアス

埼玉パナソニックワイルドナイツ 70―12 三重ホンダヒート

リコーブラックラムズ東京 17―18 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

静岡ブルーレヴズ 50―12 花園近鉄ライナーズ

横浜キヤノンイーグルス 27―31 コベルコ神戸スティーラーズ

トヨタヴェルブルリッツ 12―28 東芝ブレイブルーパス東京

リーグワン ディビジョン1 第6節 私的ベストフィフティーン

1,西和磨(リコーブラックラムズ東京)…フィールドプレー、スクラム。

2,武井日向(リコーブラックラムズ東京)…抜け出す選手へのサポート、突進。

3,細木康太郎(東京サントリーサンゴリアス)…スクラム、キャリー。

4,マックス・ダグラス(横浜キヤノンイーグルス)…ラインアウトで再々のスティール、ジャッカル。

5,ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…相手ラインアウト時のスティール、背走しながらの防御、チョークタックルなどで空中戦と局地戦を制する。

6,ピーター・スティフ・デュトイ(トヨタヴェルブリッツ)…モール防御、接点での奮闘。

7,ラクラン・ボーシェ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…タックル、ジャッカル。

8,アマナキ・レレイ・マフィ(横浜キヤノンイーグルス)…強烈な突進、ジャッカル。

9,藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…ショートサイドへの仕掛けとオフロードパスの合わせ技、死角へのキック。

10,ジェームス・グレイソン(三菱重工相模原ダイナボアーズ)…対角線へのキックパスを重ねてチャンスを創出。エリア合戦でも光った。

11,マット・ヴァエガ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)…ビッグゲイン。

12,リカス・プレトリアス(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…キックチェイス、防御を引き寄せながらのパス。

13,ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…鋭い出足でフィニッシュ。防御でも奮闘。

14,野口竜司(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…バックスペースへのカバー、キックを追って圧をかける走り。

15,サム・グリーン(静岡ブルーレヴズ)…50・22のキック、後衛のカバーリングでエリア合戦を優位に進めた。オーバーラップを作ったうえでの突破も光った。

クロスボーダーラグビー2024 結果

東京サントリーサンゴリアス 7―43 オークランド・ブルーズ

埼玉パナソニックワイルドナイツ 38―14 ギャラガー・チーフス

横浜キヤノンイーグルス 22―57 オークランド・ブルーズ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 30―35 ギャラガー・チーフス

クロスボーダーラグビー2024 私的表彰

★MVP…アントン・セグナー(オークランド・ブルーズ)チャンスメイク、ブレイクダウンでのファイト。

★新人賞…江良颯(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…チーフス戦の後半から登場しスクラムで存在感。

★MIP…ラクラン・ボーシェ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…チーフス戦で強烈なジャッカル、ランで勝利を掴んだ。

★ベストフィフティーン

1,稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

2,江良颯(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

3,アンガス・タアヴァオ(オークランド・ブルーズ)

4,サム・ダリー(オークランド・ブルーズ)

5,ルード・デヤハー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

6,アントン・セグナー(オークランド・ブルーズ)

7,ラクラン・ボーシェ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

8,ホスキンス・ソトゥトゥ(オークランド・ブルーズ)

9,藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

10,スティーブン・ペロフェタ(オークランド・ブルーズ)

11,松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)

12コーリー ・エヴァンズ(オークランド・ブルーズ)

13,ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

14,ケイリブ・タンギタウ(オークランド・ブルーズ)

15,リアム・ウィリアムズ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事