2019年9月、フランスのプログレッシヴ・ロック巨匠MAGMA(マグマ)が来日
2019年9月、フランスのプログレッシヴ・ロックの巨匠MAGMA(マグマ)が来日。東京と大阪でライヴを行う。
1969年に結成、50周年を記念するツアーの一環として行われる来日公演。ツアー・タイトルが “50 ANS APRES”(50年後)とフランス語なのは、宇宙から来たコバイア星人を名乗る彼らにしては徹底していない気もするが、コバイア語で宣伝しても地球人には読めないので、それは仕方ないだろうか。
半世紀にわたって常にラディカルな音楽革新を行い、ジャズ/ファンク/現代音楽などが渾然一体となった異星人のロック・オペラ・スタイル“ズール Zeuhl”で我々地球人を魅了してきたMAGMAは2019年に最新アルバム『Zess (Le Jour De Neant)』を発表。1977年に着想を得たというこの38分の組曲はこれまでライヴで時折披露され1981年、パリのテアトル・ボビノで演奏されたヴァージョンは『ボビノ1981 秘蔵ライブ・コレクション』(1995)でも聴くことが出来た(邦題は「宇宙神」)。スタジオ・レコーディングはされてこなかったこの曲が満を持してアルバム化されたのが本作である。プラハ・シティ・フィルハーモニー管弦楽団をフィーチュアした壮大なこの作品は“ズール”の真骨頂といえるもので2019年6月の発売以来、MAGMAの“正典”のひとつとしてファンから熱狂的に迎えられてきた。
「Zess」は近年のライヴで演奏される頻度が低いようで、今回の来日公演でも聴くことが出来るかは不明だが、現在のMAGMAのスピリットを表現する作品として、ぜひアルバムを聴いておきたい。
はたしてどんな曲がプレイされるか?...というのは当日のお楽しみ。最近の海外のセットリストを見ると1973年の名盤『呪われし地球人たちへ Mekanik Destruktiw Kommandoh』がしばしば組曲形式で演奏されているが、日本でどのようなステージが繰り広げられるか、期待が高まる。
1970年代に確立した孤高の音楽スタイルを踏まえながら21世紀にトランスファーさせてきたMAGMAだが、常に新しい表現に挑戦してきた。それはライヴの編成についてもいえることで、2009年の来日ではリーダーのクリスチャン・ヴァンデのソロ公演が行われたし、2010年にはフジ・ロック・フェスティバルで、日本での野外フェス参加も実現している。
そして今回は東京・大阪でのエレクトリック・ライヴに加えて9月20日(金)、渋谷WWWでアコースティック編成での公演も行われる。
そんな独自の音楽性とたゆまぬチャレンジを怖れぬ姿勢は、ジャンルを超えてあらゆるミュージシャンからリスペクトされてきた。
映像作品『ザ・ミュージック・オブ・マグマ』(2018)に収録されたインタビューで、ジェロ・ビアフラ(元デッド・ケネディーズ)はこう語っている。
「自分の魂や自分の存在そのものにとって重要で、長いあいだ聴いても飽きることがないのがストゥージズ、ホークウィンド、ソニックス、そしてMAGMAだ。彼らは俺が飛行機に乗ってわざわざ見に行く唯一のバンドだよ」
同作品にはロバート・トゥルヒーヨ(メタリカ)やトレイ・ガン(元キング・クリムゾン)も出演、MAGMAを讃えている。
MAGMAの音楽性はベテランならではの重みを持ちながら、常に刺激に満ちており、若い世代のミュージシャンからもリスペクトされている。オランダの異形のロック・フェス“ロードバーン・フェスティバル”は毎年キュレーターが出演者の一部を決めているが、2014年はオーペスのマイケル・オーカーフェルト、2017年にはバロネスのジョン・ダイヤー・ベイズリーの招きで、MAGMAが出演している。筆者(山崎)は2017年、米国ラスヴェガスの“サイコ・ラスヴェガス”フェスでMAGMAのステージを見ることが出来たが、メルヴィンズとスリープというヘヴィ・ロック界の伝説的バンドに挟まれながら、まったく遜色のないエッジと威圧感を持つステージで魅せてくれた。
50年の軌跡を経て、MAGMAが飛び立っていく宇宙。その向かう先に何があるのかを指し示す日本公演、必見である。
<MAGMA JAPAN TOUR>
“50 ANS APRES”
2019/9/20 (Fri) 東京 Shibuya WWW
OPEN 18:00 START 19:00
(Acoustic Version)
2019/9/21 (Sat) 東京 EX シアター 六本木
OPEN 17:00 START 18:00
2019/9/22 (Sun) 大阪 サンケイホール ブリーゼ
OPEN 17:00 START 18:00
公演オフィシャルサイト