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このワールドシリーズなら、どっちが勝っても優勝リングをゲット。レイズ対ドジャースの場合は筒香も!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ウィリー・アダメス(左)と筒香嘉智 Aug 12, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現在、ポストシーズンには、ア・リーグもナ・リーグも4チームずつが残っている。ここから、ワールドシリーズのカードは、16通りの組み合わせが起こり得る。4×4=16だ。

 そのうちのいくつかのカードは、どちらのチームが優勝してもワールドチャンピオン・リングを手にする選手が出てくる。規定があるわけではないが、そのシーズンにチームでプレーした選手は、優勝する前に退団していても、優勝リングをもらえることが多い。ほぼ、通例となっているようだ。

 言ってみれば、2010年のベンジー・モリーナのようなパターンだ。この年の7月1日に、モリーナはトレードにより、サンフランシスコ・ジャイアンツからテキサス・レンジャーズへ移籍した。両チームは揃ってワールドシリーズへ進出し、ジャイアンツがレンジャーズを破って優勝した。

 16通りの組み合わせのなかで、このパターンとなる選手が最も多いのは、ともに初優勝をめざす、タンパベイ・レイズとミルウォーキー・ブルワーズによるワールドシリーズだ。レイズのドルー・ラスマッセンJ.P.ファイアライジン、ブルワーズのウィリー・アダメスハンター・ストリックランドに、現在はトロント・ブルージェイズに在籍するトレバー・リチャーズもそう。彼らのうち、ストリックランド以外の4人は、5月下旬にレイズとブルワーズが成立させた、2対2のトレードで動いた(リチャーズは7月上旬にブルージェイズへ移籍)。このトレードについては「リーグ連覇を狙うレイズが、25歳の正遊撃手を放出した理由。シーズンは序盤、チームは快調」で書いた。

 ストリックランドは、レイズ→ロサンゼルス・エンジェルス→ブルワーズと移籍した。こちらの動きについては、「防御率1点台のリリーフ投手が移籍。エンジェルスが獲得した理由はわかるが、レイズはなぜ放出したのか」「移籍前は「防御率1点台」の投手が、新天地では「防御率9点台」。1ヵ月経たずにロースターから外される」「防御率9点台でもエンジェルスは手放すべきではなかった!? 獲得前は1点台、放出後は10登板とも無失点」で書いた。

 レイズがワールドシリーズへ進むと、ナ・リーグの他3チーム、ジャイアンツ、アトランタ・ブレーブス、ロサンゼルス・ドジャースのどこが相手でも、このパターンの選手が存在する。マット・ウィスラーはジャイアンツ→レイズ、ケバン・スミスはレイズ→ブレーブス(8月に退団)、筒香嘉智はレイズ→ドジャース(→ピッツバーグ・パイレーツ)と動いた。エバン・フィリップスは8月にボルティモア・オリオールズ(AAAで18登板)から解雇された後、レイズと契約し、そこから2週間経たずにドジャースへ移った。

 レイズ以外のア・リーグのチームがワールドシリーズに進出した場合、見落としがなければ、こうした選手がいるのは、ボストン・レッドソックスとブルワーズの1カードのみ。トラビス・ショウはブルワーズからレッドソックスへ移り(「「ショウタイム」は大谷翔平だけじゃない!? 5年ぶりに戻ってきた選手が「サヨナラ満塁本塁打」を打つ」)、ライアン・ウェバーはレッドソックス→ブルワーズ→シアトル・マリナーズと動いた。

 ポストシーズンが始まった時点では、ニューヨーク・ヤンキースとジャイアンツのワールドシリーズでも、4月下旬のトレードで入れ替わったマイク・トークマン(現ジャイアンツ)とワンディ・ペラルタ(現ヤンキース)に、シンシナティ・レッズとこの2チームで投げたサル・ロマーノ(現FA)の3人がそうだった。けれども、ヤンキースがワイルドカード・ゲームで敗れ、この組み合わせのワールドシリーズが実現する可能性はすでに消滅している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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