メトロポリタン美術館館長に対面取材 「日本美術」と「眞子さんの噂」について聞いてみた
ニューヨークにあるメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)、通称The Met(メット)。1870年の創立以来、世界三大美術館の一つとされ、当地で観光客がもっとも訪れる人気スポットの一つだ。
同美術館の館長で今年7月にCEOに就任したマックス・ホレイン氏が先月28日、外国人記者を対象に、21世紀における同館の取り組みをテーマに記者会見を行った。
メットでは、5000年以上にわたる世界中の歴史的な文化・芸術遺産を収蔵、常設展示している。これに加え年間50、60もの企画展を仕掛けているという。国立ではなく民間財団でありながらこれほど多くの歴史的な芸術作品を展示できることについて、ホレイン氏は会見冒頭で「行政や企業などさまざまな機関から寄付も含む莫大な支援を受けて運営が成り立っている」と感謝の意を表した。
ポストコロナで旅行需要が復活する今、建物前には入場待ちの人々が列を成し、館内は人々で溢れ返っている。しかし客足の回復はコロナ禍以前と比べ80%だという。そんな中、メットは今転換期を迎えようとしている。
「今後10年間で、館内のインフラ整備だけで20億ドル(約2990億円)を投資し、新たなプロジェクトを仕掛けていく」とホレイン氏。
その第一弾は、展示の目玉となるヨーロッパ芸術の一大コレクション「45 European Paintings galleries」の改修だ。同館メインロビーから階段を上ったすぐの場所にある45もの展示室(3万平方フィート、約2800平米)は現在リノベーション中で、11月20日のオープンに向け準備が進められている。
このスペースでは、1300年から1800年にかけてのヨーロッパの名画や彫刻など700点以上が、新たなアプローチで展示される予定だ。改修工事には天窓も含まれる。1939年以来の改修となった天窓の工事は2018年にスタートしこのほど完了したばかり。改良された天窓からの柔らかい自然光による新たな鑑賞体験が実現しそうだ。
ほかにも今後10年かけてメットではさまざまなセクションの改修が続いていくという。ホレイン氏は「単なるハコとしての場所ではなく、世界中のアートシーンとのコラボレーションで、新技術を取り入れながら立体的な発信を仕掛けていく」と抱負を語った。
ホレイン氏はこの後、各国記者の個別質問にも応じてくれたので、筆者は以下の質問を投げかけてみた。
Q. メットにおける日本アートについて、お話しいただけますか?
ホレイン氏「ご存じのように私たちメットは日本芸術を扱うメジャーなギャラリーを持ち、20世紀の芸術を中心に収集規模が拡大しつつあります。ここでも半年ごとに新たな企画に取り組み、素晴らしい芸術品を展示しています」
Q. 昨年メットで開催された「キモノ展」は実績としてどうでしたでしょうか?
ホレイン氏「ヨーロッパのコスチュームデザイナーなどにも多大なる影響を与えた日本の着物は、ただの文化の輸出だけでなく、20世紀には西洋スタイルからの影響も受けるなど相互に作用し合い、文化的な対話を果たしました。メットではさまざまなドネーションを得て着物にまつわる文化を紹介しました」
Q. ということは、展覧会は成功したというお考えでよろしいでしょうか?
ホレイン氏「はい、展覧会は成功しました」
同氏によると「メットでは約2000人の従業員がアート活動に従事している」という。アートを学び志す者であれば、誰でも一度は「働いてみたい」と思う場所であろう。
就職と言えば、小室圭さんと結婚しニューヨークに移住した小室眞子さんが昨年春、メットのアジアアート部門で、アシスタントキュレーターのインターンとして勤務を開始したと、日本の一部メディアが報じた。
しかしその後、眞子さんがメットで働いていないという噂も立ち、真偽のほどは不明だ。
(ほかの記者から挙手が続く中)
Q. すみません、あともう一問だけ、噂についてもお伺いできますか?ニューヨークに移住した日本の元プリンセス(小室眞子さん)がメットで働き始めたと、日本のタブロイド誌が報じました(外国人記者の間でも知られているのか、記者の一部が一瞬どよめく)。これについてもコメントをお願いします。
ホレイン氏「はい。それについてのコメントは…彼女は(考えているように聞こえた)、彼女は従業員ではありません」
同氏は言葉少なに語り、眞子さんがここで働いていることを否定した。記者会見に参加した記者は多く、筆者の持ち時間は残念ながらここで終了となり、これ以上の追加質問をすることは叶わなかった。
眞子さんの就職がどうなったのか気になっていたのは筆者だけではなかったようで、会見後、参加していた別の日本人記者に「あの質問良かったです」と声をかけられた。実際にホレイン氏から得られた情報は多くはないが、メットの日本芸術への取り組み、および眞子さんの就職の真相について、代表者に直接質問できたことは、筆者にとって貴重な機会となった。
(Text and photos by Kasumi Abe) 本記事の無断転載やAI学習への利用禁止