被災地復興に欠かせない能登の林業家支援に何ができるか
能登半島地震発災から約2カ月。被災地に関する報道は今も多いが、そこで取り上げられる産業被害は、まず漁業であり、輪島塗などの伝統工芸、そして観光産業だろう。しかし、林業分野はどうなっているだろうか。
また林業関係者自身の状況についても、ほとんど報道されていない。
石川県の能登半島には、200人弱の林業従事者がいる。森林組合に所属するほか、業事業体や一人親方として従事してきた。普段はスギやアテ(ヒノキアスナロ)の人工林で木材生産を行うほか、広葉樹を伐って炭焼きや原木しいたけ栽培などにも従事していた。
だが地震では、多くの森林所有者や、林業従事者も大きな打撃を受けた。一方で復旧作業の大きな戦力となっていることも知っておきたい。
半島中の道路は、山が崩れて通行できなくなった地点が多数ある。それが孤立集落を生み出し、救助も支援物資も届かないという状況を引き起こした。
そうした道路を通れるようにするには、土砂の撤去や陥没やひび割れ・隆起した路面の修復が必要だが、それ以上に厄介なのは、倒木の処理だ。山の木々が土砂とともに道路や電線に倒れこんでいるところが多数ある。しかし、傾きたわんだ樹木を撤去する作業は非常に難しく、不用意に手を出すと事故につながりかねない。経験のある林業関係者が行わないと危険なのである。
実は石川県と石川県森林組合連合会は「災害時の応急対策業務に関する協定」を事前に締結していた。今回の地震では、土木関係からの出動要請もあり、早くから多くの林業従事者が現場に駆け付け、木の伐採や撤去などの作業を行っている。なお道路などに倒れた木の撤去は、所有者と関係なく自治体の要請で行える。
ただ現場からは「避難所から被災現場に通ってる」「強風が吹き雨や雪が降っているのに合羽がない」「断水しているので、汚れた衣類や道具の洗濯が大変」といった現状が伝わってくる。
そのうえ林業関係者自身の自宅や作業施設が倒壊したことで、林業道具そのものを失ってしまった人が多くいるのだ。
一方で、当初の被災地支援だけではなく、本来の仕事の面でも支障が出ている。地震前から多くの事業体が木材生産の契約を抱えていたが、その作業が滞っているのだ。それでは彼らの今後の収入にも関わってきてしまう。だが、道具がないと再開できない。
このままだと林業を諦める人々も出てくるだろう。とくに道具類は自前の業者の場合は、それらを失った人にとって仕事を継続するには負担が大きい。
そこでもりラバー林業女子会@石川(林業を応援する女性の団体)が能登の林業従事者に失われた林業道具を届けるためのクラウドファンディングを立ち上げた。
具体的には、チェーンソー、チルホール、ロープ、ウインチ、ソーチェーン、滑車などの林業道具のほか、防振手袋、チャップス、長靴、合羽、ヘルメットといった安全装備などの器具も含めて支援するものだ。
一式揃えると約40万円かかるという試算があったため、目標金額は50人分に当たる2000万円に設定している。全員に一式を全部揃えなくてはならないわけではないが、かなり高くて厳しい目標だろう。
ただしクラウドファンディングの形式は、目標金額に達成しなくても支援金を受け取れる<All in形式>で実施した。目標金額が集まる前から、支援状況により、順次道具や装備を発注・手配し、現場で働く方たちへ届けていくという。そのために誰が何を必要としているかの調査も行っている。
ちなみにリターンは、お礼のメールやお手紙を送ることとしている。
このプロジェクトを立ち上げた代表の砂山亜紀子さんは、次のように語る。
「森林組合に任せると民間の事業体や一人親方にまで支援が届かない可能性もあるので、林業女子会が起草者になる方がよいと判断しました。もちろん、森林組合のほか関係者に話を通して協力していただいています。とにかく、復興に頑張っている林業家を応援するとともに、これをきっかけに林業を辞めてしまうことがないようにしたい、そして道具が足りないために怪我などを負うことのないようにしたいのです。また県内にも林業道具を供給する代理店があります。彼らの仕事を切らさないようにすることも考えました」
「支援は、金額だけじゃないんです。これだけ多くの人があなたたち能登の林業従事者を応援しています、ということを示すことも大切だと思っています。ただ目標金額を高く設定したので、お腹の痛い日々を送っています(笑)」
被災現場の最前線で活動する林業従事者に、仕事道具&安全を届けたい!
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