『ウルトラマン大投票』で、メカ部門1位のセブンガー! そのビックリ実力を『ウルトラマンレオ』で考察!
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。
マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。
さて、今回の研究レポートは……。
2022年9月にNHKで放送された『全ウルトラマン大投票』、驚いたのは「ウルトラメカ」部門でセブンガーが1位を獲得したことだ!
ウルトラメカといえば、ウルトラホーク1号とか、ポインターとか、ビートルとか、マットアローとか素晴らしいものが多々あるのに、それらを上回ってセブンガーが1位……!?
この高評価を得たセブンガーは、『ウルトラマンZ』に登場するロボット兵器。
人間が搭乗して操縦し、怪獣と戦ったり、荒廃した街の瓦礫を片づけたり……と幅広く活躍していたから、まあ、それを思えばナットクである。
ただ、筆者にとってセブンガーといったら、かつて『ウルトラマンレオ』に登場したロボット怪獣のほうだ。
登場したのは1度だけで、あまり役に立たなかったような印象が……。
とはいえ、ハッキリ覚えているわけではないので、ここで『ウルトラマンレオ』の第34話を見てみよう。
◆合わせる顔がない!
『ウルトラマンレオ』は、1974年から1年間放送された番組だ。
故郷を異星人に滅ぼされたウルトラマンレオは、地球に来て、おゝとりゲンと名乗り、正義のチームMACの隊員になっている。
そのMACの隊長は、モロボシ・ダン。正体はウルトラセブンだが、怪獣との戦いで負傷し、足を負傷したうえに、変身能力も喪失している。
そこでダンはゲンを鍛え、励ましながら、2人で地球の平和を守る。
――そう、この番組のポイントは、ウルトラセブンは地球にいるのに、変身できなくなって、ずっとモロボシ・ダンのまま、というところなんですね。
さて、問題の第34話『ウルトラ兄弟永遠の誓い』は、帰ってきたウルトラマン(現在の名称はウルトラマンジャック)が、手に何かを持って宇宙を飛ぶシーンから始まる。
ナレーションが視聴者に呼びかける。
「帰ってきたウルトラマンが持っているもの、何だろう? これはね、変身できなくなったモロボシ・ダンのための新しい武器としてウルトラの国からプレゼントされた怪獣ボールだ」。
ウルトラの星から地球まで300万光年。
そんな遠くから、わざわざ運んできたのだから(ずっと手に持っているのもすごい!)、ぜひとも役に立ってくれんと困るが……。
そこに怪獣アシュランが襲いかかる。
ジャックは近くの星に降り立って戦うが、アシュランはものすごく強くて、怪獣ボールを奪われそうになる。
なんとか振り切って地球にたどり着くが、郷秀樹の姿に戻ったときは、ケガをしているうえに、アシュランが浴びせた光線によってマスクで口を塞がれ、喋れなくなっていた。
郷秀樹は、海岸で倒れていたところをゲンに救出される。
怪獣ボールはすぐ近くに落ちていたが、拾い上げる前に気を失ってしまう。
そのまま医務室に運ばれた郷秀樹は、やがて目覚めて驚愕。
その胸の内をナレーションが語る。
「帰ってきたウルトラマン・郷秀樹は、セブンに渡さなければならない怪獣ボールを失くしてしまった。怪獣ボールがなければ、何のために地球に来たのか意味がなくなる。セブンに、モロボシ・ダンに合わせる顔がない」。
合わせる顔とかの問題なのか!?
郷は少し回復してから海岸へ行くが、怪獣ボールがない!
見回すと、子どもたちが怪獣ボールでホッケーをやっている。
高く上がった怪獣ボールを、郷はジャンプして強引に奪う。
「返せ!」「返せ!」と叫ぶ子どもたちから、石や砂や干からびた海藻を投げつけられるが、それでもじっと耐える郷秀樹……。
ここまで物語の焦点になっておいて、役に立たなかったら、もはや一大事である。
◆1分戦って、50時間休む!
