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「ウクライナの戦場の最前線では急速にロボットが軍人の業務を代わってやっている」進む戦場の無人化

佐藤仁学術研究員・著述家
(ウクライナ軍提供)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻してから、ウクライナ軍もロシア軍も兵器の無人化、戦場の無人化に注力してきた。遠隔地からコントロールして攻撃したり、物資を輸送したり、地雷を設置したり、撤去したりしている。

2024年6月にアゼルバイジャンのメディアの「Kanal13」(英語版)がウクライナでの紛争において戦場で、ロボットが軍人にとって代わられていることを紹介するショート動画の報道を公開していた。タイトルは「Ukraine is increasingly replacing people at the front with combat robots」(ウクライナの戦場の最前線では急速にロボットが軍人の業務を代わってやっている)である。

動画の中で爆弾を搭載したロボットがロシア軍の塹壕に突っ込んでいき爆発したり、自動小銃を搭載したロボットがロシア軍に攻撃を行ったり、無人のロボットが物資の運搬や負傷者の救助に使われたりしているという事例が紹介されている。

ウクライナ紛争では多くのリモート操作のロボットタイプの無人車両、銃を搭載した攻撃ロボット、地雷敷設ロボット、物資や負傷した兵士の運搬や監視目的のロボットが利用されており、戦場の無人化が確実に進んでいる。

現在、ウクライナの戦場で使用されている無人のロボットは攻撃用も運搬用も監視用も遠隔地(リモート)で人間の兵士が操作している。ロボット自身に搭載されたAIが自身で判断して攻撃を行ってはいない。

▼ウクライナ紛争で軍人の業務に代わって多くのロボットが導入されていることを伝えるアゼルバイジャンの報道

ウクライナ領土防衛隊「近代戦争では様々なテクノロジーが使用されていますが最後は人間の軍人が頼りになります」

従来、戦場で人間(軍人)が行っていた「6D業務」(①単調:dull、②汚い:dirty、③危険:dangerous、④人間が入れないところ:distance、⑤深いところ:deep、⑥配送:delivery)の任務の多くは既にロボットが行っている。ウクライナ紛争でも両軍によってロボットが人間の兵士に代わってこれらの業務を遂行している。ウクライナ紛争で既に上空からの監視や攻撃に多用されているドローンもロボットの1つである。

従来、人間の兵士が行っていた6D業務がロボットに変わることによって軍人の"人間の安全保障"が守られるようになる。ロボットなので攻撃されて破壊されたら代替のロボットを持ってくれば良い。ドローン、地雷を搭載したロボット、地雷敷設ロボット、物資輸送のロボットも戦車や戦闘機などに比べたら安価で簡単に開発できるものが多い。

ウクライナ領土防衛隊は公式SNSで「戦場における上空のドローンの有効性についてはもはや議論の余地がない。次のステップは地上でも同じような技術を使った戦場の無人化である。地雷を敷設した、地雷を除去したり、負傷者を助けたり、戦闘をしたりするような地上での無人ロボットが戦闘員の生命を救います」と投稿していた。

このようなロボットは上空のドローンなどで探知されやすいので、攻撃にせよ輸送にせよ目的を達成する前に破壊されることも多い。ウクライナ領土防衛隊は「現在のような近代戦争では様々なテクノロジーが使用されています。しかし戦場では最後は軍人が頼りになります」という投稿もしていた。

無人化の技術によって戦場の在り方も大きく変わりつつある。だが、ウクライナ紛争の実際の戦場に既に無人化された兵器やロボットがロシア軍とウクライナ軍によっていくつか導入されているが、ウクライナ紛争の終結は現時点では見えてきていない。

ドローンも無人技術を活用した兵器としてウクライナ紛争では監視用と攻撃用として両軍によって多く活用されている。だが、両軍ともにドローンの活用によって制空権を握れてはいない。

▼ウクライナ領土防衛隊の公式SNS

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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