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EXILE THE SECONDのツアーはエゴが皆無――SHOKICHI、NESMITHインタビュー

宗像明将音楽評論家
SHOKICHI、NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)

2024年6月5日、EXILE THE SECONDが約6年ぶりとなるニュー・アルバム『THE FAR EAST COWBOYZ』をリリースした。映像ディスクには、今年開催されたツアー「EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2024 "THE FAR EAST COWBOYZ"」のライヴ映像を早くも収録。さらに12月には、アンコール公演「EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2024 "THE FAR EAST COWBOYZ" ~THE ENCORE~」の開催も決定している。まさに2024年を駆け抜けているEXILE THE SECONDについて、EXILE SHOKICHIとEXILE NESMITHに話を聞いた。

EXILE THE SECONDが一塊となっていることを感じた

EXILE SHOKICHIとEXILE NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)
EXILE SHOKICHIとEXILE NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)

――約6年ぶりのニュー・アルバム『THE FAR EAST COWBOYZ』には、今年3月から5月にかけて開催された6年ぶりとなるアリーナ・ツアー「EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2024 "THE FAR EAST COWBOYZ"」の映像も収録されますが、このスピード感はどこから生まれたものでしょうか?

NESMITH 今回はツアーが始まる直前にEP(『THE FAR EAST COWBOYZ E.P.』)のリリースがあって、「6月のアルバムに向けて映像も入れましょう」というお話があったので、自分たちの熱が冷めないうちに、早いタイミングでみなさんに映像も届けさせていただこうという形になりましたね。

――福岡、横浜、長野、大阪、三重を回ったツアーの手ごたえはいかがでしたか?

SHOKICHI いやぁ、すごくいい手応えでしたね。自分の伝えたいものがみなさんにしっかり伝わったなって思いましたし、グループとしても濃くなったというか、グループ力が上がったんじゃないかなと思います。

――グループ力が上がったのはどこで感じましたか?

SHOKICHI 曲を歌唱させてもらうなかで、ファンのみなさんに届いてる感じは、歌っていても伝わってくるんです。みんながひとつになっている感じがしたんですよね。なかなか味わえるものではなくて、デビュー以来かもしれません。

――デビュー以来というのは長いですね。

SHOKICHI そうですね。デビューの頃って何も知らないで、将来活躍できることだけを信じてやってる感じでしたけど、大人になっていくと、それぞれの想いの強さや、目標や夢が生まれてくるなかで、バラバラとは言わないですけど、一塊となることってすごく難しいんです。だけど、今回は一塊となっていることをすごく感じました。グループとして本当に素晴らしいことだと思います

NESMITH 前の僕たちは、見せ方へのエネルギーがすごくって、肩に力が入っていて「俺たちこれで行くぜ!」っていうようなパワーがあって。それはそれでいいんですけど、自分たちが今まで経験してきたことが、パフォーマンスや歌に昇華されて、肩の力が抜けたというのが一番大きいですね。今回のツアーを通して、「今、僕らが自由度の高いことをやっても大丈夫」というファンのみなさんとの絆があって、そういうなかで生まれた表現もありましたね。

EXILE SHOKICHI(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)
EXILE SHOKICHI(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)

――グループ力についてはいかがでしたか?

NESMITH 阿吽みたいなものはより強くなったと思います。誰かが何かの表現をしてるとき、それに呼応して自分も歌やパフォーマンスに何かをプラスアルファしたり。バンド・メンバーも前からやっていただいてる人たちで、今回もいろいろ対応してくれて、バンドとの呼吸も合っていて、いろんなものがひとつになったという印象がありますね。

――会場ごとの反応の違いもあったでしょうか?

NESMITH 6年ぶりのアリーナ・ツアーで、5都市9公演っていうだいぶ濃密な期間でのツアーだったので、「もっと見たい」と県をまたいで別の公演にも足を運んでいただく方も多くいらっしゃって、そういったみなさんの期待値、期待感というのをすごく感じられたツアーだったなと思います。

SHOKICHI 今回は、満遍なくとても盛りあげられていたんじゃないかなと思いますね。

――ツアーで特に印象的だった出来事を教えてください。

SHOKICHI ファイナルでTETSUYAさんが涙を見せて。十何年やってきて、これまでなかったことでした。それほど僕ら自身、感動することができたんです。

――TETSUYAさんに涙の理由は聞きましたか?

