「猫が顔を洗うと雨が降る」には根拠があった?!人だけのものじゃない「猫の気象病」のケアを解説
「猫が顔を洗うと雨が降る」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。もちろん、猫は毎日毛づくろいを行う動物なので、雨の日だけ顔を洗うわけではありません。しかし、この言い伝えは全く根拠のないものとも言い切れないのです。
実は、猫は気圧の変化に敏感な動物。低気圧が近づくと、人間の気象病のような症状を示すことがあります。猫の体調や行動の変化を見て、雨が近づいていることに気づく可能性は十分にあるのです。
この記事では、低気圧が猫に与える影響についてサイエンスライターの筆者がわかりやすく解説します。猫が気圧の変化を感知するメカニズムや、低気圧の日に見られる猫の様子の変化だけでなく、飼い主ができるケアについてもご紹介していますのでぜひ読んでみてくださいね。
低気圧になると猫の毛づくろいが増える
低気圧が近づくと、猫の毛づくろいが増えることがあります。これは、猫にとって低気圧が雨を連想させ、不安を引き起こすためだと考えられています。
猫は本能的に雨を嫌います。濡れることで体温が奪われたり、敵から身を守る能力が低下したりするためです。低気圧は雨の前兆であり、猫にとっては不安を感じるサインなのです。
不安を感じた猫は、ストレス解消のために毛づくろいを始めます。これは「転移行動」と呼ばれる心理学の概念で、ストレスを感じたときに本来の欲求とは関係のない行動を取ることを指します。猫の場合、毛づくろいにはリラックス効果があるため、何度も毛づくろいを行うことで低気圧による不安を軽減しているのでしょう。
また、猫のヒゲは非常に高感度のセンサーであり、空気の流れや微細な振動を感じ取ることができると言われています。気圧の変化に伴う空気の動きや建物の微妙な振動などをヒゲで感じ取っているかもしれません。さらに、低気圧の日は湿度が高くなり、湿度の上昇によってヒゲに水分が付着します。低気圧になるとこのようにヒゲにさまざまな不快感が加わり、それを取り除こうとして毛づくろいが増えている可能性もあります。
「猫が顔を洗うと雨が降る」は雨の前によく猫が顔を洗う様子を表した言葉なのかもしれません。
毛づくろいだけじゃない!猫の「気象病」とそのケア
低気圧の日には、毛づくろい以外にも猫の行動に変化が見られます。たとえば、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学の研究グループが行った調査では、気圧の変化が猫の呼吸に影響を与えることがわかりました。外気圧の変化に伴い、猫の呼吸パターンや気管支の収縮に変化が観察されたのです。この結果は、低気圧が猫の体調に直接的な影響を及ぼすことを示唆しています。
そのほかにも低気圧になると猫に以下のような症状が見られることがあります。
- 睡眠時間の増加
- 食欲の低下
- 排泄の減少
- 物陰に隠れる
これらの症状は、猫が気圧の変化によって耳や鼻に不快感を覚えるためだと考えられています。人間と同じ仕組みで猫にも「気象病」のような症状が現れるのです。
不快感を感じた猫は、安静にすることで症状を和らげようとします。その結果、物陰に隠れるなど安心できる場所で眠る時間が長くなり、活動量が減った結果、食欲が低下し、排泄の回数も減少します。
このような猫の「気象病」に対し、飼い主ができることは何より猫が安心できる環境を整えてあげることです。具体的には、隠れられる場所を用意し、適切な室温・湿度を保つことで、猫のストレスを和らげることができるでしょう。また、構いすぎない範囲で優しい声かけやスキンシップを行って、猫が安心できるようサポートしてあげてください。
雨の日は猫と一緒にのんびり過ごそう
猫は気圧の変化に敏感で、低気圧の日には毛づくろいが増えたり、いつもと違う行動を取ったりすることがあります。猫の気象病の多くは、低気圧の状態が去るまで様子をみておいて大丈夫ですが、中には他の急を要する病気の兆候と似ているものもあることを覚えておいてください。もしも食欲がまったくない、排泄の回数が極端に少ないなど、気になる症状が見られたら、ぜひ動物病院に相談してみてくださいね。
低気圧の日が続くと、私たち人間も気分が落ち込んだり、体調が優れなかったりと、多かれ少なかれ不調になるものです。そんなときは猫を見守りながら、一緒にのんびり過ごしてみてはいかがでしょうか。