アルバルクの選手層に厚みを増す要因になっている日本生まれのアメリカ人
日本のバスケットボール界が注目したBリーグ開幕戦。緊張のせいなのか、アルバルク東京と琉球ゴールデンキングスの選手たちにつまらないミスが多かった。そんな中、「開幕戦の素晴らしい雰囲気の中で緊張することなく、逆に楽しんでやったことでいい結果につながったと思う」というアルバルクのザック・バランスキーは、1Q1分3秒にシーズン初得点となる3Pシュートで決めてリズムをつかむと、25分37秒の出場で13点、3リバウンド、2スティールでチームの勝利に貢献した。栃木生まれの長野育ちで、日本の生活はすでに17年。義務教育を受けたこともあり、Bリーグでの登録上は日本人選手と同じ。とはいえ、大舞台でも緊張することなく楽しめたというメンタリティは、アメリカ人だなと感じさせた。
今季は竹内譲次やトロイ・ギレンウォーターのバックアップ役ながらも、21分強の出場時間で平均7.6点、3.7リバウンドをマーク。アルバルクの指揮官を務める伊藤拓摩が、「バスケットボールIQが高いですし、生かされ方も生かし方も知っている。我々のオフェンスは彼が生きるシステム」と語るように、チームに欠かせない存在になっているのは明らかだ。
東海大からNBLにアーリー・エントリーした後に迎えた実質1年目の昨季は、選手層の厚いチームの中で出場時間を確保できずにいた。気持の整理がつかずに葛藤する時期に直面するも、「そんな中で正中(岳城)選手や二ノ宮(康平)選手が、どんなに試合でていなくても一番努力をしていて、練習をやっていました。それがすごく僕の励みになったし、いつも引っ張ってくれた。だから、今の活躍につながっていると思います。2人の努力というか、背中で見せる感じが僕にすごく響きました」と、ベテラン2人の存在がメンタル面での成長へとつながる。
そして、Bリーグ開幕に向けて準備を進めたこの夏、バランスキーは3Pを含めたジャンプシュートの精度を上げるために最大限の努力をした。開幕戦での3Pシュート3本成功によって、大きな自信をつかんだのはまちがいない。また、193mの身長で相手の主力となる外国人のビッグマンとマッチアップをしても、普段の練習で竹内、ギレンウォーター、アンドリュー・ネイミックを相手に対応策を学び、試合で実践できていることも、伊藤コーチからの信頼度が上がっている理由だろう。
2m前後でウイングのプレイを武器にするアメリカ人とのマッチアップでも、一方的にやられることはほとんど見られない。「より大きな相手についてゴール下でやられることはあるのが課題ですけど、僕が3Pを打てることによって守りづらくなるし、僕が穴になるのではなく、アドバンテージになるという気持でやっています」と語るように、スクリーンをかけた後のポップアウトから決められる3Pシュートは大きな武器になりつつあるし、バランスキーの成長がアルバルクの選手層の厚みを増したことの証明と言えよう。
「これからもどんどんうまくなりたいし、自分のバリエーションを増やしていかなければならないと思います」
23歳の若者は心技体で成長しているといえ、現状に決して満足していない。自身のレベルアップとアルバルクのBリーグ制覇に貢献するため、ハードワークの日々が続く覚悟はできている。