SHOKICHI 本当に感動したんじゃないですかね。しっかり踊れていることだったり、ファンの人が来てくれることだったり、音楽自体だったりに感動したんだと思いますね。

NESMITH 僕個人としては、今回のツアーではひとりでやる寸劇があったんです。大阪公演のサプライズで、GENERATIONSの(小森)隼やFANTASTICSの(中島)颯太が出てくれて、後輩たちと久しぶりに「Choo Choo TRAIN」をパフォーマンスしたんです。その姿を久しぶりに見て、EXILE魂のようなソウルを久しぶりに感じられたのは印象に残ってますね。隼は小学生からずっと踊っていて、「オカザイル」でも岡村(隆史)さんと一緒に並んでやっていて、長く「Choo Choo TRAIN」を踊っているんです。僕も40代になってきて、「こういうふうに継承されていくんだな」っていうのを目の当たりにしてちょっと感動しましたね。

――万単位の人を相手に寸劇をするのはすごいなと感じました。

NESMITH 「相当難しいな」とヒヤヒヤしてましたよ(笑)。早口で詰めこみすぎてもいけないし、でも間を空けすぎちゃいけないし、頭フル回転でしゃべってましたね。やることは3つぐらい決めていて、そのつなぎはアドリブでしゃべってるんです。その公演地域のことだったり、お客さんからのリアクションにリアクションしたり、方言だったりをちょっとずつ入れながらでした。

――その日その日でインタープレイみたいなことをやっていたわけですね。

NESMITH やってましたね。ファイナルは母の日で、うちの母も来てたので、お母さんに感謝を伝えたり、メンバーにも「来てるかもしれないから言って」と言っておいたり、いろいろメンバーにもご迷惑をかけたというか(笑)、いろいろ絡ませていただいて自由にやらせてもらいましたね。

EXILE NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)
EXILE NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)

――今回のライヴ映像の見どころはどこでしょうか?

SHOKICHI もうSECONDのライヴの特徴でもある一体感が生まれているのが見どころなのかなと思いますね。

――ファンのみなさんとのコミュニケーションを重視したツアーだったのでしょうか?

SHOKICHI まさにそうですね。だから自分たちのエゴみたいなものが本当に皆無だったと思います。

――ファンのみなさんに喜んでもらうことに振り切っている?

SHOKICHI それもありますし、ずっとキャリアを進めて、それ以外に目的がないことを知ったというか。

――それは大きなことですね。

SHOKICHI そうですね。楽しんでもらうこと以外に目的がないんです。一緒にステージに立ってくれたTHE JET BOY BANGERZという新しいグループの飛躍につながればいいなというのはちょっとありましたけど、本当に来てくれるみんなに、ただただ楽しんでもらうだけでした。

――それを自分も楽しんでいる、みたいな?

SHOKICHI それが楽しいですね。音楽のメロディーしかり、歌詞しかり、ダンスしかり、全部楽しんでもらうためだけのもので、それでみんなの心をひとつにできたんですよね。

NESMITH まさに今SHOKICHIが言ってくれたことが、僕も考えてたことなんです(笑)。前回のツアー「Twilight Cinema」(『EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2023~Twilight Cinema~』)は、5人ひとりひとりにスポットが当たるようなシーン作りをしていたツアーなんですけど、今回はEXILE THE SECONDっていうグループとしてできることのすべてを詰めこんだツアーになっていると思うんです。EXILE楽曲を自分たちだからこそ原曲通り表現できたり、少しアレンジも含めてやれたりという強みも、また今回もすごく入れこんであります。そういうグループとしてのチーム力も、また映像で感じてもらえるんじゃないかなと思います。

NESMITHが憧れのGLAYのTAKUROと共作

EXILE SHOKICHIとEXILE NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)
EXILE SHOKICHIとEXILE NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)

――『THE FAR EAST COWBOYZ』の収録曲のうち、『THE FAR EAST COWBOYZ E.P.』収録曲以外について教えてください。「Twilight Cinema」は、「EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2023 ~Twilight Cinema~」のテーマソングですが、今聴いていかがでしたか?

SHOKICHI 当時別れというものをテーマに曲を書いて、「さよなら」が作るストーリーでもハッピーエンドに向かってるんだとわかれば、悲しいことも糧になるという想いを込めましたね。前回のツアーのテーマソングだったんですけど、今回はEXILE THE SECONDというグループのテーマソングという感じが、めちゃめちゃしっくりきました。

NESMITH 歌詞の想いだったり、「Twilight Cinema」の曲力をファンのみなさんが汲み取ってくれて、すごく強く大きく育ったなって感じますね。昨年も今回も歌い続けて、みなさんと景色を共有してきたからこそ、この曲自体もいろんな経験値を積んで成長して、今の僕らの芯になるような楽曲になったんじゃないかなと思います。

――「NEVER SAY GOODBYE」は、AKIRAさんが出演する台湾のリアリティーショーのエンディング用バラードです。中国語と英語による楽曲ですが、発音は大変だったのでは?

