手負いのレアル・マドリーがパリSGを迎える。欧州王者と新興勢力の象徴が激突【後編】
パリ・サンジェルマンはパリFCとスタッド・サン=ジェルマンが合併してできたクラブだ。創設されたのは1970年のことである。
近年チャンピオンズリーグ(CL)を制してきたクラブはレアル・マドリー(1902年創設)、バルセロナ(1899年創設)、バイエルン・ミュンヘン(1900年創設)、チェルシー(1905年創設)、インテル(1908年創設)、マンチェスター・ユナイテッド(1878年創設)といずれも長い歴史を誇っている。
■世界を驚かせる巨額の投資
47年という浅い歴史で、欧州の頂点に立つために、パリSGは大物選手を獲得してきた。デイビッド・ベッカム、ロナウジーニョ、ダヴィド・ジノラ、ジョージ・ウェア、マウリシオ・ポチェッティーノ、ミケル・アルテタ、二コラ・アネルカ、ズラタン・イブラヒモビッチ...。名立たる選手たちがパリに到着した。
だが昨年夏のナセル・アル・ケライフィ会長の行動は世界に衝撃を与えた。契約解除金2億2200万ユーロ(約297億円)を拵えて、2021年までバルセロナとの契約を結んでいたネイマールを「強奪」する形で獲得したのである。
さらに、アル・ケライフィ会長はモナコからキリアン・ムバッペを獲得。今季終了時までのレンタル、今年夏に1億8000万ユーロ(約243億円)を支払うことでモナコと合意に至り、ムバッペ、ネイマール、エディンソン・カバーニの「MCN」が形成された。
■「MCN」の得点占有率は64%
パリSGはリーグアン第25節終了時点で首位を独走している。2位モナコとの勝ち点差は12ポイントで、大きな番狂わせが起こらない限り、パリSGの優勝は決定的だ。
そして、リーグアンのパリSGの総得点76得点のうち、およそ64%が「MCN」によって生み出されている。ネイマールは18試合に出場して19得点、カバーニは23試合21得点、ムバッペは18試合9得点を記録した。
CLでは、グループステージ6試合で25得点を挙げ、同大会の新記録を樹立した。その内訳はネイマール6得点、カバーニ6得点、ムバッペ4得点、クルザワ3得点、アウベス2得点、ヴェッラッティ2得点、ディ・マリア1得点となっている。
また、パリSGは今季CL6試合で4失点しか喫していない。これはバルセロナ(1失点)、マンチェスター・ユナイテッド(3失点)に次いで、32チーム中3番目の数字だ。堅守を誇るアトレティコ・マドリー(4失点)、グループHでマドリーを抑えて首位通過したトッテナム(4失点)と並んでいる。
■アンカーに誰を起用するか
ウナイ・エメリ監督はマドリーとの大一番で、チアゴ・モッタを負傷で欠く。アンカーの候補者はアドリアン・ラビオ、ラサナ・ディアラ、ジオバニ・ロ・セルソである。
ラビオは今季ほとんどアンカー起用されていない。L・ディアラは今冬の移籍市場で加入したばかりだ。ロ・セルソは経験不足が指摘されている。
ラビオはヴェッラッティと共にインテリオール(中盤の前目)での先発が濃厚だ。エメリ監督はアンカーの位置に守備力に長けた選手を置きたいと考えている。現時点、L・ディアラがポジション争いで一歩リードしていると言えそうだ。
■絶好調のディ・マリア
もうひとつ、エメリ監督の悩みがある。アンヘル・ディ・マリアの起用法だ。
ディ・マリアは2018年に入り、10試合で9得点6アシストを記録している。彼はまさにトップフォームにある。そして現在ディ・マリアが置かれている状況は、奇しくもマドリー在籍時のものに似ている。
カルロ・アンチェロッティ当時監督はコンディションが万全である限り、ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド、「BBC」を先発から外さなかった。その一方で、イタリア人指揮官はディ・マリアの存在を無視できなかった。
2013-14シーズンのCL決勝。シャビ・アロンソを出場停止で欠いたアンチェロッティ監督は中盤にルカ・モドリッチ、サミ・ケディラ(現ユヴェントス)、ディ・マリアを据え、前線に「BBC」を並べた。アンチェロッティ監督の采配は実を結び、延長戦に突入したアトレティコ・マドリーとの一戦でディ・マリアは個人技からベイルの得点をお膳立てした。
選手起用をひとつ間違えれば、大惨事になる。ビッグマッチになればなるほど、詳細が勝敗を決するからだ。
新興勢力の象徴が王者に挑む。この図式はメディアを含め周囲の興味を大いに引くものである。
この試合の勝者にもたらされる効果は計り知れない。現地時間14日午後8時45分(日本時間15日午前4時45分)、決勝T1回戦第1戦がマドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウで行われる。マドリッドに世界中の視線が注がれるはずだ。