なでしこジャパンはなぜアジア大会の前に中1日の強化試合を組んだのか?
仁川アジア大会(オリンピックのアジア版とも呼べる大会)の初戦、なでしこジャパンは9月15日に中国を迎えた。
試合はなでしこジャパンがボールポゼッションで上回るも、前半は中国の出足の早いプレッシングを受け、ショートカウンターを喰らってピンチを招く展開が多かった。後半に入るとなでしこジャパンにも攻撃のリズムが出てきたが、阪口のミドルシュートがクロスバーを叩くシーンが1度あった程度で、決定的チャンスはさほど作れずに、スコアレスドローのまま終了のホイッスルが鳴った。
フィジカルコンディションが整わなかった要因
現地で試合を観ていて非常に気になったのは、選手のフィジカル面のコンディションだ。右サイドバックの有吉が相手のドリブルに並走している時にしりもちをついて突破を許したり、攻撃の起点となるボランチ宮間がイージーなパスミスを連発したり、普段あまり見られないミスが散見された。
フィジカルコンディションが整っていない状態で初戦を迎えた要因として、9月13日に山形で開催した強化試合、ガーナ戦が挙げられる。公式試合に向けて中1日で、しかも国を跨いで強化試合がセットされるなど、前代未聞だ。
本来の前日練習では、コンディションの調整は既に完了していて、戦術練習やセットプレーの最終確認などが行われるのが常識だ。しかし今回のなでしこジャパンは、ガーナ戦の翌日(中国戦の前日)に山形から陸路で仙台空港に移動し、仙台から韓国の仁川へと2時間半かかる国際線で現地入りした。結果、フィジカルへの負担を考慮して前日練習を行わなかったのだ。
中1日の強化試合を国を跨いでセットした理由
なぜ国際大会の大事な初戦を前に、中1日かつ長距離移動が必要な場所で強化試合が行われたのだろうか?
日刊スポーツの記事では、以下のような解説をしている。
来年6月にカナダで開催される女子ワールドカップの予行演習を兼ねてとのことだが、女子ワールドカップの日程は、準決勝の片方と3位決定戦の間隔が唯一中2日になっているのを除き、最低でも中3日の間隔があけられている。つまり、「来年のW杯も日程の間隔が短く」という解釈は誤りだ。
カナダの国土は広いため、試合間の長距離移動が発生するのは自明である。よって、山形で強化試合を開催し、長距離移動をしてから試合に挑む形をテストしたのは理解できる。ただし、その長距離移動を中1日の間隔で行うのは過剰である。
長距離移動と中1日開催の話は論点が全くもって異なるのだ。中1日で強化試合をセットした理由を聞かれて、「カナダ女子ワールドカップに向けた予行演習」と答えるのは筋違いだ。他に存在する理由を隠すための、論点のすり替えのように感じる。
中1日の強化試合における隠された真相
他の理由は日本サッカー協会に聞いてみない限り、真相はわからないが、ひとつ手掛かりになる情報がある。サッカー競技の組み合わせ抽選会の結果が8月に出た時に、女子サッカーは9月16日に開幕すると報じられているのだ。
この報道が出た後、何らかの事情で女子サッカーの開幕戦が9月16日から9月15日に1日前倒しになっている。本来は中2日の予定で9月13日に強化試合ガーナ戦を組んだつもりが、本戦の日程前倒しの煽りを喰らい、中1日で親善試合を強行せざるを得なくなった、というのが真相だと予想される。
ではなぜ、その事情を隠し、「本番に向けた予行演習」という上辺だけの言い訳をするのか?もしアジア大会の運営側の勝手な日程変更であれば、その旨を主張してもいいのではないか?日本サッカー協会には、その経緯の説明責任があるように思う。
中国戦の後半、背番号10のエース高瀬が負傷退場した。怪我の理由をひとつに特定することはできないが、中1日の強行日程が遠因にあると関連付けることもできるだろう。
辻褄の合う説明がなされないと、何よりも中1日でプレーさせられた選手たちが可哀想だ。日本サッカー協会には是非、誠実でオープンな説明を望みたい。