なでしこジャパンがベトナム戦快勝でW杯出場権に前進。日韓戦でアジア女王の意地を示せるか?
来年の女子W杯のアジア予選を兼ねたAFC女子アジアカップで、なでしこジャパンがベトナムに3-0で快勝。2連勝でノックアウトステージ進出を決めた。
池田太監督は、21日のミャンマー戦(○5-0)から先発メンバー8名を変更。世界ランキングは13位の日本に対してベトナムは32位。個々の力の差があり、数字上はシュート22本(ベトナムは2本)、ポゼッション率74%と圧倒した。
しかし、内容面では課題も残った。
特に前半は、自陣で守りを固めるベトナムに対して効果的にボールを動かせず、単調な攻撃を跳ね返される展開が続いた。
ただ、攻撃を続けたことが意外な形で実る。前半38分、「斜めの(ロング)ボールを狙っていた」というDF高橋はながゴール前に入れたロングボールを相手GKがキャッチミス。こぼれ球に素早く反応したMF成宮唯が軽やかに流し込み、リードを奪った。
後半は、MF宮澤ひなたが前線の潤滑油となり、停滞していた攻撃に流れが生まれた。だが、決定的な崩しには至らない……。
追加点が取れない時間帯が続いたが、日本の勝利を決定づけたのが2つのセットプレーだ。
50分、フリーキックにFW田中美南が頭で合わせ、ポストを叩いたこぼれ球をDF熊谷紗希が流し込んで2-0。58分には同じくフリーキックから、ファーサイドに走り込んでいた成宮がダメ押しの3点目。
W杯などではセットプレーの得点率が3〜4割にも上り、得点力が課題の日本にとって優先度の高い強化ポイントだ。2点目を決めた主将の熊谷は、練習の成果をこう口にする。
「試合前に相手の(守備の)形を考えながら、セットプレーのアイデアを出し合ってトレーニングしていて、(コーチングスタッフが)3パターンぐらいの形を提供してくれます。練習でもうまくいくことがあるので全員がイメージしやすいし、試合ではピッチに立つ選手の判断で決めているのでやりやすいです」
セットプレーのキッカーはまだ固定されていないが、この試合では2得点に絡んだMF猶本光を筆頭に、MF長野風花、MF遠藤純、MF隅田凜らが蹴った。初戦ではMF長谷川唯も蹴っている。ゴール前でターゲットになれる長身選手やヘディングに強い選手が複数いるため、異なる得点パターンが生まれる可能性もある。
2月6日の決勝戦まで、中2日の試合が続く中、積極的な交代策でフィールドプレーヤー全員がピッチに立ったことも収穫だ。主力を休ませつつ選手たちの経験値を底上げできたことは、今後に必ず生きてくる。
ベトナム戦のヒロインとなった成宮は、今大会2試合で3得点と好調だ。ただ、「結果的に崩して点を決める形がなかったのが課題です」と冷静に現実を受け止め、「勝ち上がるにつれて相手が強くなる中で、自分がどこまでできるかが自信につながると思います」と語気を強めた。
27日に対戦する第3戦の相手は、韓国(世界ランク18位)。世界的アタッカーであるMFチ・ソヨン(チェルシーFC)を筆頭に、強力なフィジカルを備えた選手たちが揃う。拮抗した戦いになるだろう。
ただ、この試合はコロナウイルスの検査で陽性になり、隔離中だったFW岩渕真奈が復帰する可能性が高く、心強い。キレのあるドリブルやシュートは相手に脅威を与えるはずだ。
得失点差で上回っている日本は、韓国に引き分け以上でグループ首位が確実。ただ、もし敗れた場合は、W杯出場権をかけたノックアウトステージ初戦で、優勝候補のオーストラリア(すでにグループB首位通過をほぼ確実にしている)との対戦が濃厚だ。
それを避けるためには、リスクマネジメントを重視し、守備に力を入れて手堅く試合を進めることも必要だろう。ヨーロッパで対人の強さを磨き抜いてきた熊谷は、ベトナム戦について、「もう一つ前でボールを取れたのではないか?というシーンがいくつかありました。(韓国戦は)切り替えのところと球際でもっと勝てるようにしたいです」と気を引き締めた。
日韓戦は3年ぶりで、熱気あふれる試合になることは間違いない。なでしこは内容の伴った会心の勝利で、アジア女王の意地を見せることができるだろうか。
韓国戦は日本時間の1月27日、17時キックオフ。DAZNで生中継される。