多様な性にYESの日:「反同性愛法」が成立したウガンダの過酷な現実に、日本の若者たちが立ち上がった。
5月17日は何の日かご存知ですか?
正解は「多様な性にYESの日(アイダホ)」です。実は今年から、日本記念日協会によって公式な記念日として登録されました。
これは1990年5月17日に同性愛が世界保健機関(WHO)の精神疾患リストから削除されたことに由来し、国際的には「IDAHOT(アイダホ):同性愛嫌悪やトランス嫌悪に反対する国際デー)」という名称で知られています。IDAHOT委員会によると、今年は120カ国近くでアクションが予定されており、カメルーンや中国、カナダ、キューバ、ブラジル、アルジェリア、シンガポール、スロヴァキアなど、「多様な性のあり方」にまつわる社会情勢がそれぞれ大きく異なる国々でも、アクションが予定されているのが特徴です。
「多様な性」のあり方は、いわゆるLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)に該当する人や、既存のカテゴリーに縛られない/当てはまらない方、さらにはいわゆる「多数派」だと思って生きてきた人たちも含めての「あり方」を指します。恋愛や性、自分らしくあることの意味について、あなたも「多様な性」を生きている一人として考えてみませんか?
LGBTとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとった言葉ですが、同性や両性に恋愛・性愛の感情を抱いたり、心身の性別に違和感を感じる人々など、当事者が前向きに表現した性的マイノリティの総称です(※)。
※もっと詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
日本でも2006年頃から運動が始まり、全国各地でのアクションが定着しています。現在では「やっぱ愛ダホ!idaho-net」が全国各地での街頭アクションやメッセージ展を企画。今年は青森、岩手、仙台、福島、東京、埼玉、横須賀、山梨、浜松、名古屋、大阪、神戸、徳島、愛媛、福岡の15箇所で関連アクションが予定されています。あなたのお住まいの地域はいかがでしょうか?もしご興味のある方は、是非のぞいてみてください。
「多様な性」のあり方に厳しい国
さて、この「多様な性にYESの日(アイダホ)」ですが、実はロシアやウガンダ、イランなど「多様な性」のあり方に対して非常に厳しい国でもアクションが予定されています。日本ではカナダやイギリスなど、同性婚が可能になった国のニュースが多く入ってくる印象がありますが、世界では同性愛に対して過酷な刑を課す動きもいぜんとしてあります。
2014年2月、アフリカ中部のウガンダでは、国際的非難が集中する中で「反同性愛法」が成立しました。「反同性愛法」は同性間の性交渉について禁固14年を課し、さらには同性愛者を「発見」したら必ず警察へ通報しなくてはいけないとの内容も含んでいます。同性愛者だとわかった相手がたとえ自分の子どもや親戚であっても、通報を躊躇すると自分自身が禁固7年の処罰の対象となります。街で売られるダブロイド紙には、ゲイやレズビアンの「疑い」のある一般市民の写真や、名前、自宅、よくいる場所が掲載され、「彼らを処刑せよ」との見出しが躍っています。
このようなウガンダの過酷な現実に対して、日本でも若者たちが中心となって「反同性愛法」をめぐるウガンダの攻防を描いたドキュメンタリー映画『Call Me Kuchu』の上映会を全国各地で開催しています。
特に5月は「多様な性にYESの日(アイダホ)」に関連して上映会が多く開催されます。
5月12日(月) 神戸(関西学院大学)
5月17日(土) 盛岡(もりおか女性センター)、東京(JICA地球ひろば)
5月31日(土) 福岡(西南学院大学)
7月13日(日) 青森(アウガ5階カダール/JR青森駅前)
上映時間、チケット情報など、もっと詳しくは下記サイトをご覧ください。
また、ウガンダの状況について詳しく知りたい方には以下の2点がお薦めです。
●「魂のジェノサイド」――ウガンダ「反同性愛法案」とその起源
稲場雅紀 / NPO法人アフリカ日本協議会
2014年2月26日 WEBマガジン「シノドス」
2014年4月2日 THE PAGE
世界はつながっている
LGBTIの人権問題について国連での協議資格を持つNGO・ILGAが昨年5月に公開した「世界における同性愛者の権利マップ」によれば、同性愛について法的に迫害している国は76か国におよび、死刑を課す国も7か国あります。迫害を行っている国は、イギリスが大英帝国時代に同性間性交渉を禁止する法律を持ちこんだ国(旧植民地国)やイスラム教国であることが多いようです。一方、同性カップルの承認(婚姻や婚姻に類似する制度など)をしている国は31か国。日本は、迫害や保護に関する特定の法律が存在しない国とされています。
ILGA共同代表の山下梓さんは、今春ケニアで開かれたILGAアフリカ地域会議に参加しました。反対派から襲撃されないようにと厳戒態勢で開催された4日間の大会には、アクティビストや支援者など約120名の参加があり、大変な熱気だったと語ります。
情勢の厳しくなる国では、難民として国外へ逃れざるをえない人々がいること。
亡命先の国々では、言語や文化の違い、人種差別や雇用不安などの問題が待っていること。
命の危険はあっても、自分の故郷で生きようと思っている人たち。
「国際会議に参加すると、世界でおきている話は『ニュースの中の話』ではなくて、自分と似ている人や友人に起きている話になる。どこにいても世界はつながっていて、彼女・彼らのあり方から日本にいる私たちが気付かされることがたくさんあります」
5月17日は世界各国で、ある「似たような願い」を持った人たちがメッセージを発しています。ぜひみなさんも、この記念日の存在を周りの大切な人に伝えてみてください。
<取材協力>
山下梓さん(ILGA共同代表)
遠藤まめたさん(やっぱ愛ダホ!idaho-net.代表)
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映画『Call me Kuchu』
監督:Katherine Fairfax Wright, Malika Zouhali-Worrall
2012|米国・ウガンダ|87 min
音声:英語|字幕:日本語
2014年2月、アフリカ中部のウガンダで、同性愛者を終身刑にできる「反同性愛法」が成立しました。国際的な非難が巻き起こる中で、ウガンダに生きる性的少数者たちはより深刻な状況とおかれるようになりました。本映画はこの法案をめぐり2009年に闘っていたウガンダの性的少数者やその仲間たちを描いた渾身のドキュメンタリーです。
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「やっぱ愛ダホ!idaho-net」では毎年5月17日を「多様な性にYESの日」として街頭アクションやメッセージ展を行っています。全国各地どこにいても、誰もが書くことができる「一言メッセージ」の朗読や展示を通して、全国各地で「多様な性について何か発信したい」という熱意をつないでいます。