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【インタビュー後編】ポリフィア『ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ』が切り開くギターの未来

山崎智之音楽ライター
Polyphia / courtesy of Sony Music Japan

2018年10月にニュー・アルバム『ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ』を発表、11月には来日公演が決定しているポリフィアへのインタビュー後編。

前編ではアルバムと参加ミュージシャン達について訊いたが、後編では現在の音楽シーンにおけるバンドの位置、そしてその音楽スタイルの原点について、ギタリストのティム・ヘンソンに語ってもらった。

<ギターは刺激的な楽器であり続ける>

●2018年において、ギター・ミュージックをプレイするというのは、あなたにとってどんなことですか?

今はギターにとってすごくエキサイティングな時期だと思う。『ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ』には大勢の友人たちに参加してもらったけど、みんなギター・ミュージックの境界線を“ネクスト・レヴェル”へと押し広げる同志だ。俺たちがやっていることは、年々支持を集めている。5年前だったら受け入れられなかったような音楽スタイルが、急速に受け入れられているんだ。米ギブソンやギター・センターの経営不振とか悪いニュースはあるけど、異なった形でギターは受け入れられている。まだメインストリームとはいえないかも知れないけど、ギターは刺激的な楽器であり続けるよ。

●現代の音楽シーンでそれぞれ潮流となってるエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)やヒップホップとはどのように関わっていますか?

『New Levels New Devils』ジャケット / courtesy of Sony Music Japan 10月24日発売
『New Levels New Devils』ジャケット / courtesy of Sony Music Japan 10月24日発売

EDMの流行でインストゥルメンタル・ミュージックを受け入れる土壌が生まれたことは、ポリフィアのようなバンドにとってプラスに働いている。歌詞やコーラスがなくても音楽を楽しめる習慣が出来たからね。一方でEDMのせいで廃れていくギター・ミュージックもあるけど、それが時代の流れなんだし、受け入れながら生きていくしかない。近頃、EDMにギターを取り入れようとする試みも行われてきたけど、ほとんどがダサいよね。その一方で、ヒップホップでのギターの使い方にはセンスのあるものも少なくない。俺自身ヒップホップのセッションでギターを弾くことがある。KILLYというラッパーと一緒にやったし、SoundCloudで音源を発表しているアーティストと共演したよ。

●あなた自身の音楽キャリアについて教えて下さい。

えーと、1993年生まれで、3歳のときにバイオリンを習い始めた。大嫌いだった(苦笑)。でも10歳のときに父親にギターを教えてもらって、これこそが自分のための楽器だと確信したんだ。結局18歳ぐらいまでバイオリンと並行してやっていたけど、ギターに専念することにしたよ。

●どんな音楽を聴いてギターに目覚めたのですか?

父親が持っていたブラック・サバスのCDに合わせて「アイアン・マン」「パラノイド」などをコピーしたんだ。それからジミ・ヘンドリックスにはまった。今でもジミは自分にとって最大のギター・ヒーローだよ。中学ではチオドスとか、エモい音楽を発見したけど、中学の終わりの頃にはデス・メタルを聴くようになった。最初に好きになったのがウェイキング・ザ・カダヴァーで、それからホワイトチャペルやジョブ・フォー・ア・カウボーイ、ザ・フェイスレス...ネクロファジストみたいなテクニカル志向のデス・メタルもよく聴いていたよ。

●Mr. BIGのポール・ギルバートからも影響を受けたという話も聞いたことがありますが...?

俺がギターをやりたいと言ったら、ポールの『スペースシップ・ライヴ』(2006)というDVDを父親に見せられたんだ。凄い!と思ったけど、スコット(ルペイジ)の方が彼にハマっていたね。俺はスティーヴ・ヴァイの方が好きだった。その後、ガスリー・ゴヴァンを聴いて衝撃を受けたんだ。スコットと俺にとってギター・アイドルだったし、インスピレーションを受けたよ。

●スコットとはどのように知り合ったのですか?

小学校が一緒で、家が歩いて5分ぐらいの近所だったんだ。スコットは俺より1学年上で、ずっと背が高かった。音楽を一緒にやるようになったのは俺が16歳、彼が17歳のときだった。2人とも父親がギターを弾いていたから、昔の音楽が好きだったんだ。ジミ・ヘンドリックスとかね。それで意気投合したんだ。

●目標とする、あるいはリスペクトするギター・コンビはいますか?レーサーXのポール・ギルバート&ブルース・ブイエとか、カコフォニーのマーティ・フリードマン&ジェイソン・ベッカーとか...。

うーん、ポールとマーティは聴いてきたし好きだけど、もう1人の方はどっちも知らない。特に理想とするギター・コンビはいないなあ。スコットと俺のスタイルはまったく異なっているけど、それがユニークな化学反応を生み出すんだ。他にはないケミストリーが、ポリフィアの個性なんだよ。

●曲作りの役割分担はどうなっていますか?

