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なぜバルサはメッシの“帰還”を考えているのか?背番号10が残した大きな穴とパリSGのプラン。

森田泰史スポーツライター
ドリブルするメッシ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

スタープレーヤーの去就に、注目が集まっている。

リオネル・メッシは、パリ・サンジェルマンとの契約を今季終了時までとしている。現状、契約延長にサインをしておらず、このまま行けば次の夏のフリーの選手になる。

長くバルセロナでプレーしたメッシ
長くバルセロナでプレーしたメッシ写真:なかしまだいすけ/アフロ

「私は(メッシのバルセロナでの契約延長の)交渉に参加していた。良い結末にはならなかったけれどね。メッシがここでプレーを続けられなかったことに、悔いがある」

「バルセロナのカンテラやラ・マシアについて話すのは、メッシについて話すのと同義だ。もちろん、私はメッシがバルセロナに戻ってきて欲しいと思っている。スポーツ的側面、ソーシャル的な意味合い、経済的側面で、象徴的存在になってくれる。我々は彼らとコンタクトを取っている」

これはバルセロナの第一副会長のラファ・ジュステの言葉である。

■メッシの復帰の可能性

メッシがバルセロナに復帰する。その可能性に、バルセロニスタが大きな期待を寄せるのは当然だろう。

メッシは2021年夏にバルセロナを退団した。ラ・マシア(バルセロナの育成寮)出身で、幼い頃からバルセロナでプレーしていたメッシを、バルセロナは放出せざるを得なかった。

バルセロナは、サラリーキャップの問題があり、高年俸のメッシを抱えきれなかった。その際、ジョアン・ラポルタ会長が「メッシには給料ゼロでも残って欲しかった」と発言して、ラポルタ会長とメッシ側の関係が悪化した。会長と選手(または選手の父親であり代理人のホルヘ・メッシ氏)との関係性は、このメッシのバルセロナ復帰に向けて弊害のひとつになっていると言われている。

ゴールを喜ぶバルセロナの選手たち
ゴールを喜ぶバルセロナの選手たち写真:ロイター/アフロ

また、バルセロナは依然としてサラリーキャップの問題を抱えている。

この冬、ラ・リーガが発表したサラリーキャップの額で、バルセロナのそれは6億4800万ユーロ(約907億円)だった。レアル・マドリー(6億8300万ユーロ/約956億円)に次いで、ラ・リーガ1部で2番目の数字であった。

先のクラシコで勝利したバルセロナ
先のクラシコで勝利したバルセロナ写真:なかしまだいすけ/アフロ

ただ、バルセロナは、この夏に資産を切り売りする格好で資金を捻出した背景がある。テレビ放映権10%の25年間譲渡と『バルサ・スタディオ』の49%の売却で、お金を生み出した。

ラス・パランカス(レバー)を4つ動かして、バルセロナはキャッシュを得た。だが、次の夏には、この手は使えない。ラ・リーガのハビエル・テバス会長が「レバーが役に立つのは、今シーズンだけ。それはバルセロナ自身が認めているところだ。彼らがサラリーキャップのために6億ユーロを使うことはできない。4億ユーロくらいにしなければいけない」と語るように、バルセロナは新たな手段を考えるか選手たちの売却や減俸を考慮する必要がある。

■パリ・サンジェルマンの思惑

一方、メッシはすでにパリSGから契約延長のオファーを受け取っているようだ。

パリSGはメッシ、ネイマール、キリアン・エムバペを擁するチームだ。「MNM」と称される3トップはフランスと欧州で脅威になってきた。しかしながら、高年俸の3選手を抱え続けることは困難で、クラブ側には次の夏にネイマールを売却する思惑があると噂されている。

パリSGは今季のチャンピオンズリーグで、バイエルン・ミュンヘンに敗れてベスト16敗退が決まっている。ビッグイヤーの獲得、それがパリSGとメッシの悲願だ。そこに向け、確固たるスポーツプロジェクトがあるかどうかが、メッシの契約延長の鍵を握る。

アルゼンチン代表のメッシ
アルゼンチン代表のメッシ写真:森田直樹/アフロスポーツ

昨年行われたカタール・ワールドカップで、メッシはアルゼンチン代表として臨み、優勝に大きく貢献した。

全てを勝ち取った男――。メッシはフットボールの世界で、そのように形容されている。ここまでの結果を出してきた選手だ。最後の決断は、彼自身に委ねられている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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