Yahoo!ニュース

米露中韓印…日本から主要5か国への親近感の推移をさぐる(2024年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
日本から見た諸外国への親近感は?(写真:アフロ)

内閣府が定期的に調査・発表している「外交に関する世論調査」(※)では、日本の諸外国への親近感を公開している。米露中韓印に的を絞り、その長期的な推移を確認する。

今調査では対象国に対する親近感に関して回答者に「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じない」「親しみを感じない」の4選択肢を提示し、その中から1つを選んでもらっている。今件ではこのうち前者2つ「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」を合わせた値を「親近感」と位置付け、その推移を見たもの。なおインドは1991~2007年は「南西アジア諸国(インド、パキスタンなど)」と尋ねているため、厳密には連続性は無い。

↑ 主要国への親近感推移(「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」の合計)
↑ 主要国への親近感推移(「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」の合計)

アメリカ合衆国への好感度は押し並べて高い。一方中国は全体的に右下がりで、この40年ほどの間に1/2から1/3ほどまでに減少しているのが一目瞭然。2016年ぐらいからは持ち直しを見せたが、2020年からは再び失速。

ロシアは10%強を低空飛行していた。1990年前後に一時的に盛り上がりを見せたが、すぐに急降下。2000年前後からは再び上昇しているが、これはプーチン政権の発足と対日融和政策によるところが大きい(特に当時の日本の小泉首相との仲のよさはテレビでも繰り返し伝えられており、これがポジティブに働いている)。さらに2012年以降は再び大きく上昇し20%前後を維持していた。ロシアの大統領選挙が2012年3月に実施され、ウラジーミル・プーチン氏が当選したこと、それに伴いプーチン氏が再び日本のメディアに登場し、好意的な印象を与えているのが継続して影響しているものと考えられる。

最近では2014年に発生したウクライナ騒乱、クリミア危機、さらにはロシアの直接・間接的軍事侵攻を受け、負のイメージが生じた結果として、同年以降は下落を示していた。2020年では野党指導者が毒物を盛られて意識不明状態に陥った事案が繰り返し報じられたことが、大きな下落を導いたようだ。そして2022年ではロシアによるウクライナへの侵略戦争で大きく親近感が損なわれる形となった。この年の5.1%は記録のある1978年以降最少の値。直近2023年では前年からいくぶん持ち直してはいるが、非常に低い水準に違いない。

韓国とインドは基準値こそ違えども同じようなカーブを描いて上昇中だった。ただし2009年以降韓国は頭打ち、そして2011年から2012年にかけて大幅な下落を記録し、2014年もさらなる急落、2015年以降はようやく持ち直しを示したが、2019年では韓国海軍レーダー照射問題や半導体素材の輸出管理の問題で大きく下落。2020年以降はそれらの問題がさほど報じられなくなったこともあり、回復を示している。

中国は尖閣諸島と反日暴動、ガス田、小笠原諸島のサンゴ違法搾取、沖縄や尖閣諸島などの問題をはじめとする日中間の直接の対立に加え、南シナ海の人工島造成問題など、韓国は竹島、さらに双方の国とも強圧的・理不尽な外交姿勢・対日経済施策が大きく影響しているものと考えれば、2012年以降における急落の納得はできる。2020年以降の失速は、相次ぐ対外強硬策だけでなく、ロシアによるウクライナへの侵略戦争でロシア寄りの動きを見せているのも大きく影響しているのだろう。

ここ数年の韓国の上昇ぶりは報道頻度など情報の伝達ウェイトが軽減した結果によるところが大きく、韓国に対する親近感減少の要因が解決に向けて動いているわけではないことを留意しておく必要がある。

注意すべきは「親しみを持たない」が「マイナスのイメージを持つ」には直結しないこと。単に親近感を持つ・持たないに関して判断するだけの材料が無い、認識度が薄い可能性も多分にある。ロシアをはじめとした旧共産国や日本から距離的に遠い国で親近感が薄いのは、多分になじみが薄いのも要因なのだろう。

■関連記事:

【世界人口は2060年に100億人を突破…国連予想による米英露の2100年までの人口推移(最新)】

【話題の竹島・尖閣諸島公式広報動画、外務省が公開中】

※外交に関する世論調査

今調査は2023年9月7日から10月15日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、郵送法によって行われたもので、有効回答数は1732人。男女比は48.3%対51.7%、年齢階層別構成比は18-19歳1.1%・20代7.5%・30代11.6%・40代16.0%・50代17.6%・60代18.0%・70歳以上28.2%。

調査方法について2019年調査までは調査員による個別面接聴取法が用いられていたが、2020年調査以降では新型コロナウイルスの流行により、郵送法が用いられている。調査方法の変更で一部設問の選択肢や回答傾向に違いが生じていることに注意が必要となる(「分からない」が「無回答」になっている、回答の意思が明確化されたために一部設問で「無回答」の値が以前の調査と比べて有意に少なくなっているなど)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事