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コインパーキング利用中に停電が起きたらどうなるのか?

柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト
便利なコインパーキング。でも、停電のとき、上がったままのフラップ板はどうなる?(ペイレスイメージズ/アフロ)

 6月に入ってから千葉県沖では、海底でプレートの境界がゆっくりとずれ動く「スロースリップ」という現象が続き、県南部から東方沖を震源とする地震が相次いでいます。

 16日には、11時台に震度4を含む地震が連続で3回、その後15時台にも1回発生し、千葉県内に住んでいる心配性な私は、今日もあれこれ不安を抱えながら過ごしています。

■地震で停電! コインパーキングに入れた車は出られるの??

 大きめの地震が起こると、発電所が送電を緊急停止したり、電柱が傾いたり送電線が断線するといった理由で一時的に停電してしまうことがよくあります。

 自宅にいるときにはじっと復旧を待つしかありませんが、出先にいるときには場所によって即座に対応しなければならず、心配事もさまざまです。

 万一に備えていろいろシミュレーションしておくことは大切ですが、車で外出する機会の多い方は、『コインパーキングの選び方』にも、気を使った方がよさそうです。

 そこで、警備会社に所属し、無人駐車場の一時対応に当たっている専門スタッフの方にお話を伺いました。

――停電が起こった場合、コインパーキングではどのような事態が発生しますか?

「パーキングは、基本的に電力を使って営業しています。ですから、停電になると、車が出入りするゲートや車を強制的に停めておくフラップ(板)、精算機などがストップしてしまいます」

――フラップが下がらないということは、車が出せないということですね?

「そうです。フラップは油圧やエアーの力を使って上げ下げしているのですが、それを動かすには電力が必要なので停電だと動いてくれません。4WDの車なら緊急時に無理やりフラップを乗り越えて脱出することもできなくはありませんが、一般的な乗用車だとまず難しいと思います」

――車が出せない場合はどうすればよいのでしょうか?

「まずは駐車場に掲示してある緊急連絡先に電話を入れてください。地域にもよりますが、通常なら30分程度で我々のようなスタッフが現地へ駆けつけます。そして、駐車場にバッテリーが備えてある場合はその電力を使って、それがない場合は手動でフラップを下ろします」

――地震のときには、30分では無理ですよね?

「おっしゃる通りです。地震のような大規模災害のときには無数のお客様から一気にSOSが入ります。また我々も現地へスムーズに行けるとは限らないので、とても30分では対応しきれないと思います。東日本大震災のときには大規模な計画停電が行われましたが、あの時には急遽、駐車場の入口に緊急の張り紙をして、『●●時以降は出庫することができません』と告知しましたが、それでも『急いでいるのに、車が出せないじゃないか!』というお客様からの苦情が続出し、対応が大変でした」

■停電を心配するなら「フラップ(板)なし」の駐車場を選ぶべき

――災害時は仕方がないとはいえ、マイカーが動かせないというのは辛いですね。ご経験から何かアドバイスはありますか?

「最悪の事態を想定すれば、フラップ式や立体のパーキングではなく、とりあえずゲート式、つまり、停電でも自力で出られるパーキングに停めることです。停電の場合、ゲートのバーも上がらなくなりますが、それは手で持ち上げれば何とかなります。また、最近はゲートもない、事前精算式のパーキングをよく見かけますが、あのタイプなら万一のときでも安心ですね。個人的には、この先、フラップ式は徐々に姿を消していくのではないかと思っています」

■遠隔操作でロック解除できるパーキングも登場

――警備会社ではさまざまなパーキングを管理されていると思いますが、機械の性能などに差はありますか?

「もちろん、機械メーカーによって、年式によって、また管理会社によってもかなりの差があります。たとえば最近では、フラップが下がらないというトラブルが発生した場合でも、遠隔操作で対応できる機種もあります。緊急連絡先に電話を入れると、お客様に暗証番号が伝えられ、それを入力することでスタッフが駆け付けなくても強制的にフラップを下げることができるのです」

――遠隔操作が可能なパーキングは外からわかりますか?

「たぶんそれを見分けるのは無理だと思います。心配な方は、事前によく使いそうな場所のコインパーキングに確認しておくとよいですね。私たちの経験上、ざっくりとしたアドバイスにはなりますが、精算機が新しいことを目安に選ばれると、故障は少ないようです。また、大手の会社が経営しているパーキングも、日ごろのトラブルが少ないのではないかと思います。

 災害や停電などの場合はどうしようもありませんが、コインパーキングの機械類は屋外に設置され、常に雨や風、雪などにさらされ、過酷な状況に置かれているので、実のところ、フラップが故障して下りないというトラブルはよく起こっているのです。自動販売機でジュースが1本出てこなくてもあきらめがつきますが、車の場合はそうはいきませんよね。

 繰り返しになりますが、停電や故障で車が出せないという最悪の事態に遭遇しないためには、初めからフラップ式や立体式のパーキングを選ばないこと、それに尽きます」

――よ~くわかりました! ありがとうございました。

ノンフィクション作家・ジャーナリスト

交通事故、冤罪、死因究明制度等をテーマに執筆。著書に「真冬の虹 コロナ禍の交通事故被害者たち」「開成をつくった男、佐野鼎」「コレラを防いだ男 関寛斉」「私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群」「コレラを防いだ男 関寛斎」「自動車保険の落とし穴」「柴犬マイちゃんへの手紙」「泥だらけのカルテ」「焼かれる前に語れ」「家族のもとへ、あなたを帰す」「交通事故被害者は二度泣かされる」「遺品 あなたを失った代わりに」「死因究明」「裁判官を信じるな」など多数。「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」はNHKで、「示談交渉人裏ファイル」はTBSでドラマ化。書道師範。趣味が高じて自宅に古民家を移築。

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