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レジェンド羽生善治九段、今期王将リーグ初白星! 連勝中の広瀬章人九段を止める

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月25日。東京・将棋会館においてALSOK杯第74期王将戦・挑戦者決定リーグ▲羽生善治九段(54歳)-△広瀬章人九段(37歳)戦がおこなわれました。


 10時に始まった対局は17時1分に終局。結果は89手で羽生九段の勝ちとなりました。


 リーグ成績は、羽生九段は1勝2敗。広瀬九段は2勝1敗となりました。


羽生「前の2局(西田拓也五段、菅井竜也八段戦)がちょっとやっぱり内容がわるかったので。またこれから修正して、次に臨んでいけたらと思います」


広瀬「2勝できたんですけど、やっぱり、今日の将棋のような感じを指してしまうことが多いので。あんまり挑戦など意識せずに、一局一局、しっかり指したいと思います」

羽生九段、さすがの指し回し


 本局は羽生九段先手で、序盤は相掛かりで始まりました。序盤の駆け引きで両者ともに飛車先の歩は交換せず、駒組を進める進行に。羽生九段は現代調の新型雁木。広瀬九段は中住居に構えました。

羽生「どこで駒がぶつかるのか、ちょっとよくわからないでやってたんですけど。すごい難しい展開なのかなと思ってました」

 昼食休憩に入る前の34手目。広瀬九段は四段目に角を上がります。

広瀬「昼食休憩のあたりが作戦の分岐点だったと思うんですけど。本譜の展開は避けないといけなかったですね」

 再開後の35手目。羽生九段は桂を跳ねました。広瀬九段はここで手薄くなった右端1筋を攻める予定だったようですが、その順は見送っています。

広瀬「△4四角は本譜の▲3七桂のときに△1五歩と突くような手を、その予定でやってたんですけど。いざその局面になって考えてみると、無理そうかなと思ってしまって」

 広瀬九段は代わりに飛車を2筋に展開し、逆襲する方針を見せました。

広瀬「ちょっと妥協点が見当たらず。本譜の飛車回らされて、歩を垂らしあってる展開は、囲いの性能の差が出てしまうので、もうダメかなと思っていました」

 羽生九段は玉を堅く囲ったあと、中央から歩を突っかけて動き、本格的な戦いが始まりました。

羽生「実戦みたいにけっこう、ごちゃごちゃと手が戻る展開になりそうだと思ってたんで。はっきりはよくわからなかったですね」「実戦の展開もけっこう難しいんじゃないかと思って指してました」

広瀬「あの局面(53手目▲5五歩)はすでに、大変かもしれないですけど、ちょっと私には指しこなせない展開になってしまったので」「▲5五歩突かれてもう、かなりキツいと思いました」

 70手目。広瀬九段は36分考え、羽生陣に桂を打ち込みました。

広瀬「なにを指してもわるいんで、どう勝負するかなと思ってたんですけど」「まあただ、悪手だろうなとは思って指していました」

 攻め合いで互いにと金を作りあう展開となり、羽生九段がリードを広げていきました。

羽生「と金ができる形になって、なんかちょっといいのかな、と思って指してました」

 89手目。羽生九段は中段に角を出ます。これが広瀬玉をにらむ好位置。広瀬九段に適当な受けがなく、早めの投了となりました。

 羽生九段は快勝で今期リーグ初白星。逆転挑戦に向けて大きな勝利をあげました。

 ここ最近は公式戦5連敗中だった羽生九段。その連敗もまた、ここで止めました。


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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