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コロナ禍でも他人と2メートル以上離れてできる驚きのトレーニング法。

谷口輝世子スポーツライター
他の人と遊ぶときは2メートル以上あけましょう。(写真:アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大を予防するために、 他の人と少なくとも2メートル以上距離をあけることが求められている。私の住んでいる米国では同居する家族以外の人とは2メートル以上離れるようにと何度もメッセージが発せられている。

 米国の多くの州で外出が制限されているが、健康維持のために散歩などはしてもよい。体を動かすことは、心身の健康のために最も良い方法のひとつだ。米疾病予防管理センターでは、公園や広場に行ってもよいのか、行くときにはどのようなことに注意するべきかをホームページに掲載している。(4月18日時点)

 米疾病予防管理センターは、スポーツチーム単位での活動は推奨していない。なぜなら、組織的なスポーツ活動は、他の人と2メートル以上の距離を常に保つことが難しいからだ。(記事の末尾に米国疾病予防管理センターによるリクリエーションや公園、広場の使用ガイドラインについて書き記す)

 では、他の人と距離を2メートル以上保ったうえいっしょに遊んだり、トレーニングしたりする方法はあるのか。外出制限下、狭い家のなかでも楽しみながら自主トレする方法はあるのだろうか。

 米国の健康・体育教育学会の組織下にあるOPEN(Online Physical Education Network)は、幼稚園児から高校生を対象に、他の人と2メートル以上距離をあけた上で体を動かしての遊びを紹介している。狭い室内でも安全に遊べるものがほとんどだ。

 普段は体育教育の教材研究をしている組織が、外出制限があり、ほぼすべての運動部活動、スポーツ活動が禁止されている状況で、指導者や子どもたちに何ができるかを、スピードを持って提示している。

(日本でも多くのアスリートが狭いスペースで、独りでできる練習を動画で紹介してくれている。これらをまとめたプラットフォームがあるとよいのではないか)

 社会的距離をあけながらの遊びのリストに「シャドーボール」というものがある。

「シャドーボール」はすべての球技種目に展開可能。できれば自分以外にもう1人以上、参加してくれる人がいると良い。

 OPENからシャドーボールによるバスケットボールの方法を一部引用する。

 ゲームの設定。

- パートナーを探す。話をするとき、遊んでいる間、2メートルを離れてください。

- じゃんけんをして先攻と後攻を決めてください。

- あなたは「シャドーボール」を持っていることを覚えておいてください- あなたのパートナーとバスケットボールのスキルをパントマイムするのです。

 ここまで読んで、もうお分かりになったと思う。

「シャドーボール」は実際のボールではない。想像上のボールである。だから、室内で遊んでも窓ガラスや家具を壊すリスクは低い。(昭和に小学生をしていた私は野球遊びの三角ベースでは想像上の走者として「透明ランナー」を使用していたので、「シャドーボール」をすんなりと受け入れられた)

 銅メダルチャレンジ。60秒間に何回パスができるかをパートナーと競う。

 

 ボールを5回ドリブルし、パートナーにパスをすると1ポイント。あなたのパートナーはあなたからのパスを受けて5回ドリブルしてあなたにパスをする。これでパートナーは1ポイントを得点できる。

 銀メダルチャレンジ。60秒間での得点を競う。

 

 クロスオーバーのドリブルを5回し、ボールを腰の周りを一周させ、パートナーにパスをすると1ポイント。同じ種類のパスを2回続けて使うことはできない。

 金メダルチャレンジ。これも60秒間での得点を競う。

 

 ドリブルをして、ディフェンスにフェイントをかけ、フェイドアウトシュートを打つと1ポイント。

 笑いのためのメニュー。  

 パートナーにカウントダウンしてもらい、ブザービーターを打つ。

 OPENには「シャドーボール」を使ったサッカー、野球、バレーボール、テニス、アメリカンフットボールの遊び方ガイドも掲載されている。 しかし、ガイドはあくまでガイドである。シャドーボールはどのような遊び方、トレーニングに応用しても自由だ。

 

 米国や英国のサッカーは10歳以下の子どものヘディングを制限しているが、「シャドーボール」で、他人と2メートル距離をあけて、接触することもないので、ヘディング練習もできる。

 子ども騙しのごっこ遊びと鼻で嗤うのはもったいない。やり方によってはイメージを体に落とし込んでいくトレーニングの一助にもなる。

 前述したように、米国疾病予防管理センターが公園、広場の使用するにあたって、どのようなことはしてはいけないのか、どのようなことならよいのかについての情報を提供している。