こうしてついに、郷秀樹はモロボシ・ダンに怪獣ボールを渡すことができた。
それは手のひらサイズでラグビーボールのような形。
怪獣アシュランは地球に飛来して暴れていたので、ダンはすぐさまアシュランに怪獣ボールを投げる。
すると、爆発が起こり、煙のなかからセブンガーが出現!
ドラム缶のような胴体から手足が生えていて、頭の左右に目が飛び出している。
しかしその目は眠そうな半開きで、なんともカッコ悪い……。
しかし、セブンガーは強かった。
アシュランが連続パンチを見舞うが、ビクともしない!
光線もまったく効かない!
それどころか、アシュランをなぎ倒す!
体をぶつけて跳ね飛ばす!
投げ飛ばす!
左右のパンチでブン回す!
もう大圧倒だ。こんなに強かったのか、セブンガー!
ところが、アシュランがグロッギーになったところで、セブンガーは消滅してしまった。
ここで呑気にナレーション。
「あと10秒時間があれば、アシュランをやっつけることができたのにねえ。この怪獣ボールのなかのセブンガーは、1分間しか戦うことができないんだよ」。
え~~~っ、1分!?
300万光年も彼方から運んできたのに、1分しか戦えない!?
結局、アシュランは再び暴れる。
ゲンはレオに変身して戦おうとするが、ダンは「レオとウルトラマンが協力しなければ、ヤツを倒すことはできん」と制止して、郷秀樹の完治を待つ方針を告げる。
ゲンが「一人でダメなら、怪獣ボールといっしょなら」と食い下がるが、ダンは「いや、これは一度使うと、あと50時間は使えないんだ」。
ご、50時間は使えない!?
たった1分間戦っただけなのに!?
ホントにもう、お願いしますよ、ウルトラの星!
というわけで、結局『ウルトラマンレオ』全51話のなかで、セブンガーが活躍したのは、さっきの1分間だけであった。
強いことは間違いないが、役に立たないのも間違いない。
強いのは覚えていなかったが、役に立たないのは筆者の記憶どおりだった……。
◆すごく強いセブンガー!
それにしても、活動時間が1分で、再登場できるのが50時間後。これはどういうことか?
多くの携帯電話は、フル充電すれば、充電時間と同じくらい通話ができる。
ひょっとして、セブンガーも怪獣ボールのなかで充電しているけれど、その充電能力が極端に低いのだろうか。
そこでセブンガーのパワーを求めてみよう。
ロボットを動かすためのパワーは体重に比例し、身長の平方根に比例する。
パワーの単位は「W」や「kW」で、人間がボクシングやレスリングをするときのパワーは2.2kWといわれる。
これが身長180cm、体重70kgの選手の値だとしよう。セブンガーをその選手と比べると、体重は47万倍、身長は32倍だ。
人型ロボットを動かすのに必要なパワーは、身長の平方根と、体重に比例する。身長比32の平方根は5.67だ。
また、セブンガーはモノスゴク強いので、右の選手が巨大化したときの2倍のパワーがあるとしよう。
するとセブンガーのパワーは、2・2kW×47万(体重分)×5・67(身長分)×2(モノスゴク強い)=1180万kW!
重量がほぼ2倍の戦艦大和(6万5千t)でさえ11万kW(15万3553馬力)だから、セブンガーは大和よりはるかに強いということだ。
日本最強クラスの発電力を誇る富津火力発電所(516万kW)がフル稼働しても、セブンガーに必要なパワーを供給できない。
なんと、セブンガーがこんなに強かったとは……!
こうなると、充電に50時間かかるのも仕方ない気がしてきました。
50時間とは3千分だから、充電に必要な電力は、1180万kW÷3千=3940kW。
山手線の消費電力(2280W)を大きく上回る。
手のひらサイズの怪獣ボールなのに、そんなに小さくてこの充電力は、さすがウルトラの科学というべきか。
ちょっと(いや、かなり)見直したセブンガー。
ほぼ半世紀を経て『ウルトラマンZ』で重要な存在となり、『全ウルトラマン大投票』で1位になったのも、しみじみナットクである。