最後に今一度!たっぷりのこし餡といんげん豆を包んだ最中「有明」忘れられない開雲堂さんの思い出の味
先日掲載させていただいた、青森県弘前市の老舗「開雲堂」さんの「卍最中(記事はこちらから)」
閉業が近づくにつれ、県内外からは沢山の方々が最後に今一度その味を、と求めて行列をなしていました。以前はバタークリームなどを使用したガーリーなケーキなども販売しておりましたが、商品は限定され、それでも1時間以上並んでも購入できないという程。
なにげなく私が食べていたお菓子が、こんなにも沢山の方々の記憶や舌に残っているという事実を目の当たりにし、恥ずかしながら改めて開雲堂さんがいかに素晴らしい和菓子をお作りになさったのか実感致しました。
そして先日、ひっそりと告知された最後のお取り寄せ。幸いにももう一つの銘菓である最中を購入することができ、今回ぜひこちらで皆さんへご紹介できたらと思った次第です。
今回は開雲堂さんの「有明」をご紹介。
有明の月、という言葉をご存知でしょうか。百人一首にもいくつか登場する有明の月という言葉ですが、それは夜明けの真っ白な月のこと。日の出が遅い冬の澄んだ空に見たことがあるという方もいらっしゃるかと思います。
まさにその有明の満月のような、青みを帯びた白い最中種。優雅にゆるやかな弧を描くその白肌には、弘前市とは切っても切れない関係にある桜の花と有明の文字。そして意外にもずしりとした重みが…
はらはらと桜が散るように崩れていく最中種の中には、やや藤色を帯びたこし餡がたっぷり!舌先を包み込む濃密さながらも、一度咀嚼すると砂山が崩れていくように滑らかに溶けていく感覚、そして上質な飴玉のようなこっくりとした深みのあるまろやかな甘さは開雲堂さんの有明ならでは。
そしてところどころちりばめられているいんげん豆。ひとつのお菓子の中にふたつの相対する色合いの豆が閉じ込められているという意外性と、素朴な風味が上品なこし餡により一層豊かな表情を与えてくれる味わいは印象深く、あぁこれは記憶に残る味だと納得。
幼いころから慣れ親しんできたお菓子が、誰かの特別であり、誰かの想い出であり、そして誰かのおやつであり。日常に寄り添う和菓子、という言葉の多様性とそこに宿る様々なストーリーに思いを馳せていただきました。
まずはごゆっくりと体を労わっていただき、そしてありがとうございましたという感謝の気持ちを述べて締めくくりたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<開雲堂(閉業)>
青森県弘前市土手町83