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旧統一教会、1世信者である両親からの会見中止の要請にも負けない、2世信者の姿勢に、多くの人が涙した。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

10月7日、日本外国特派員協会で、元統一教会信者で、祝福2世として教団内で育った、小川さゆりさん(仮名)の会見が行われました。

彼女の一連の主張が終わり、記者との質疑応答がなされるなかで、小川さんの旦那さんより、教団側からの衝撃的なファックス内容が読み上げられました。

「今、旧統一教会からメッセージが入りました。そこには彼女の両親の署名が入っています。内容を要約すると、彼女は、彼女が言っているように、精神に異常をきたしており、安倍元首相の銃撃事件以降、その症状が酷くなっていて、多くのウソを言ってしまうようになっている。そのため、この会見をすぐに中止するようにというメッセージが届きました」

教団側からの会見中止の要請です。

小川さんのメンタルを壊そうとしてまでも、会見を中止させようとしてきましたが、彼女は時折、涙をみせながらも、最後まで会見を成し遂げました。その姿は立派でした。

文書の内容を受けて小川さんは「心の症状については、4年前の時点で治っています」として「自分たち(教団側)が正しい、自分たちの主張だけを続けている人たちと、自分(小川さん)と、どちらが悪なのか。これを見てくださっている多くの方はわかってくれていると私は信じています」と言葉をつづけます。

そこには、多くの2世信者らの思いの代表としての志があったからこそ、最後まで会見を成し遂げられたのではないかと思っています。

多くの人が涙した会見

小川さんの会見後に、私が出演した「よんちゃんTV」(MBS毎日放送)の番組内【旧統一教会】元2世信者の小川さん(仮名)に両親から「会見中止せよ」のメッセージ...「2世の声を封殺するのは許されない」でも、出演者の中には彼女の姿を見て涙を流す方もいました。おそらく会見を見た人のなかにも、そうした方は多かったのではないでしょうか。

旧統一教会の信仰をやめたとはいえ、親に育てられた愛情を感じている人は多くいます。その気持ちを利用してまで、会見の中止要請をする言動は、絶対にしてはいけないことです。しかも、彼女に公の場で病気の話までさせるまで、心を追い込もうとする1世信者の親と教団の言動に対して許せない思いから、私自身も番組内でのコメントをする際、思わず言葉につまってしまいました。

教団の使う、親子の絆を引き裂く手法

親子の心の絆を引き裂き、分断させる手法は、以前から教団が信者の心をコントロールする際に使っていたものです。これにより、教団は信者らを思いの方向に誘導しようとしてきます。

これは勧誘した人を教団に引き入れる時にも、使われます。

教義では、自分たち旧統一教会の家庭こそが神様の側であり「文鮮明・韓鶴子総裁が真の父母である」と教えられます。ですので、これまで育てられてきた、肉親(父母)はサタンになります。そのために、家庭のなかでこれまで辛かったことなどを告白させて、サタン側の親の悪い点をあげつらっていきます。そして、いかに私たちがサタン側の家庭で育ったかを教えて込んでいくのです。最終的には親と子の関係を分断させて、入信させます。

信者となった後も、もし親が涙を流して教団を辞めるように訴えてくれば、それはサタンの側の言葉として、耳を向けてはならないと教えられます。「サタンは親の情に通じてやってくる」などともいわれました。

そのため、必死になって親が信者になった子供に思いのたけを伝えても、右の耳から左の耳へと通過していき、心には響かないのです。親の情に引っ張られて脱会した人がいたとすれば「サタンの言葉によって、引き戻されてしまった」ということもありました。脱会させたい願う親と信者である子は、まともな会話すらできない状況になっています。

私のような1世信者と、2世信者である彼女との立場は違えども、相手をサタン側としてみて、親子の絆を断絶させるような言葉で、会見の中止をもくろもうとした構図は同じだと考えます。

何より「精神に異常をきたしており」「多くのウソを言ってしまうようになっている」などと、なぜ公にファックスを通じて、こんな言葉をいうのでしょうか。彼女とて、脱会したとはいえ、2世信者は親への育てられた愛情を持っていると思います。どうして、教団は親子の絆を破壊するような行為ばかりをさせるのでしょうか。

私は、このような親子の絆が壊されて行く光景を、これまで何十年も、幾度となく見続けてきました。だからこそ、2世信者に対しても同じ手法を繰り返すのかという憤りとともに、それを跳ね返した小川さんの行動を見て、番組内で言葉がつまったわけです。

はからずも、教団側の姿勢を世に見せる結果になった

両親は1世信者です。となれば、教団側からの要請があれば、今回のような文面を送らざるをえないと思います。小川さんのような祝福2世は生まれながらに、罪のない「神の子」といわれており、合同結婚式(祝福)に参加させて、教団の一員にすることは必須なことです。しかしそれができなかった。

もしその親心に付け込んで、この文面を要請していたとすれば、さらに許せません。

あるいは、これまでの教団の言動から見て、両親からお願いをされたので、やむを得ない立場で送ったというかもしれませんが、それこそが詭弁です。親子の断絶をさせるつもりがないのなら、文書を送らない選択も取れるはずだからです。

この手法は、私がもっとも憤りを覚えていたものの一つでしたが、はからずも、記者会見上で、このやり方を世の中に見せる結果となりました。教団がどんなに対外的に表面だけを取り繕おうとしても、元信者らが声をあげることで、その実態は明らかになります。

今回の教団の記者会見中止要請の行為により、旧統一教会への解散請求や、反セクト法の成立に向けての動きがより加速するのではないかと思っています。

記者たちからの拍手に込められた思い

多くの人がこの会見を見て、教団の姿勢に憤りを覚え、涙された方もいると思います。

まさに、最後に湧き起こった記者たちからの拍手。これこそが彼女の声を、社会の人たちが受け止めた姿だと思っています。そして、彼女の偽りのない言葉が世界に向けて、発信された瞬間だと感じました。

2世信者を始めとする元信者の声を封殺し、世に出さないようにすることは絶対にしてはいけないことです。これからも教団や信者からの攻撃は続きます。ぜひとも、一人でも多くの心ある社会の人たちが、彼ら、彼女らを守ってほしいのです。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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