2017年のなでしこリーグで躍進するのはどのチームか?ーAC長野パルセイロ・レディース(1)
2月15日(水)~19日(日)まで、千葉県内で、なでしこリーグ1部と2部、韓国のクラブ1チームの計9チームによる千葉交流戦が開催された。
3月26日のなでしこリーグ開幕に向け、各チームがどのような仕上がりを見せているのか取材した。
今回は、昨年のなでしこリーグに「長野旋風」を巻き起こしたAC長野パルセイロ・レディース(以下:長野L)の2017年シーズンを展望する。
昨年は、昇格1年目で3位という好成績を残した。1部で戦う2年目のシーズンに向けて、長野Lは着々と準備を進めている。
本田美登里監督は、昨年のチームの勢いをこのように分析する。
「私たちがやりたいサッカーは、選手たちがやりたいサッカーです。ですから、私がこうしろ、ああしろとは言っていないけれど、去年(1部で)1年間戦ったら、結果的にバンバン縦に速く攻めるサッカーになりました。それがイコール、パルセイロのサッカーになったんです。」(本田監督)
ボールを持ったらまず、前を向く。ボールを保持するためだけに安易にバックパスをせずに、絶えず前を向いて相手ゴールを目指し、攻撃をしかける。その結果、ボールを失ったとしても、果敢なチャレンジは良しとするーー。コンパクトな陣形で選手間の距離を近くし、攻守を組織でカバーするチームが多いなでしこリーグの中でも、長野Lはより「個」の強さを押し出したサッカーを見せる。
チームを指揮して5年目を迎える本田監督は、選手の個性を最大限に引き出し躍動させる、絶妙な手綱さばきを披露してきた。自信を持たせるが、過信にならないように引き締める。厳しい言葉で突き放すこともあるが、それは奮起を促すための手段だ。
昨年、得点数は首位の日テレ・ベレーザ、2位のINAC神戸レオネッサに次ぐ3位(38得点)だったが、失点も10チーム中ワースト3(34失点)となった。「3点取られても4点取り返す」サッカーで、勝つ時も負ける時も派手なスコアになることが多かったが、ドラマチックな試合は多くのファンの心を捉えた。
昨シーズン、南長野運動公園総合球技場で行われたホームゲームには、9試合で32826人の観客が入り、平均して3647人と、リーグ1位の観客動員数を達成した。
【課題は守備力アップ】
今年も、その攻撃を牽引するのはFWの横山久美だ。
なでしこジャパンでの活躍も期待されるエースは、昨シーズン、リーグ戦18試合で16ゴールを決め、カップ戦も含めると3度のハットトリックを達成。得点女王に輝いた日テレ・ベレーザの田中美南と、シーズンを通して熾烈なランキング争いを繰り広げた。
昨シーズンの終盤になると、相手のマークは当然、得点源である横山に集中した。だが、流れの中からのフィニッシュや個人技からのゴール、ハーフウェーライン付近からのフリーキックなど、多彩な角度、形から試合を決定づけるゴールを多く決めた。
前線ではFWの泊志穂、MF大宮玲央奈、MF齊藤あかねらが豊富な運動量で横山を支える。中盤は、MF國澤志乃が広い守備範囲でカバーする。なでしこリーグでは珍しいワンボランチを採用しているが、今シーズンは相手によってワンボランチとダブルボランチを使い分ける可能性もある。
また、小柄だがテクニックと運動量のあるMF児玉桂子や、昨シーズンの途中にアルビレックス新潟レディースから加入したFW山崎円美ら、異なる個性を持つ攻撃のピースで変化をつけられるのも強みだ。
だが、前への推進力が強い長野のサッカーは、常にカウンターや失点のリスクに晒されてもいる。
押される試合でいかにゲームをコントロールし、失点を減らすことができるか。相手の研究も進む中で、昨年に続く上位を目指すためには、守備力の向上が不可欠だ。
守備面でキープレーヤーとなるのが、キャプテンで、センターバックの坂本理保だ。
「選手たちがどういうプレーをするか、という特徴と同じように、どういうミスをしやすいか、という傾向も昨シーズンで掴めたので、そこを早めに予測してカバーしたいですね。自分がいるから前の選手が思いっきりプレーできるとか、(マークにつく相手を)間違えたとしても、『思い切って行って、あとはカバーしてもらおう』と周りの選手が思えるような、精神的な面で頼りにされる選手になりたいです」(坂本)
主力メンバーに大きな変化は見られないが、新加入選手のうち、INACから加入したMF野口彩佳、ベレーザから加入したGK望月ありさ、東京国際大から加入したDF小泉玲奈は、即戦力としての活躍が期待される。レギュラー争いはより一層激しくなるだろう。
冬はグラウンドに雪が積もり、厳しい寒さの中でトレーニングに励む長野L。だが、美しい天然芝を持つホームスタジアムも含めて、プレー環境の良さも光る。
今シーズンは、男女を含めた長野パルセイロの統括強化部門の担当者が、年間を通して長野Lの全試合をチェックし、より現場に近い位置でチームをサポートすることになった。
チームの熱意が反映された環境改善によって、今シーズン、長野Lのさらなる成長が期待される。
スポンサーや地域の協力、大勢のサポーターの声援に後押しされ、長野Lは昨年、「地元から女子サッカーを盛り上げる」クラブとして、鮮烈な印象を残した。
その価値をさらに高めるためにも、今シーズンは昨年以上に重要なシーズンになるだろう。
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