オートバイのあれこれ『ホンダには負けられへん。』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今宵は『ホンダには負けられへん。』をテーマにお話ししようと思います。
『Z1』。
バイクに興味がある人であれば、一度はこの車名を聞いたことがあるのではないでしょうか。
「Z1」こと『900Super4』は、カワサキが1972年(昭和47年)に世に放ったオートバイです。
1960年代後半、カワサキは『500SS マッハⅢ』といった2ストロークのバイクで市場のシェアを得つつ、水面下では4ストロークの開発も進めていました(「N600」計画)。
4スト・並列4気筒・排気量750ccのバイクを作るこの計画は1967年から密かに進んでいたわけですが、68年、その歩みが大きく揺らぐ出来事が起こります。
なんとホンダが、N600と全く同じ形のエンジンを持つ『ドリームCB750FOUR』を発表したのです。
頭に思い描いていたもので、ホンダに先を越されてしまったカワサキ。
まさかの展開だったのは言うまでもありません。
ただ、もちろん一つの選択肢として「N600」をそのまま継続することも可能と言えば可能でした。
というよりむしろ、その道を選ぶことのほうがカワサキにとってもラク&無難だったでしょう。
しかし、カワサキにはプライドがありました。
「ヨソと同じことをやってたらあかんやろ」
「ホンダには負けられへん」
「やるからには、勝たなあかん」
カワサキは、ホンダを凌駕する世界一のオートバイを作ると、腹を括ります。
「N600」の計画をすぐに取り下げ、CBを上回るツインカムヘッド(DOHC)&排気量900ccを持つオートバイの開発に着手。
試行錯誤の日々を約5年間続け、ついにZ1が生まれたのでした。
903ccのDOHC2バルブ4気筒エンジンを携えたZ1は、最高82psを発揮しゼロヨン加速は12秒、トップスピード約210km/hを達成。
見事Z1は、その圧倒的な性能で以てして、ホンダのCBを打ち負かしてみせたのでした。
言わずもがな、このZ1は世界的に大ヒットを飛ばし、ここからカワサキは世界に誇る二輪メーカーへと躍進していきました。
「やるからには、勝たなあかん」
カワサキの覚悟・意地・そしてハングリー精神の賜物が、このZ1なのです。