これぞ兵庫野球の神髄! 報徳ー神港学園 名門同士がいきなり激突
夏の甲子園の前哨戦となる各地の春季大会が始まった。兵庫では、報徳学園と神港学園がいきなり1回戦で当たり、明石トーカロ球場ではハイレベルな守り合いが繰り広げられた。バントあり、重盗あり、堅守ありの「兵庫の高校野球」の神髄を見た思いがする。
「兵庫野球」体現できる両校
報徳は春夏の甲子園で優勝経験がある全国屈指の名門。一方、神港学園は優勝こそないが、春夏計8回の甲子園出場を誇り、昨春の県大会では報徳を破るなどして優勝している。1回戦で当たるには惜しいカードだが、抽選だから仕方がない。堅守からリズムをつくり、バントと機動力で好機をモノにする。「これぞ兵庫野球」を体現できる両校とあって、期待通りの好試合となった。
報徳が重盗で先制し主導権
両校無得点の5回裏、報徳は7番・渡邊貫太(3年)が安打で出ると、続く藤田竜太朗(3年)が送りバント。
その後2死1、3塁となって2番打者の打席で、一走の丸岡優太(3年=主将)がスタート。捕手が送球動作に入るタイミングで渡邊が迷いなく本塁を陥れた(タイトル写真)。均衡を破る鮮やかな重盗が決まって報徳が先手を取ると、6回にも4番・正重恒太(3年)の適時打で主導権を握る。
神港学園反撃も報徳堅守に阻まれる
ブロック予選で神戸国際大付にコールド勝ちしている神港学園は、打線好調で、報徳の最速143キロ左腕・榊原七斗(3年)をよく攻めた。しかし、無死からの走者もバントに備えた報徳の併殺網にかかるなど、堅守に阻まれて決定打を奪えない。
ようやく7回、好投を続けるエースの8番・清本竣太(2年)が適時打を放つが、三塁を狙った走者が憤死して、1点に終わった。結果的にはこれが大きく響き、8回に併殺崩れで追加点を奪った報徳が3-1で勝った。安打は神港学園が10本で、報徳を1本上回った。制球のいい投手を、両校無失策で支える守り合いだったが、要所の守備力で報徳がわずかにまさった。
神港学園監督は3年生へ熱い思い
内容互角ながら惜敗した神港学園の北原直也監督(42)は「10安打で1点。この2点差を夏までにどうしていくか。簡単な2点にしたくない」と、攻守両面でのレベルアップを誓った。
特に3点目を失った場面は、1死1、3塁で、相手4番を遊ゴロ併殺に仕留めたかと思われたが、遊撃手のグラブの網にボールが引っかかって併殺をとり損ねた。「前チームから出ていて信頼している選手だが、捕り方が良くなかった」と悔やんだ。しかし、コロナで冬場の練習が満足にできなかったことを考えれば、全体としては十分な守備力。「夏までの2か月、3年生全員に高校野球をやり切らせたい」と、入学時からコロナに翻弄された3年生を思いやった。北原監督は、熱血漢として知られた父の光広・前監督(69=現流通科学大監督)の思いもしっかりと受け継いでいる。
「兵庫の高校野球」とは?
北原監督は兵庫の野球について、前述のとおり、1点の重みを話してくれた。「いい投手と当たると、一つでも先の塁に進めれば得点パターンも増える。打てればいいが、やはり確率のスポーツなので」。この日は、バント攻撃と、それを阻止する守備。重盗など、打てないときの得点パターン。相手に流れを渡さない連係プレーなど、随所に兵庫の高校野球を堪能させてもらった。レベルの高い近畿にあって、兵庫の野球は、最も緻密で基本に忠実。近年は、豪快に打って大量点を奪う強打のチームに苦戦する傾向にあるが、好投手を堅守で支え、接戦をモノにするのは高校野球の醍醐味でもある。