初期は2人で一緒に集まって曲を書いていたんだ。でも今では俺がロサンゼルス、スコットがダラスに住んでいるから、ネット経由でアイディアを送りあって、曲を完成させるようにしている。俺が最初のフックの部分を書いて、スコットが繋ぎのパートやアレンジをすることが多いかな。ただ特定のルールがあるわけではなく、必要に応じていろんなやり方で曲を書いていた。例えば「デスノート」のフックは2年ぐらい前、スコットがピアノで書いた曲で、それにichikaが書いたパートを加えて完成させていったんだ。

Polyphia / courtesy of Sony Music Japan
Polyphia / courtesy of Sony Music Japan

<常に先進的であろうとしている。そういう意味で“プログレッシヴ”かもね>

●どんなギターを弾いていますか?

2人ともアイバニーズの“AZ”最新モデルを弾いている。RGほどシャープでメタリックでなく、厚みのあるサウンドで、シングル・コイル・ピックアップをマウントしている。ネックが通常のモデルより丸いんだ。

●現在弾いているのは6弦ギターのみですか?7弦・8弦ギターは弾いていますか?

『ルネサンス』の頃は7弦・8弦を弾いていたんだ。モーツァルトのソナタは7弦、「ナイトメア」は8弦ギターで書いた。大きな挑戦だったね。ただ8弦ギターの場合、ネックはフラットにしなければならないだろ?俺はラウンドなネックが好きだし、一番弾きやすいから、6弦をメインに弾くようにしているよ。それに合わせてチューニングもドロップDからレギュラーにするようになった。

●人々はポリフィアの音楽をさまざまな言葉を使って表現しようと試み、多くの場合、失敗してきました。そんな中で“プログレッシヴ”という単語もしばしば用いられますが、あなたにとってプログレッシヴ・ミュージックとは?

真にプログレッシヴな音楽とは、曲が長くても、音楽の物語を綴ることが出来るものなんだ。ただダラダラとつまらない曲を書く言い訳に“プログレッシヴ”を使うのは間違っているよ。あと変拍子のための変拍子とかね。俺が日常的に聴く音楽で最もいわゆる“プログレッシヴ”に近いのはザ・コントーショニストかな。彼らは音楽を前方へと押し進めていくバンドだ。俺たちも常に先進的であろうとしている。そういう意味では“プログレッシヴ”かも知れないね。

●いわゆるProg(日本語でいう“プログレ”)は聴いていますか?

いやあ、あまり熱心なリスナーとは言えないかもね。俺の父親がイエスのファンだったよ。ポーキュパイン・トゥリー、キング・クリムゾンとかね。俺もキング・クリムゾンの「21世紀のスキッツォイド・マン」は好きだ。その魅力に気付いたのは、カニエ・ウェストが「パワー」でサンプリングしたからだったんだ。

●今回「ソー・ストレンジ」でヴォーカルをフィーチュアしていますが、2013年頃にもヴォーカリストをオーディションしていたそうですね?

そうなんだよ(笑)。『スメリアン・レコーズ』と契約したくて、ストレイ・フロム・ザ・パスに口を利いてもらったんだ。でもデモを送ったら、「シンガーはどこ?」という返事があった。それでオーディションをやってみたけど、気に入った人がいなかったし、ポリフィアの音楽に合っているとは思えなかった。レコード会社を満足させるためにシンガーを入れる必要なんてない、インストゥルメンタル・バンドのままでいようと決意したよ。それで話は終わりだ。

●ツアーの予定を教えて下さい。

9月からオーストラリアをツアーして、それからアメリカ、そして日本を回るんだ。その後、アジアのツアーを出来たら良いと考えているけど、とにかくクリスマス前には自宅に戻って、ぶっ倒れて熟睡するよ。来年(2019年)はヨーロッパ・ツアーをやるけど、俺たちはいつも新曲を書いているし、単発で発表するかも知れない。あるいは新しいアルバムを出すかも知れないよ。来年はぜひインドでもツアーをやりたいし、とにかく音楽をプレイすることを楽しんでいる。

●近年、数多くのアーティストがYouTubeやInstagramで自分の演奏のプレイスルー・ビデオを公開しており、ポリフィアもYouTubeに公式チャンネルを開設しています。ジャーニーやジューダス・プリースト、リッチー・ブラックモアズ・レインボーがYouTube経由で新メンバーを発見していますが、これまであなたにどこかのバンドから声がかかったことはありますか?

今のところ、そういうオファーはひとつも来ていないな(笑)。正直、あまり興味がないね。毎晩、他人の書いた曲だけをプレイするなんて不可能だ。サーティー・セカンズ・トゥ・マーズやフォール・アウト・ボーイからオファーがあったら考えるかも知れないけど、クラシック・ロック・バンドに入っても邪魔者扱いされそうだ。今はポリフィアで創造欲は満たされているし、十分忙しいよ。

【New Levels New Devils/ニュー・レヴェルズ・ニュー・デヴィルズ】

Sony Music Entertainment / RED Project Room

2018年10月24日発売

【NEW LEVELS NEW DEVILS TOUR Japan / POLYPHIA & COVET】

- 2018/11/18(日) 心斎橋SOMA

OPEN 17:00 / START 18:00

- 2018/11/19(月) 名古屋ell. FITS ALL

OPEN 18:00 / START 19:00

- 2018/11/21(水) 渋谷TSUTAYA O-EAST

OPEN 18:00 / START 19:00

公演特設サイト

https://www.creativeman.co.jp/event/polyphia2018/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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