タオルが投げ入れられて終わったIBFスーパーウエルター級タイトルマッチ
IBFスーパーウエルター級チャンピオンのバフラム・ムルタザリエフが、挑戦者ティム・チューを3ラウンド1分55秒で下し、同タイトルの防衛に成功すると共に、デビュー以来の連勝を23に伸ばした(KOは17)。
2024年3月30日、チューはWBO同級タイトル2度目の防衛に失敗した。試合直前に急遽挑戦者が変更になり、身長で23cm、リーチで24cmもの差がある相手への対策が不十分だった。
第2ラウンド終盤に対戦相手の左肘がチューの頭部に当たり、夥しい出血に見舞わるという不運もあった。チューは自身の血で視界が奪われ、1-2の判定で敗れたのだ。
今回、チューは元WBA/WBC/IBF統一スーパーライト級チャンピオンの実父、コンスタンチンから直接指導を受け、万全を期してIBFタイトル奪取を目指した。このファイトをプロモートしたPBCも、あくまでもチューを主役とし、ムルタザリエフを斬られ役として扱っていた。
初回、両者は距離を取り合い、パンチを交換する。これまでにムルタザリエフは6度、チューは4度のファーストラウンドKOをマークしていたが、どちらかがキャンバスに沈むであろうことが伝わってくる打ち合いだった。
身長で8cm、リーチで9cmのアドバンテージを持つムルタザリエフは、パンチ力でもチューを上回っていた。2ラウンド開始早々に右ストレートでダメージを与えると、同36秒に左フックをクリーンヒットして前WBOチャンピオンからダウンを奪う。回復できないチューを、左フック、右ストレートでさらに2度倒すが、殿堂入りを果たした統一スーパーライト級王者の息子は、ラウンド終了のゴングまで辛うじて持ち堪えた。
とはいえ、筆者はこの時点で試合終了を告げていても良かったと感じざるを得ない。翌3ラウンドの頭にドクターがチューの目を確認してファイト続行となったが、またしても左フックを浴びて崩れ落ち、立ち上がった後も右を喰らってよろけたところでコーナーからタオルが投入された。合計4度ダウンし、24勝(17KO)2敗となったチューは“壊れた”感が拭えない。
試合後、勝者は言った。
「最初のビッグショットをヒットした折、どれほど重いパンチを入れたかが分かりました。チューは本物の戦士です。いつかスパーリングをして、お互いの成長を助け合えることを願っています」
敗者もコメントした。
「リングに上がる度に、自分のすべてを出してきた。しかし、物事は計画通りに進まず、今夜はより優れた男が勝利した。言い訳は出来ない。最初の一発が明暗を分けたね。これがボクシングだ。打たれると反応が鈍くなってしまう」
IBFタイトルを守った31歳のロシア人ファイターは強かった。ビッグマッチが用意されるか。そしてチューは、回復できるか。