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通い介護に疲れた。「家計ひっ迫」でクタクタ。 “親の死”を待っているようで自己嫌悪

太田差惠子介護・暮らしジャーナリスト
イメージ画像(写真:アフロ)

 高齢の親と別居しているケースが主流となりつつあります。そんな親に支援や介護が必要になると、度々通うことに……。新幹線や飛行機で通う遠距離介護ではもちろん、在来線を使うほどの距離でも、積み重なると交通費などの支出は増え続けます。そして、行ったり来たりで体力的にも消耗……。

父親の死を待っている?

 マコさん(50代・東京)の父親(82歳)は神奈川県の実家で1人暮らししています。片道の交通費は電車とバスで1300円ほど。往復で2600円です。

 たまの帰省なら、なんてことのない額ですが、頻度が増すと結構な負担に。父親に介護が必要になってからは、ほぼ毎週帰っています。父親は3つの診療科にかかっていますが、同日に予約が取れないと週に2~3回実家に行くこともあるそう。そのため、パート勤務のシフトを減らさざるをえないと言います。「収入が減って支出が増えるので、厳しいんです」とマコさん。しかも、電車に乗っての行ったり来たりは体力的にもキツク……。

 スイカにチャージをする度、「こんな生活がいつまで続くんだろう」と考えるのだとか。「でも、そんな風に思っている自分にゾッとすることがあるんです。私は、父が死ぬのを待っているのかなって」。

 別居介護であれ、同居介護であれ、「いつまで続くんだろう」と考えるのはマコさんに限った話ではありません。インタビューをすると、多くの人がこの言葉を発します。と、同時に自己嫌悪の表情に……。

 しかし、「いつまで続くんだろう」と考えるのは、ごく普通のことであり、落ち込むことはありません。親に生きてもらうために、介護を行っているのですから。

交通費負担は家族間で相談

 1回の帰省費用が数万円かかる遠距離介護の場合は、緊急時以外は毎週のように帰省する人は多くありません。「遠いから」と親も子も割り切れるのです。

 一方、中距離介護の場合は、“帰れなくもないから”と、帰省頻度は高まる傾向があります。その結果、マコさんのようにパートを減らすことになったり、介護離職になったりするケースもあります(もちろん、遠距離介護や同居介護でもあります)。

 しかし、マコさんの言うように、「収入が減り、支出が増える」のは、子にとっては過酷な状況。

 親の介護は、長期戦を覚悟しましょう。そのために、交通費などの支出についても予算を組むことから始めたいものです。

 遠距離介護では、親から交通費をもらっている人の割合が約半数という調査結果もあります。近距離・中距離でも、度々になりがちなので、計画的に。

 親の介護が始まったら、家族会議を開いて、かかる費用をどうするかを話し合いましょう。なるべく親本人のお金で介護をします。親にゆとりがあれば、交通費も親のお金で。親を見守るために通いを増やしたところ、減収となったため、「母のために働けないんだから」と、1回数千円の謝金(?)を母親本人からもらっているという女性もいました。

 きょうだいがいる場合、あまり通えないきょうだいが頻繁に通う者の交通費や介護にかかる費用を負担しているケースもあります。

 一方、「親元に帰る交通費を親からもらうなどと、そんな親不孝なことはできない」という声を聞くこともあります。けれども、親本人にとっても、いつか相続で渡すよりは、ずっと生きたお金の使い方だといえるのではないでしょうか。

家族会議イメージ画像
家族会議イメージ画像写真:アフロ

自分の“できる範囲”を死守する

 家族会議を行った結果、親本人にも、きょうだいにも、経済的ゆとりがない場合、自分自身の経済状況をしっかり確認しましょう。

 繰り返しますが、長期戦です。自分が親のために出せる金額を考えたうえで、その範囲を超して動くことは避けましょう。自身の生活、自身の老後のことも考え、仕事をセーブすることも避けたいものです。

 近距離・中距離の場合、“行けなくもないから”と、通院にも同行することが多いですが、本当に親1人で行けないのでしょうか。もしかしたら、毎回の同行は必要ないかもしれません。

 通院以外の日々の生活に関しても、何らかのサービスを入れることで、週1回の通いを2週に1回、月に1回と減らすことができる場合もあります。サービスについては、親の地元の地域包括支援センターで相談できます。また、親とのコミュニケーションに電話やオンラインを活用する手もあるでしょう。

 世の中、子のいない高齢者は大勢いますし、子がいても、さまざまな事情で、頻繁な対面ができないケースもあります。それでも、何とかなっているのですから、工夫次第の面はあります。

やり過ぎない

 親に対して、いったん手厚く関わると、減らすことが難しくなります。緊急時などは別ですが、状況が落ち着いているときは、やり過ぎないことも、子が自身の生活を守るためには必要です。

 手厚く関わり続けると、親にとってそれが当たり前となります。一例ですが、父親が亡くなり母親が1人暮らしとなったAさん。父親の葬儀が終わって、母親に対し「お母さん、これからは、毎週、帰ってくるから、頑張って」と励ましました。

 やがて、母親の生活、心身状態は落ち着いたのですが、Aさんが帰省回数を減らそうとすると「毎週、帰ってくると言ったじゃないの」と母親は文句を言います。Aさんは「“毎週”なんて言わなければよかった」と後悔しきり……。

 “子ども”と言っても、こちらも中年世代。経済的にも肉体的にも“できる範囲”があります。自分のことを過信しないようにしたいものです。

介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会)の資格も持ち「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年遠距離介護の情報交換場、NPO法人パオッコを立ち上げて子世代支援(~2023)。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第2版』(以上翔泳社)『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』(共著,KADOKAWA)など。

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