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中国でコロナ対策のボランティア殺人。犯人の男に死刑判決

宮崎紀秀ジャーナリスト
陳の判決は死刑(2021年7月15日 黒竜江省高級人民法院の公式アカウントより)

 中国のコロナ対策として外出を禁じる、封鎖式管理。これに従わず外出しようとした男が、それを阻止しようとしたボランティアを刺して殺してしまった。男には死刑判決が下された。中国当局としては、コロナ対策破りに厳罰を与える姿勢を改めて示したとも言えそうだ。

コロナ対策で外出厳禁の中...

 舞台となったのは、中国東北地方の黒竜江省。高等裁判所に相当する同省の高級人民法院の発表によると、ハルビン市の中級人民法院(地方裁判所に相当)で、7月15日、以下の事件の裁判が開かれた。

 2021年の2月3日の昼頃、ハルビン市の呼蘭区という地域に住む陳成竜は、自宅のある団地を出ようとしたところ、防疫対策に当たるボランティアに引き止められた。この地域では1月21日から封鎖式管理という措置がとられていた。

 封鎖式管理とは、団地などから住民が外出することを基本的に認めず、人の移動を抑える中国が得意とするコロナ対策だ。具体的な方法は、場所によって違いはある。食料品や生活必需品などの購入だけは、回数を制限して住民に認める場合もあれば、より厳しく、団地などが組織するまとめ買いに頼る、あるいはデリバリーしか許可しないといった場合もある。

逆ギレした男は...

 外出を遮られた陳は、持っていたビニル袋から刃物を取り出し、このボランティアを刺し倒し、その後も胸、腹、腕など数か所を刺した。ボランティアは出血多量で死亡、陳はその日のうちに拘束された。

 ハルビン市の中級人民法院は、7月15日の裁判で、陳に対し故意殺人の罪で死刑を言い渡し、付帯して起こされた民事訴訟に関しては、被害者の経済的損失への賠償として65万6000元余り(日本円で約1100万円)の支払いを命じた。

 裁判所は判決理由として、故意殺人の「事実は明らか」とすると共に、「陳が防疫の管理コントロール措置に従うのを拒み、防疫スタッフの制止を聞きいれず、ボランティアを刺して殺害した罪と結果は極めて深刻であり、厳しく罰するべき」と断じた。

コロナ対策破りには厳罰

 黒竜江省では、2021年1月に入り、それまで抑え込めていたコロナの感染が再発した。およそ1か月後には、再び抑え込みに成功したが、感染の再発地域で採られたのが、封鎖式管理だった。陳の事件はその過程の中で起きたものだった。

 中国の司法当局は、一貫して防疫措置への違反者には厳しく処し、時にはその手口なども明らかにしてきた。そうした経緯を見ると、この事件の本質は殺人事件ではあるが、同時に陳は防疫措置に従おうとしなかった不届き者であり、司法当局としては、コロナ対策を脅かす者は容赦無く罰する、という強い態度を改めて国民に示したとも言えそうだ。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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