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見た目に騙されるな!『ユニコーン・ウォーズ』こそシッチェスナンバー1!

木村浩嗣在スペイン・ジャーナリスト
この見た目に騙されて見ないのは愚!見て驚きを堪能すべし!

映画祭でパスした。公開時にも映画館へ行かなかった。配信が始まっても何カ月も無視していた。

こういう私の愚をみなさんが繰り返さないようこれを書いている。

見た瞬間に、この作品が2022年のシッチェス映画祭個人的ナンバー1になった。大好きな『パール』『You Won’t Be Alone』よりも上だ。

大きなスクリーンで見るべきだった。日本公開はこれからだから、みなさんにはまだチャンスがある。

『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン
『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン

ぬいぐるみみたいなクマ、おめめパッチリのユニコーン、あふれるハートマーク――。そうしたものへの拒否感はいったん忘れて、映画館に直行してほしい。絶対に、絶対に見てほしい。スクリーンで堪能できなかった私の愚を、みなさんには犯してほしくない。

■見た目に騙されるな→子供に見せるな→大人は見ろ

「見た目に騙されるな」には双方の意味がある。

絵柄で早合点し、映画館に行かない愚と、絵柄で早合点し、子供に見せる愚である。

『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン
『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン

大人向けのアニメでも子供が見ることができるものがある。

例えば、スペインでは年齢制限がない『風の谷のナウシカ』や同7歳以上の『もののけ姫』だ(アルベルト・バスケス監督は宮崎駿の大ファン)。見ても理解できないだろうが、害にはならない。

一方、『ユニコーン・ウォーズ』を子供に見せればトラウマ間違いなし。スペインでは16歳以上の年齢制限が付いていた。

『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン
『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン

暴力描写はある、戦争なのだから。パステルカラーで美化されているが、血は血であり、内臓は内臓である。

モラル的にも正しくない。

愛らしい姿のクマやユニコーンが愛らしいわけではなく、その正反対である。仲間内や家族内を支配する嫉妬からの苛め、羨望からの裏切りなどの暗くねじれた感情……。

何よりも、暴力の象徴たる軍の紋章、敵の体を引き裂く矢尻、敵意を煽る宗教団体のシンボルがいずれも「ハート型」という点に、“愛は地球を救わない”というメッセージが明確に読み取れる。

『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン
『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン

想えば、「愛」や「正義」の名の下にいくつの蛮行が行われてきたことか。

子供には無邪気に愛やハートを信じていてほしい。現実を知るのは大人になってからで良い。よって、この作品は見せられない。

■安易な世界観を排除。「人類」の位置付けが素晴らしい

大人向けのファンタジーというのには、何かしらの教訓がある。この教訓の質が作品の質を左右する。

よくある例を挙げる。

クマとユニコーンに戦争をさせる→教訓:戦争は良くない。

戦争で自然が破壊される→教訓:自然を大切に。

家族や仲間内の不和→教訓:みんな仲良く。

『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン
『ユニコーン・ウォーズ』の1シーン

こんなものでは、この作品に心を震わされることはなかった。

最初に愛を否定しておいて、最後に愛を肯定されても納得いかない。「やっぱり愛だよね!」なんて子供の無邪気さへの回帰である。

違う。『ユニコーン・ウォーズ』はそんなありきたりのメッセージには逃げず、きっちり私たちに恐ろしいメッセージを届けてくれている。

それは、監督が好きな『フルメタル・ジャケット』とも『プラトーン』とも異なるオリジナルである。

「笑いは沈黙になり、『なんてこった!』で終わる」(監督)。

必見!

※日本公開を前に公式ツイッターが立ち上がっている

※余談だが、アニメ『おかしなガムボール』は私のような還暦世代も小学校低学年も笑える、という奇跡を実現していて、おススメ!

※写真提供はシッチェス・ファンタスティック映画祭

ポスター
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在スペイン・ジャーナリスト

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟のコーチライセンスを取得し少年チームを指導。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペイン・セビージャに拠点を移し特派員兼編集長に。15年7月編集長を辞しスペインサッカーを追いつつ、セビージャ市王者となった少年チームを率いる。サラマンカ大学映像コミュニケーション学部に聴講生として5年間在籍。趣味は映画(スペイン映画数百本鑑賞済み)、踊り(セビジャーナス)、おしゃべり、料理を通して人と深くつき合うこと。スペインのシッチェス映画祭とサン・セバスティアン映画祭を毎年取材

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