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ザッカーバーグCEOの姉、Facebookの「ホロコースト否定」対応にコメント『世界規模で議論を』

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:Shutterstock/アフロ)

 Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOはホロコースト否定に関するFacebook上での投稿を削除しないことを米国メディアRecordの取材で明らかにした。ザッカーバーグ氏自身がユダヤ人であることから、大きな波紋を呼んでいる。

「全てを削除するわけではない」

 ザッカーバーグ氏はインタビューの中で「ホロコーストを否定する人々もいる。そのことは極めて残念だ。だが、人々に正しく理解されていないこともあるので、そういう投稿を必ずしも全て削除することはない。人々が意図的に間違った理解をすることはないと思う。但し、私自身はホロコースト否定論を認めているわけでは決してない。特定の集団に対する暴力や憎悪を煽る、行き過ぎた投稿は削除していく」とコメントしていた。但し、反ユダヤ主義的な人種差別を煽るような発言は削除していく。ザッカーバーグ氏自身がユダヤ人であることから、大きな波紋を呼んでおり、英米のユダヤ団体は非難声明を出している。

 第2次大戦時にナチスが欧州のユダヤ人やロマなど約600万人を殺害したホロコーストだが「ホロコーストは存在しなかった」という、いわゆるホロコースト否定論を主張する人々もいる。「ホロコーストはユダヤ人が多額の賠償金を貰い、イスラエル建国を正当化するためにでっちあげた物語で、そんなに多くのユダヤ人が殺されてはいない」といった主張だ。1980年代以降、多くの欧州諸国ではホロコースト否定を規定する法律を制定、施行してきた。その適用範囲は次第に拡大され「ホロコーストなどなかった」と発言しただけで罰せられることもある。

「SNSからホロコースト否定論者を排除してもなくならない」

 マーク・ザッカーバーグ氏がFacebook上での「ホロコースト否定」投稿の全てを削除しないという発言を受けて、マークの姉で、かつてFacebookでマーケティング・ディレクターも務めていたランディ・ザッカーバーグ氏がCNNにコメントを寄せた。

 ランディ氏は「ホロコースト否定は非難されるべき事象であり、ホロコーストなどなかったという発言自体はおぞましいことだ」と述べたうえで、マーク氏の意見も尊重。「ソーシャルメディアというプラットフォームからホロコースト否定論者を排除するだけでは、ホロコースト否定論はなくならない」。

「世界規模で、ホロコースト否定問題について議論する必要がある」

 ランディ氏自身もユダヤ人であることから、長年にわたって多くのユダヤ団体で活動を行ってきた。「ユダヤ人コミュニティのリーダーとして、ソーシャルメディアで働いてきた者として、ホロコースト否定発言をSNSでどのように扱うかについて大きな責任を感じます」とも語った。

 またランディ氏は「残念なことに、我々が誰かに向かって声を上げる時に、その声は良い時も悪い時もある。私はホロコースト否定については反対だが、アメリカでは欧州と違って『ホロコーストはなかった』と発言することに罪の意識を感じない人が多いのも事実。もっと世界規模で、ホロコースト否定問題について議論していくことが必要だ」とコメント。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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