 個人での運動は、日本で言われているように「密集」「密閉」「密接」を避けて工夫することもできるが、スポーツのチームの運営管理者、指導者にとっては、医学に基づいたこのような指針があるほうがよいだろう。

 米国疾病予防管理センターのホームページはこちらをクリックしてください。 情報は4月18日現在。

 

 (米国疾病予防管理センターのホームページでは、ParkとPlay groundという単語が使われている。Parkの日本語訳では公園だが、オープンスペースでスポーツをしたり、歩いたりできる広場をイメージし、Play groundは遊具などが置いてある公園、または公園内で遊具の置いてあるエリアをイメージして翻訳した。翻訳した文章の順序は、米国疾病予防管理センターのホームページとは一致していない。ページの全文を翻訳したわけではない。)

やってはいけないこと。

・病気の人、最近COVID-19に晒された人は公園や広場に行ってはいけません。

・混雑している広場には行ってはいけません。

・遊具のある遊び場(Playground)は使わないようにしましょう。

・水遊びできる遊具のある遊び場、スパ、ホットタブを使わないようにしましょう

・組織的活動やスポーツには参加してはいけません。

 少なくとも常に他の人と2メートルの距離を保つことができないほど混雑している広場に行ってはいけません。

 遊具のある公園は、混雑していることが多く、推奨されているガイダンスを簡単に超えてしまう可能性があります。

 表面を清潔にし、消毒することは困難になりうる可能性があります。

 幼い子どもが汚染された遊具に触れ、手、目、鼻、口を触るとウイルスがばらまかれる可能性があります。

 組織的なスポーツや活動には参加しない。

 一般的に、バスケットボール、野球、サッカー、アメリカンフットボールなど、公園や広場のフィールド、オープンエリア、コートで行われるほとんどの組織的な活動は推奨されていません。これらの活動やスポーツは一般的に同じ世帯ではないコーチや選手がすぐそばにいる必要があり、COVID-19にさらされる可能性が高くなります。

すでに同じ屋根の下で暮らしている家族ならばしかたがないが、これらのスポーツ活動は、チームメート、対戦相手、コーチらと常に社会的距離を保つことが難しいということだ。

 すべきこと。

 ・自宅から近くの公園や広場に行きましょう。

 公園や広場を訪れるために長距離の移動をすることはCOVID-19の拡散に寄与する可能性があります。

 移動することで、COVID-19の原因となるウイルスに汚染された表面に触れるかもしれません。

 

 ・出かける前に準備をしましょう。

 広場や公園、その他のリクリエーション施設をオープンするかどうかは、州や地方自治体が決定します。事前に広場や公園に、トイレや売店などは開いているかを確認し、必要なものを持参しましょう。

 ・少なくとも他の人から6フィート(約2メートル)以上離れる(「社会的距離」)ことと、COVID-19を防ぐための対策をしましょう

 ・公園、広場、ビーチ、レクリエーション施設が一般に開放されている場合は、社会的距離を保ち、頻繁に手を洗い、せきやくしゃみをするときにカバーしたりなどの日常的な行動をしていれば、訪れてもよいでしょう。

 ・公園、広場、ビーチ、レクリエーション施設を訪れる際には、以下に従って行動してください。

 常に他の人から6フィート(約2メートル)以上、離れていてください。そうすることで、オープンエリア、小径をより使いやすくすることができるかもしれません。混雑した場所には入らないこと。

 

 世帯外の人との集まりを避けてください。

 

 石鹸と水とで少なくとも20秒間、頻繁に手を洗うようにしましょう。特にトイレに行った後、食事の前、鼻をかんだあと、せきやくしゃみをした後など。

 

 石鹸と水が使えない場合は、アルコール度数60%以上の手指消毒液を持参して使用しましょう。

※米疾病予防管理センターでは、スイミングプールは基準通りに消毒され、水質管理ができていれば使用してもよいとしているが、ここでも2メートル以上の距離をあけなければいけないという条件を明記している。ジャグジーや更衣室で他の人と2メートル以上あけられない場合は、使用しないほうがよいだろう。

 米国では公園や運動できる広場を閉鎖している市や地域もある。これは、外で運動することがいけないというのではなく、公園や広場をいつも通りに開放していると、多くの人が集まってきて、混雑し、2メートル以上の距離を取ることが難しくなるし、多くの人が触れた遊具に触れた手で顔をさわってしまうことを避けるためだ。

 

 というわけで、シャドーボールによる遊びやトレーニングをおすすめしたい。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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