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温泉の鮮度が違う!「足元湧出の共同浴場」5選

高橋一喜温泉ライター/編集者

せっかく温泉に入るなら、質の高い温泉に入りたい。

温泉の質を決める要因のひとつは、湯が新鮮で、その個性がいきいきと感じられるか、にある。生まれたての鮮度の高い湯は、入浴したときの居心地のよさが違う。やさしい泉質の湯は肌にすっとなじむ。成分の濃い湯は、肌を直接刺激し、個性を訴えかけてくる。

「温泉の鮮度」という観点から最も理想的とされる形は、「足元湧出泉」である。温泉は空気に触れることで酸化が進み、劣化していく。温泉情緒をかきたてる濁り湯も、もともとは透明の状態で湧出したものが、大気などと化学反応を起こして変色した結果である。つまり、ビールと同じように温泉も時間が経てば経つほど、鮮度は落ちていくのである。

足元湧出泉は、別名「足元ぷくぷく温泉」とも言われるが、その名の通り、湯船の底からぷくぷく湧き出す湯である。

たいていの温泉施設では、湧出した場所から湯船まで源泉を引いてくるのが通常であるが、なかには、源泉が湧き出す岩のすきまや川底の上に湯船を設えた温泉が存在する。湧きたての湯が酸素に触れることなく、直接湯船に注がれれば劣化することはない。

足元湧出泉は、一般的な源泉かけ流しの湯船と比べても別格の気持ちよさである。たえず湧き出るピュアな湯に全身が包まれると、思わず笑顔がこぼれてしまう。

だが、足元湧出泉は全国的にも貴重な存在で、めったに巡り合えない。そこで、今回は足元湧出の共同浴場に絞って5カ所紹介したい。

大湯温泉・荒瀬共同浴場(秋田県)

江戸時代には南部藩の保養地でもあった歴史ある温泉地。4つの共同浴場が点在し、いずれも新鮮な湯がかけ流しにされているが、別格は川沿いにある荒瀬共同浴場。源泉が足元から湧出しており、ちょっと熱めだが、特別に鮮度の高い湯を堪能できる。入浴料金200円。

木賊温泉・岩風呂(福島県)

奥会津にある鄙びた温泉地。周囲は昔話に出てくるような古き良き日本の原風景が続く。木賊温泉は昔ながらの共同浴場が充実しているが、とくに木賊温泉の岩風呂は、温泉が湧出する川床を利用した湯船で、足元から湧き出す新鮮な湯を楽しむことができる。混浴。入浴料金300円。

湯の峰温泉・つぼ湯(和歌山県)

開湯1800年、日本最古の湯としても知られる山あいの温泉地。熊野詣の拠点としての利用者も多く、世界遺産の中で唯一入浴できる温泉地でもある。気軽に入浴できる公衆浴場のほか、足元湧出の「つぼ湯」もある。1人でいっぱいになる岩の湯壺の底から湯が湧き出し、透明から白や灰色など7色に変化するという。

蔵王温泉・川原湯共同浴場(山形県)

標高880メートルに位置する歴史ある温泉地。白布温泉、高湯温泉とともに「奥羽三高湯」のひとつに数えられる。スキーリゾートとしても人気で、秋は紅葉、冬は樹氷が絶景。温泉街には3つの共同浴場があり、いずれも蔵王らしい酸性泉がかけ流し。なかでも川原湯共同浴場はすのこ状になっている湯底の間からこんこんと新鮮な湯が湧き出している。熱めの酸性泉なのでパンチがきいている源泉だが、一度つかってしまえば最高の気持ちよさが待っている。

湯原温泉・砂湯(岡山県)

美作三湯のひとつで、川沿いに十軒ほどの宿が並ぶ。ダムの麓にある開放的な混浴露天風呂「砂湯」が名物で、川底から源泉が湧き出す「足元湧出泉」。全国でも大変貴重な露天の共同浴場である。新緑や紅葉、雪景色など四季折々の風景も美しいが、湯船につかりながら見る夜の星空も一見の価値あり。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3900超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『スーパーJチャンネル』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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