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北朝鮮が偵察衛星の開発と称して地球を記念撮影

JSF軍事/生き物ライター
労働新聞(2022年2月28日)より「偵察衛星開発のための重要な試験進行」

 2月28日、北朝鮮は昨日発射した飛翔体について「偵察衛星開発のための工程計画に従って重要試験を進めた」と称し、地球を撮影した2枚の写真を公開しました。

重要試験を通じて国家宇宙開発局と国防科学院は、偵察衛星に装着する撮影機で地上特定地域に対する垂直および傾斜撮影を行い、高分解能撮影システムとデータ伝送システム、姿勢操縦装置の特性および動作精度を確認した。

出典:国家宇宙開発局と国防科学院 偵察衛星開発のための重要な試験進行 | 労働新聞(2022年2月28日)

 しかし日本と韓国が観測した飛行データからは準中距離弾道ミサイル程度の数値しか観測されておらず、衛星打ち上げロケットとしては遅過ぎるので衛星軌道には全く乗っていません。ただの弾道ミサイルのロフテッド軌道(山なりの弾道飛行)での発射です。

 これは何時ものように弾道ミサイルにオンボードカメラを搭載して地球を記念撮影しただけのように思われます。技術的に何か衛星の開発が進行している様子には全く見えません。

 というのも、北朝鮮は過去に何度も衛星打ち上げロケットや弾道ミサイル試験でオンボードカメラを搭載して地球を撮影していて、今回で少なくとも5回目になる筈です。つい最近も火星12中距離弾道ミサイルで地球を撮影しています。(2022年1月30日の火星12発射)

 筆者は昨日の発射を受けてこう予想していました。

なお北極星2は2017年5月21日の試験発射でオンボードカメラを積み込んで地球を撮影していますので、今回も撮影しているかもしれません。

出典:北朝鮮が準中距離弾道ミサイルを発射。北極星2?(2022年2月27日)

 地球撮影は予想通り当たっていましたが、弾道ミサイルを隠すとは思いませんでした。2月28日の公式発表には打ち上げロケットの写真が紹介されていません。「偵察衛星」と称するものも写真は掲載されていませんでした。 

 撮影された地球の写真は記念撮影のレベルです。偵察衛星と称するなら地上の細かい物体を識別できなければなりませんが、そのような能力は一切見受けられません。

 これでは本当に単なる地球の記念撮影です。あるいは「データ伝送システム」「姿勢操縦装置」の項目の試験だったのかもしれませんが、とても「高分解能撮影システム」とは思えません。

 それでも準中距離弾道ミサイルを1発使ってしまうということは、数億円から十数億円もの高額な費用が掛かった試験です。何らかの目的があったのは確かなのでしょう。

 偵察衛星の性能は軍事機密なので本当の性能は隠して、欺瞞用の記念撮影写真を発表した可能性も有り得ます。

2022年3月10日追記「金正恩が国家宇宙開発局を現地指導、「偵察衛星」による撮影画像を新たに公開。打ち上げが間近か」 ※なんと驚くべきことに本当に地球撮影は欺瞞用でした。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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