『カルテット』『東京タラレバ娘』『就活家族』などの意欲作に加え、元ＳＭＡＰの２人も、それぞれに主演を務めている今期ドラマ。そうした表通りもいいのですが、ちょっと奥まったところにもいいお店、いや、楽しめるドラマがあったりします。『バイプレイヤーズ』は、まさにそんな１本です。

「七人の侍」ではなく、「６人の脇役」

ドラマや映画で、誰もが一度は見かけたことのある顔が並ぶ。俳優の大杉蓮、松重豊、遠藤憲一、寺島進、光石研、田口トモロヲ。いずれも脇役でありながら、時には主役を「食っちゃう」こともある実力派だ。

そんな６人を集めた深夜ドラマが、『バイプレイヤーズ～もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら～』（テレビ東京系）。しかも、たとえば遠藤の役名は「遠藤憲一」であり、大杉もまた「大杉蓮」という役者を演じるという、ドラマ好きには嬉しい“ひねり技”である。

ある日、彼らの元に仕事が舞い込む。映画『ＨＥＲＯ』や『ＬＯＶＥＲＳ』などで知られる、中国のチャン・イーモウ監督が、黒澤明監督の名作『七人の侍』をリメイク（観たい！）するというのだ。主演は役所広司（当人はオファーを知らなかったけど）で、残りの主要人物６人への大抜擢だった。ただし条件があり、役者同士の絆を深めることを目的に、クランクインまでの3ヶ月間、合宿生活を送らなくてはならない。結局、６人は出演を快諾。一つ屋根の下での奇妙な日常が始まった。

役者が「自分」を演じるというのは、そう簡単なことではない。「役者である自分」を演じるのも、「素の自分」ではなく、あくまでも「役者の自分」なのだ。遠藤憲一が遠藤憲一を演じることで、見ている側は、虚実皮膜の二重の楽しみを得る。いや、もちろん、すべてがドラマというフィクションの風呂敷に包まれてはいるのだけれど。

パロディーの煙幕の中から・・

彼らが参加している、フェイク（偽）ドラマ、パロディードラマの制作現場の”あるある感”が半端じゃない。松重と遠藤が撮っている刑事ドラマ『相方』（！）では、松重が着ているのはスーツで、遠藤はフライトジャケット。スタッフの間で、「２人は仲が悪い」「本当は共演ＮＧ」といった噂が広がり、最後には本人たちも疑心暗鬼となる。

また光石は、『Ｗ不倫の悲劇』なるドラマで、共演の女優・山口紗弥加（本人）と、劇中さながらの不倫関係に陥りそうになる。

さらに、寺島と田口が出演しているのは、清水富美加主演の特撮ヒーロー物『孤独戦士　サムライ嬢（ジョー）』だ。かつて、実際に『仮面ライダーフォーゼ』のヒロイン、城島ユウキを演じていた清水は、張り切って「頑張ります！」「押忍（おす）！」を繰り返す。悪役「ドクター・ゲルゲ」の田口（『仮面ライダー THE NEXT』に出ていた）は、物語の流れも無視して自分の役柄にこだわりまくる。階段落ちのリハーサル場面では、元祖“階段落ち男”（映画『鎌田行進曲』）である俳優の平田満が、単なる通りすがりとして登場した。こうした、本気の遊び心が嬉しいのだ。

そうそう、毎回、６人の会話の中で連射される、ドラマや芸能界をネタにした “ちょっと危ない話”が堪（たま）らなく可笑しい。ＮＨＫや民放各局も実名で登場する。あの「文春砲」も話題になる。パロディーの煙幕の中から、「脇役あるある」も含め、テレビ界・芸能界の”笑える真実”を探してみるのも、この深夜ドラマの醍醐味（だいごみ）だ。