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平本蓮に完敗した朝倉未来は、本当に引退するのか? 『超RIZIN.3』の深層─。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
『超RIZIN.3』で平本蓮に敗れ現役引退を表明した朝倉未来(写真:藤村ノゾミ)

公言通り引退表明

「一旦、格闘技を引退させて頂きます。これからは、日本の格闘技界に貢献できることがあればやります。JTT(ジャパントップチーム)で育ってきている若い子たち、UFCで闘う弟(朝倉海)をサポートしていこうと思います。

選手の練習相手を務めなきゃいけないので、トレーニングは続けたい。それで、いつかまた闘いたくなるのかもしれませんが。本当に長い間、ありがとうございました」

7月28日、さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』で平本蓮(剛毅會)にTKO負けした翌日の午後、朝倉未来(JTT)は自身のYouTubeチャンネルでそう話した。

「平本に負けたら引退する」

戦前に公言していた通り、彼は闘いの舞台から離れる。

まさかの完敗、ショックだったろう。それでも時間が経つ中で心の整理がついたのだと思う。だから動画内で「いや~、派手に散りましたね」と口にし苦笑いもしていた。

一先ず「お疲れさま」と労いたい。

4万8117人(主催者発表)の大観衆が詰めかけたさいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』のメインで平本蓮(右)の強打を浴びる朝倉未来。僅か138秒でTKO負けを喫した(写真:RIZIN FF)
4万8117人(主催者発表)の大観衆が詰めかけたさいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』のメインで平本蓮(右)の強打を浴びる朝倉未来。僅か138秒でTKO負けを喫した(写真:RIZIN FF)

「路上の伝説」は必ず復活する

さて、朝倉は本当にこのまま引退してしまうのだろうか?

もともと彼は「30歳で引退する」と公言していた。

すでに32歳になっているが、3年ほど前、28歳だった彼に私は尋ねたことがある。

なぜ30歳で引退すると決めているのか、と。

朝倉は、こう答えた。

「30歳で引退しないとずっと続けちゃうので区切りをつけたい。格闘技が好きだから。ほかにもいっぱいやりたいことがあるし。やめたら二度とリングには上がらない。解説の仕事もしない。近くにいると、また闘いたくなっちゃいますから」

だが、30歳で引退することはなかった。

この年の6月、東京ドーム『RIZIN.28』でクレベル・コイケ(ブラジル/ボンサイ柔術)に敗れリベンジを誓ったこと、そして闘いが好きだったことがリングを離れなかった理由だろう。

私は朝倉が、このまま二度と闘いの舞台に上がらぬとは思えない。それは、彼が「格闘技が大好き」だから。

「格闘技にかかわっていると闘いたくなるから、引退したら解説の仕事もしない」と話していた彼が、今後も後進をサポートするためにも練習は続けると言う。

ならば「もう一度闘いたい」と思う日が訪れるのは必然だろう。

ただ、いまは休む時だと思う。

この6年間、朝倉は「RIZIN」を、また格闘技界を盛り上げるべくファイティングロードを突っ走ってきた。そして翼が折れた。

1年でも、2年でも、3年でも休めばいい。折れた翼が回復するまで。それでも、まだ30代だ。時間の余裕はたっぷりとある。その間に打たれ弱くなってしまったカラダも癒され、メンタルにも変化が生じよう。

「路上の伝説」は必ず復活する。その刻を静かに気長に待つ─。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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