ソロ温泉の達人が教える「ひとり旅でも予約がとりやすい温泉地」5選(甲信越編)
「ひとり旅は予約がとりにくい……」「ひとりだと泊まれない宿もある……」
ひとり旅の初心者から、このような悩みを聞くことがある。
実際、旅行予約サイトなどで宿泊人数を「1人」にして検索すると、「2人」のときよりも検索結果が半減することもある。宿の立場からすれば、1人客よりもグループや団体のほうが利益が大きいので仕方のない面もある。
また、「ひとり客はOK」であっても、一気に料金が高くなってしまうケースも多い。「同じサービスを受けるのに料金が倍近いというのは納得いかない……」という声も理解できる。
とはいえ、ひと昔前よりも一人で宿泊できる宿が増加傾向にあることは確かだ。コロナ禍を経て、ソロ温泉(ひとりでの温泉旅)へのニーズが高まっていることも、その要因だろう。
そこで、今回は東北エリアに絞って「ひとり旅でも予約がとりやすい温泉地」を5カ所紹介したい。ポイントは2つ。
ひとつは、宿のバリエーションが多い温泉地。ある程度規模が大きい温泉地なら大型旅館から小さな宿まで揃うので、ひとり旅を受け入れてくれる宿も多い。温泉旅館にかぎらず、民宿やペンション、ビジネスホテルなどでリーズナブルに過ごす、というプランも選択肢に入る。
もうひとつは、湯治の文化が残る温泉地。療養などに使われてきた昔ながらの温泉地は、ひとり客を受け入れる懐の深さがある。また、湯治宿は宿泊費がリーズナブルという点も、ひとり旅にとってはありがたい。
栃尾又温泉(新潟県)
3軒の宿が寄り添うように建つ小さな温泉地。3軒とも湯治対応の宿なので、部屋さえ空いていればひとり客でも対応してもらえる。予算などと相談しながら決めるといいだろう。基本的にはどの宿でも、宿泊した人のみが入浴できる共同浴場を利用する。約36度の源泉は湯との境界があいまいになる不感温度。暑い季節は1時間以上平気で入浴していられる。ぬる湯に長くつかっていると、体の芯まで温まる。
下部温泉(山梨県)
山あいに佇む素朴な温泉地で、1200年の歴史をもつ古湯。歓楽的要素のない温泉街は、昭和の時代から時が止まってしまったのように静かで心が落ち着く。昔から湧く20~30度代のぬる湯が特徴で、温冷交互浴に励む湯治客も多い。夏場には最高である。源泉にこだわるなら足元湧出の古湯坊源泉館で、湯治向けである。静かな温泉地で、ひとり旅にはもってこい。
湯田中渋温泉(長野県)
湯田中渋温泉郷は夜間瀬川流域に点在する10の温泉地の総称。100軒近くの宿泊施設が集まるため、ひとり旅でも受け入れてくれる宿は多い。なかでも渋温泉は、石畳の小道に宿や共同浴場が並ぶ温泉街が情緒にあふれ、浴衣姿の入浴客がそぞろ歩きを楽しむ光景は絵になる。9つの共同浴場をめぐる「外湯めぐり」が名物で、宿泊客は自由に入浴できる。
越後湯沢温泉(新潟県)
東京駅からなら新幹線で約70分。新幹線に乗り込んで駅弁でも食べていたら、すぐに到着する距離だ。川端康成の小説『雪国』の舞台となった温泉地で、川端康成の入浴した湯も健在。観光客の多い温泉地ではあるが、周辺にはお土産屋や飲食店、コンビニなどが充実しており、ひとり旅の初心者でも安心できる。旅館だけでなく民宿などもあるので、「素泊まりにして食事は外で」という選択肢もあり。
野沢温泉(長野県)
標高600mに位置する情緒あふれる温泉街には、旅館や土産物屋、飲食店などが並び、ひとり旅でもなじみやすい規模感。正統派の温泉旅館も多いが、安価に滞在するなら素泊まり数千円の民宿やペンションなどがおすすめ。リーズナブルに長期滞在も可能だ。温泉を引いていない宿でも、外湯が13カ所あるので困ることはない。