参院選前に社会的弱者の“アイドル”が暴く 森友事件と格差社会の真実
社会的に弱い立場の人たちのアイドル
話は6年前にさかのぼります。私はNHK大阪放送局の記者でした。当時、芸能人の母親が生活保護を受給していたことをきっかけに生活保護バッシングが巻き起こっていました。そのことに疑問を感じ、現場の実情を取材していました。
大阪には、生活保護の人をはじめ生活に困っている人たちを支援する「全大阪生活と健康を守る会連合会(略称=大生連)」という団体があります。私はその集会の取材に来ていました。
集会も終盤にさしかかったころ、司会者の「急きょ駆けつけてくれました!」との紹介でサプライズゲストが登場。それが、当時、大阪選挙区で参議院議員に初当選したばかりのたつみコータローさん(共産)でした。
途端に沸き起こった「たつみさ~ん!」という歓声と、大きな拍手。たつみさんはそれまで9年間、大阪市此花区でこの会の活動をしていたのです。彼が生活に困窮している人たちの気持ちがわかるのは、当時の体験に根ざしているのでしょう。
彼はこの会のアイドルであり、この会が支援している社会的に弱い立場の人々のアイドルだから、これほどの熱烈歓迎を受けるのだと感じました。のちにこの会の会長が「共産党はけしからん。私の後継者を国会に連れていってしまった」とぼやいていましたが、もちろんたつみさんへの愛情あふれる言葉でした。
あいさつが終わって会場から出てきた彼に、私は名刺を渡してあいさつしました。これが私とたつみコータローさんとの最初の出会いでした。
森友事件追及~真相解明にかける~
次にたつみさんと出会ったのは2年前。森友事件取材のさなかです。森友事件の核心は、なぜ国有地が森友学園の出せる金額に合わせて大幅値引きされ売却されたのかにあります。
●その土地に建つ小学校の名誉校長が安倍昭恵首相夫人だったこと。
●学園の籠池泰典理事長(当時)が当初、学校名に「安倍晋三記念小學院」と現職首相の名前を付けるつもりで、その名を冠した寄付金の振込用紙も配っていたこと。
●日本会議に連なる多くの政治家も関与していたこと。
大きな政治問題になるのは明らかで、政界での取材が欠かせません。真相に迫る情報は主に自民党など与党側にありますが、追及にあたる野党側の情報も必要です。たつみさんが森友事件追及の急先鋒の一人であることは、誰しも認めるところでしょう。
与野党問わず幅広く政治家への取材を進める中で、たつみさんへの取材も重要性を増していきました。その過程で、安倍政権追及というだけではなく、真相解明にかけるたつみさんの思いに触れました。
国会で「直及勝負」
そのたつみさんが本を出しました。「直及勝負」という書名は、国会での「追及」と「直球勝負」をかけた表現。本の前半は、たつみさんの森友事件追及700日の闘いの記録です。
ですがこの本の真価はそこだけにとどまりません。むしろコンビニ業界の闇に切り込んだ第4章こそ、社会的に弱い立場の人の味方、生活に困っている人の味方として活動してきたたつみさんの真骨頂が現れています。
そしてさらに「カジノ解禁の裏側」「格差と貧困」「残業代を取り戻せブラック企業に立ち向かう」と、たつみさんがこの6年間国会で政府に問い質してきたテーマが並んでいます。
最後の「スナックのママが逮捕? 時代おくれの風営法を見直せ」は、街の小さなスナックに寄り添っています。
たつみさんは2日、大阪弁護士会館で開かれた会合に出席。この6年の活動を振り返り、集まった弁護士らに支援を求めました。会場では著書「直及勝負」も販売されていました。
4日から参院選
7月4日、参議院議員選挙が公示されました。私はこれまで記者として与野党いずれにも偏ることなく、自民・公明・維新・立憲民主・国民民主・共産・社民・れいわ、と幅広く取材でお付き合いしてきました。その姿勢は今も変わりません。特定の党派ではなく、疑惑の真相解明をあきらめない人、社会的に弱い立場の人々のために全力を尽くす人が、国会議員を務めてほしいと願います。
参院選の投開票は21日に行われます。