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オートバイのあれこれ『ホンダには負けられへん。』

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。

今宵は『ホンダには負けられへん。』をテーマにお話ししようと思います。

『Z1』。

バイクに興味がある人であれば、一度はこの車名を聞いたことがあるのではないでしょうか。

「Z1」こと『900Super4』は、カワサキが1972年(昭和47年)に世に放ったオートバイです。

▲KAWASAKI・900Super4(Z1/1972)
▲KAWASAKI・900Super4(Z1/1972)

1960年代後半、カワサキは『500SS マッハⅢ』といった2ストロークのバイクで市場のシェアを得つつ、水面下では4ストロークの開発も進めていました(「N600」計画)。

4スト・並列4気筒・排気量750ccのバイクを作るこの計画は1967年から密かに進んでいたわけですが、68年、その歩みが大きく揺らぐ出来事が起こります。

なんとホンダが、N600と全く同じ形のエンジンを持つ『ドリームCB750FOUR』を発表したのです。

▲ホンダ『CB750FOUR』。奇しくも「N600」計画と同じようなオートバイだった
▲ホンダ『CB750FOUR』。奇しくも「N600」計画と同じようなオートバイだった

頭に思い描いていたもので、ホンダに先を越されてしまったカワサキ。

まさかの展開だったのは言うまでもありません。

ただ、もちろん一つの選択肢として「N600」をそのまま継続することも可能と言えば可能でした。

というよりむしろ、その道を選ぶことのほうがカワサキにとってもラク&無難だったでしょう。

しかし、カワサキにはプライドがありました。

ヨソと同じことをやってたらあかんやろ

ホンダには負けられへん

「やるからには、勝たなあかん」

カワサキは、ホンダを凌駕する世界一のオートバイを作ると、腹を括ります。

「N600」の計画をすぐに取り下げ、CBを上回るツインカムヘッド(DOHC)&排気量900ccを持つオートバイの開発に着手。

試行錯誤の日々を約5年間続け、ついにZ1が生まれたのでした。

903ccのDOHC2バルブ4気筒エンジンを携えたZ1は、最高82psを発揮しゼロヨン加速は12秒、トップスピード約210km/hを達成。

▲「ホンダと同じことは絶対にせえへん」。カワサキのプライドが生んだ900ccDOHCエンジン
▲「ホンダと同じことは絶対にせえへん」。カワサキのプライドが生んだ900ccDOHCエンジン

見事Z1は、その圧倒的な性能で以てして、ホンダのCBを打ち負かしてみせたのでした。

言わずもがな、このZ1は世界的に大ヒットを飛ばし、ここからカワサキは世界に誇る二輪メーカーへと躍進していきました。

「やるからには、勝たなあかん」

カワサキの覚悟・意地・そしてハングリー精神の賜物が、このZ1なのです。

▲カワサキの覚悟が生んだ、世紀の名車だ
▲カワサキの覚悟が生んだ、世紀の名車だ

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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