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この捕手の獲得は、あのスラッガーの捕手には手を出さないことを意味するのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリスチャン・ベサンコート(左)とダニー・ヒメネス May 25, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月9日、タンパベイ・レイズは、オークランド・アスレティックスからクリスチャン・ベサンコートを獲得し、交換に、カル・スティーブンソンクリスチャン・フェルナンデスを手放した。

 30歳のベサンコートは、捕手と一塁手を務めることができ、外野手と投手、二塁手の経験もある。メジャーリーグ出場は、2013~17年の計161試合と今シーズンの56試合。2019年は韓国でプレーした。スティーブンソンは25歳の外野手、フェルナンデスは22歳の右投手だ。2人とも、メジャーデビューはしていない。

 レイズでは、捕手のマイク・ズニーノが左肩を痛め、6月上旬から離脱している。このまま復帰できず、オフを迎える可能性も低くない。現在、マスクをかぶっているのは、フランシスコ・メヒーヤレネ・ピントだ。

 ズニーノはパワーがあり、昨シーズンは33本のホームランを打った。10.1打数に1本塁打のペースは、30本塁打以上の43人中、トップに位置した。ちなみに、2位は11.4打数/本のフェルナンド・タティースJr.(サンディエゴ・パドレス)、3位は11.7打数/本の大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)だ。

 今夏のトレード市場で売りに出ている、もしくは売りに出されそうな選手には、スラッガーの捕手、こちらも30歳のウィルソン・コントレラス(シカゴ・カブス)がいる。それについては、「鈴木誠也のチームメイトのうち、この夏のトレードで放出されそうなのは…」でも書いた。コントレラスでは、守備はともかく、打撃に関してはズニーノの穴を埋められる。

 にもかかわらず、レイズがベサンコートを獲得したのは、コントレラスには手を出さないというサインのようにも見える。

 ベサンコートは2025年のオフまでFAにならないが、コントレラスは今オフにFAとなる。とはいえ、実績からすると、獲得するには、コントレラスのほうが大きな見返りを必要とする。数ヵ月のレンタルとなるコントレラスを得るのに、有望な若手を差し出したくない、とレイズは考えたのだろうか。ズニーノも今オフにFAという点も、ベサンコートを獲得した理由に挙げられる。

 あるいは、ここからコントレラスの獲得に動くものの、他球団にさらわれた場合を想定し、ベサンコートを入手したのかもしれない。また、ベサンコートがいることで、レイズは、何が何でもコントレラスが必要という状況ではなくなった。カブスの要求する見返りが大きすぎると判断すれば、深追いせずに手を引くこともできる。

 パワーについては、他の選手で埋め合わせることも可能だ。例えば、昨年の夏、レイズは、DHのネルソン・クルーズをミネソタ・ツインズから獲得した。今シーズン、クルーズはワシントン・ナショナルズでプレーしている。カブスよりも借金の多いナショナルズ――ナショナルズを上回る借金を抱えるのはアスレティックスだけ――は、この夏のトレード市場で売り手に回るはずだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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