SHOKICHI 発音はめちゃめちゃ大変でした。一番苦労しましたね。自分の作曲キャリアのなかで中国圏の方々とも何回かセッションしたことあるので、「このタイミングであの方だ」みたいな感じで、その方と一緒に作った感じですね。発音も常にディレクションしてもらって、トライしましたね。

――とはいえ相当大変だったんじゃないですか?

SHOKICHI 相当大変でした。たしか12時間ぐらいかかったかな? ちょっと盛ったかな(笑)。

――ふだんの歌入れはどのぐらいなんですか?

SHOKICHI 2時間なので、何倍もかかりましたね。

NESMITH 「日本語でこういうことを歌いたい」っていうものを、その国の言葉にトランスレートすると、ニュアンスや玉数(言葉を乗せられる音数のこと)が違ったり、制約が入ってくるんで、そこも含めて今までのSHOKICHIのキャリアにはなかった大変な経験だったと思いますね。

――台湾での反響はいかがですか?

SHOKICHI すごく発音のこともほめてくださっていますね。曲自体がすごくいい感じに仕上がったし、いい機会をいただいて感謝ですね。

――「high-five~歓喜の音~」は、NESMITHさんのソロ歌唱曲で作詞も担当していますね。作曲を担当したGLAYのTAKUROさんと一緒に、競泳日本代表の渡辺一平選手に楽曲を贈った経緯を教えてください。

NESMITH 一平くんがLDHに所属していて仲良くさせていただいていて、彼を含めてTAKUROさんと食事をさせていただいたときに、前回の東京オリンピックに向けて、一平くんのテーマソングを作って応援しようという話になったんです。僕もGLAYさんをずっと聴いていたので、TAKUROさんの楽曲で歌を歌わせていただきたいという自分の夢もおこがましくも乗せて楽曲を作ろうということになり、約4年前に楽曲自体はできあがってたんですけど、一平くんが東京オリンピックに残念ながら選出されなくて。でも、一平くんがトライして、今回パリ・オリンピックの切符を手にしたので、歌い直して、音もブラッシュアップして、再レコーディングさせてもらって、今回アルバムにも入れさせていただけることになりました。

――TAKUROさんとの共作はいかがでしたか?

NESMITH デモ段階から楽曲を選曲して、レコーディングもTAKUROさんにディレクションに入っていただいたんです。仮歌を入れるときもTAKUROさんにも入っていただいて、歌詞もTAKUROさんからのアドバイスで「もう少しストレートな言葉を言ったほうがいいんじゃない?」って言っていただいたり。自分にとって憧れのヒーロー的な存在の方と楽曲を作れたっていう喜びは大きな経験にもなりましたし、夢を叶えられたという思いもあります。今回歌い直しをするタイミングでも、スタジオの別の部屋にGLAYさんがいらっしゃって、引き寄せの力を感じたので、一平くんにはそれを自分の泳ぎの力に変えてもらって、金メダルを目指してもらいたいなと思います。

SHOKICHI やっぱり意味のあるストーリーは、必ずその楽曲を強くしてくれるし、すごく壮大で力強い楽曲に仕上がってるなと思いましたね。

EXILE SHOKICHIとEXILE NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)
EXILE SHOKICHIとEXILE NESMITH(提供:エイベックス、撮影:はぎひさこ)

――ツアーを通してファンの皆さんとXでコミュニケーションして一緒に制作されたムービーも公開となります。ファンのみなさんのどんな反応が楽しみでしょうか?

SHOKICHI ツアーを思い出してほしいですし、振り返って「またライヴ行きたいな」と思ってくれたらいいなと思いますね。

NESMITH 今までやってこなかったトライなので、ファンのみなさんも、どういう形になるのかなとワクワク楽しみにしていただいてると思うんです。この約3か月のツアーのなかでの思い出を振り返ってもらいたいし、今回のツアーが、楽しくて有意義な時間だったと思い返してもらえるような映像作品になったらいいなと思いますね。

――12月に開催が決定した大阪と静岡での追加公演「EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2024 "THE FAR EAST COWBOYZ" ~THE ENCORE~」について、意気込みをお願いします。

SHOKICHI みんなの応援があって追加公演ができて感謝ですね。ファイナル公演から時間を空けて、また新鮮な感じでみんなに楽しんでもらいたいなと思いますね。ベースとなるコンセプトは一緒なんですけど、ちょっとシーズンならではのアレンジをして、面白い感じにできたらなと思いますね。

NESMITH ファイナルから追加公演まで約半年あって、期間を空けてどうブラッシュアップさせるかっていうトライも初めてなので、自分たちもまた新鮮な気持ちでステージに立てると思います。その会場で1公演ずつしかないので、かなり気合いも入れて、季節柄や楽しいことも詰めこんだライヴにしたいなと思います。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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