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「マンション管理」は安いほうがよい?15年続く管理会社満足度ランキングの上位は……

櫻井幸雄住宅評論家
分譲マンション暮らしは管理のよしあしで住み心地が左右される。(写真:イメージマート)

 日本の分譲マンションは管理会社に管理業務を委託するのが当たり前になっている。毎月費用を支払い、ゴミ集積場やエントランスの清掃、樹木の手入れ、エレベーターの保守点検立ち会い、安全の確保のためのスタッフ派遣などを行ってもらっているわけだ。その結果、マンション住人はほとんどなにもしないで生活できるようになっている。

 日本の分譲マンション居住者にとって、それは極めて当たり前のことと捉えられている。が、じつはこれ、世界的には非常に珍しいシステムとなる。

 外国では自主管理(住人が自分たちで清掃などを行う)が当たり前で、日本のように高度の管理サービスが提供されるのは一部高級集合住宅だけ。その際の管理サービス費用は日本とは比べものにならないくらい高額だ。

 その点、日本ではスタンダードレベルの分譲マンションでも十分な管理サービスが付いている。それが、世界的に珍しい点なのである。

 実際、日本の分譲マンションに暮らしたことがある外国人は管理サービスの快適さに驚く。毎月、管理費を支払う必要はあるものの、「楽で、よい」と自国でマンション暮らしに慣れた韓国の人も、台湾の人も絶賛する。

 「楽で、よい」と感じるのは、日本人も同様だろう。もちろん、「管理委託費が高すぎる」という意見や「管理会社に委託費を払うより自分たちで管理したい」という意見もあるのだが、大部分の分譲マンション居住者は管理会社に費用を払って管理委託する現在の方式を受け入れている。

 ただし、今、管理会社が行ってくれているサービスが最良なのかどうかは分かりにくい。他にもっと安く、良質の管理サービスを提供してくれる管理会社があるかもしれない。そう思っているマンション居住者は少なくないはずだ。

 そこで、求められるのが、マンション管理会社に関する客観的な評価。

 その評価に関する、興味深い調査結果が12月7日に発表された。今年で第15回となる「マンション管理会社満足度ランキング」だ。

 同調査は、スタイルアクト社が運営するセカンドオピニオンサイト「住まいサーフィン」の会員約30万人のうち、実際にマンションを購入して住んでいる人と、管理組合の理事経験者へのアンケートで行われるもの。実際に住んでいる人が管理会社を採点し、総合点でランキングするものなので、信頼度は高いと考えられる。

 ランキング上位となった管理会社名を挙げ、今マンション管理会社に求められているものは何かを探ってみたい。

今年、「総合満足度」で第1位になった管理会社は

 「第15回マンション管理会社満足度調査」で総合満足度1位になったのは、三井不動産レジデンシャルサービス。三井不動産レジデンシャル系列の管理会社で、「三井のマンション」を購入すると、同社の管理が付いてくることになる(三井のマンション以外でも管理委託を受けている)。

 総合満足度で15位までに入った管理会社は以下のとおり。大部分が不動産会社の系列管理会社となり、系列ではない「独立系」と呼ばれる管理会社は14位の合人舎計画研究所と15位の日本ハウズイングとなる。

「第15回マンション管理会社満足度調査」の結果より、筆者が抜粋して作成。表中の「業務遂行」は、管理会社担当社員の評価で、「修善再生」は建物の維持に関する注力を評価した点数となる。
「第15回マンション管理会社満足度調査」の結果より、筆者が抜粋して作成。表中の「業務遂行」は、管理会社担当社員の評価で、「修善再生」は建物の維持に関する注力を評価した点数となる。

 同調査では、15の項目で採点が行われ、総合点とともに発表されているが、上の表は、一部を抜粋したものになっている。詳細を知りたい方は住まいサーフィンのサイトで公開されている「第15回マンション管理会社満足度調査ランキング2023」を参照いただきたい。

 三井不動産レジデンシャルサービスは理事経験者への調査でも満足度1位となり、2冠達成となった。

 また、管理戸数が少ない(10万戸未満)管理会社の部門では、東京建物系列の東京建物アメニティサポートが6年連続の総合満足度1位となった。

 「マンション管理会社満足度調査」は、点数と順位の発表だけでなく、分析発表も行われているのが特徴。今回の調査分析では2つ注目すべき分析があった。

 ひとつは、満足度の数値に頭打ち状況が見られるというものだ。

 これまで、15年にわたり調査が行われてきたため、管理会社に対する満足度は年々上がってきたことが把握されている。その上昇度合いが鈍化してきた、というのだ。それは、世の中の「満足度」全般に生じる問題だろう。カスタマーの満足度を上げ続けるのはむずかしく、どこかで頭打ちが生じるものだ。

 もうひとつ、管理員に対する満足度が下がっている傾向があることも分析されている。これは、近年、ベテランの管理員が高齢化によりリタイアしていることによる影響と考えられる。

 かつて、マンションの管理員には、大手企業の管理職だった人が多かった。定年後の仕事だから、と低い給与水準でも優秀な人材を集めることができたのだ。

 しかし、近年、退職金が減り、年金額が下がったことで、シニア層はもっと給与の多い仕事を求めるようになった。一方で、若い世代は土日・祝日の勤務が発生しやすいマンション管理の仕事を避ける傾向も出ている。子育てをしている20代、30代の場合、子供と遊びに出かけることがしにくく、運動会にも行けない仕事が嫌われるのは当然といえば当然である。

 その結果、「優秀な管理員がなかなかみつからない」という声がマンション管理の現場で多くなった。マンション管理において頭の痛い問題が調査結果にも表れているわけだ。

「不動産会社系列の管理会社は費用が高い」と言われるが……

 最後に今回の調査結果で、私が注目した点をひとつ挙げたい。

 それは、コストパフォーマンスの評価点。毎月払っている管理委託費用に対して満足度がどれくらい高いか、の評価だ。

 というのも、マンション管理は管理会社による費用の差があるからだ。

 不動産会社系列の管理会社は管理委託費用が高く、独立系管理会社のほうが安い。今回の調査では、管理委託費用のデータは公表されていないが、価格差があることは、私も把握している。

 今回のランキングで、上位を占める不動産会社系列の管理会社は管理委託費用が高めであるのは事実。その上でコストパフォーマンスの評価はどうなっているか気になったわけだ。

 従来、管理委託費用が高い不動産会社系列の管理会社はコストパフォーマンスで点数が下がりがちだった。しかし、今回の調査をみると、不動産会社系列の管理会社だからといって、コストパフォーマンスの点数が大きく下がっているわけではなかった。これは、満足できる管理サービスが受けられるなら、管理委託費用が多少高くなってもよしとする人が増えた結果と考えられる。

 管理委託費用がさらに上がる「第三者管理」が広まろうとしている現在、管理委託費用とコストパフォーマンスの評価は注目すべきポイントとなる。引き続き注視してゆくためにも、このような調査は有益と考えられるのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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