北欧最大級の音楽祭ロスキレ(ROSKILDE FESTIVAL)は現地デンマークでは国民的な行事だ。
幅広い世代に愛され、「父親がボランティアしている」「今日は娘も友達と来ているはず」と、「いまも家族が同じ場所でこの空間を楽しんでいる」というのは、よくあるエピソード。
会場内にある大量のテントにびっくり!
来場者はキャンプをしながら友人たちとお酒を飲んだり、ゲームをしたり、まさに音楽という枠を超えた夏の社交場となっている。
2023年は6月29から7月6日まで8日間開催され、8万枚のチケットは完売した。
環境・気候対策に熱心なフェス
さて、北欧諸国の音楽祭や文化行事といえば、気候・環境対策に熱心という共通点がある。
気候排出量を減らすために、キャンプ参加者にも「公共交通機関を使う」「できるだけ道具を持参・持ち帰る・来年も同じギアを使用する」「帰宅時はテントがあった場所のゴミ拾い」などを呼び掛ける。
結果、2022年の開催時には前年度と比べて25%、500トンの気候排出量を減らすことができた。
エコな参加活動を呼びかける
会場では若い世代のアクティビズムや気候関連の展示・イベントも目白通しで、「気候正義トーク」など、「本当に音楽祭?」と目を疑うほど気候について考えるイベントも多い。
音楽祭に参加することで、自分はどれほどのフットプリント(炭素の足跡)を残しているかもチェックできる。
例えば、ロスキレに参加するうえで自分のギア(道具)は何を使用したかでは「マットレス、キャンプ用チェア、照明」などを選ぶことができ、チェック後にはこのような表示が出る。
90%以上のメニューはオーガニック
フェスに出店する全ての飲食店は90%以上のメニューはオーガニックフードでなければいけない。
オーガニック計算は毎日フェス側に報告。食品ロスを減らすために野菜の皮をあまりむかないようにしたり、飲み物は缶ではなくボックス型の容器を使用、二酸化炭素量が多い牛肉は止めるなどの対策に徹底している。
飲食店を出店しているのは地元のバレーボールクラブ。売上金はクラブ活動に使われる。100%オーガニックにすることができないのは、寒い気候の北欧では一部の食材・香辛料などにどうしてもできることの限界が生じるためだ。
テント撤去時にゴミ拾いをしなかったら、翌年のフェスには参加できない
テントを撤去する際はゴミ拾いをすることが決められている。
もし参加者がゴミ拾いを怠った場合はブラックリスト入りとなり、次回以降のフェスには参加できない。
実はイベント中はテント周辺には驚くほどゴミが散乱している。「本当に環境のことを気にかけているの?」と疑いたくなるが、ゴミ拾いはテント撤去時にしていればいいそうだ。テント広場以外の場所のゴミ拾いはボランティアが行う。
学生にエコなフェス設備を企画してもらう
デンマークの天窓メーカーVelux(ベルックス)とロスキレは共同企画「サステイナビリティ・チャレンジ」を行った。
25~30歳の職業学校や大学に通う学生がグループで参加し、リサイクル材料でフェスの観客にとって便利な音楽祭で使用できる道具を作コンテストだ。
風除けや日除け、リラックスできるものなど、安全で機能的という条件で製作。優秀作品は次回のフェスで購入される可能性もある。
これからの未来のイベントの在り方、気候や環境についてたっぷり考えて同じ価値観の仲間を見つけることもできるロスキレは、単に「フェス」という枠組みを超えた空間となっていた。
気候排出量が発生しやすい音楽祭で、いかに罪悪感を減らしながら音楽を楽しんでいくか、ロスキレはインスピレーションがたくさん詰まった未来思考のフェスだった。
Photo&Text: Asaki Abumi