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衝撃の敗戦!張本智和、早田ひな“日本最強”混合ダブルスに圧勝した“謎多き”北朝鮮ペアは何者?

金明昱スポーツライター
優勝候補と言われた日本の“はりひな”ペアに初戦で勝利した北朝鮮(写真:ロイター/アフロ)

 パリ五輪の卓球混合ダブルス1回戦で大波乱が起きた。日本のメダル候補だった張本智和、早田ひなの“はりひな”ペアが、“ダークホース”の北朝鮮リ・ジョンシク(男子)、キム・グムヨン(女子)に1-4で完敗し、初戦で姿を消した。

 日本からすれば「まさか」の初戦敗退。2021年東京五輪の水谷隼、伊藤美誠組に続く日本勢2大会連続の金メダルの夢もついえた。

 試合後に張本は「正直悔しい。相手のプレーが素晴らしかった。大事なところでのミスが多かった。相手の女子選手の異質のラバー、男子選手は両ハンドミスなく、それもパワーのあるボールを打ち込んできた。準備はしていたのですが、想定以上のプレーをされた」と唇をかむ。

 早田も「1本取れるか取れないかで結果につながったと思う。(打球は)すごい威力。攻めても倍に返された。情報量が少ない分、迷ってしまった。北朝鮮の精度の高さを感じた」と振り返った。

世界ランクにも名前がない北朝鮮ペア

 北朝鮮のリ・ジョンシク、キム・グムヨンのペアは一体何者なのか。正直、情報量はそこまで多くない。

 年齢はリが24歳、キムが22歳。今年4月、パリ五輪出場をかけたITTF(国際卓球連盟)の世界予選がチェコで行われているが、そこで出場権を勝ち取った。今回、パリ五輪の出場ペア中では最下位の第16シード。ITTFのランキングにも名前がなく、日本からすれば格下の相手だったわけだ。

しかし、蓋を開けてみれば堂々としたプレーで、第1ゲームを11-5で奪うと、第2ゲームは7-11で日本に軍配。しかし、第3ゲームもリとキムのペアが5連続ポイントなどで完全に主導権を握り、11-4で完全に勢いに乗った。第4、5ゲームも立て続けに奪って、4-1での圧勝劇。

 未知の相手にとまどう張本と早田に対し、北朝鮮ペアは精度の高さとパワー、ミスの少ないプレーで完全に試合の流れをつかんだ。北朝鮮からすれば、日本戦に向けた対策も練っていたのかもしれないが、そもそも北朝鮮国内の卓球選手のレベルがそれなりに高いことは日本側も想定していたに違いない。

いずれにしても北朝鮮としては、優勝候補の張本智和、早田ひなペアを初戦で下したことで、“ダークホース”としてメダル獲得に期待がかかる。

五輪女子柔道で谷亮子が無名の北朝鮮選手に敗れた衝撃

 余談だが、“無名”の北朝鮮選手が日本の“優勝候補”を下した試合で思い出すのが、1996年のアトランタ五輪の女子柔道決勝だ。当時16歳の北朝鮮ケー・スンヒが、日本の谷亮子(旧姓・田村)に勝利して金メダルを獲得したが、この時の衝撃を記憶している人も多いだろう。

 また、北朝鮮は2016年リオ五輪以来、8年ぶりの五輪出場で7種目から16人が参加している。メダル候補はボクシング女子(54キロ級、パン・チョルミ)、レスリング女子(62キロ級、ムン・ヒョンギョン)、体操女子(アン・チャンオク)。

【参照】:北朝鮮ペアの“シンクロ率”がハンパない!演技前、スイムタオルを投げるところまで完全同期化 当然のように演技も息ピタリ

 ほかにも今年2月「世界水泳ドーハ2024」の女子10メートルシンクロ高飛び込みで銀メダルを獲得したキム・ミレ、チョ・チンミも注目の選手だという。

 表舞台から長らく遠ざかり、久しぶりに五輪に登場するノーマークの北朝鮮選手ほど怖いものはない。出場人数こそ少ないが、意外な種目でメダル獲得があるかもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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