江戸時代から愛される姫路の代表銘菓「玉椿」もっちり求肥と白小豆餡入り黄身餡を包んだ可憐なお菓子
今でこそ男女共に、自由に嗜むことができるようになった茶道ですが、はじまりは武士の流儀のひとつだったというのはご存知でしょうか?
大河ドラマや映画にもたびたび登場する織田信長、彼を語る上で切っても切れないのが、茶の湯の始祖とも言われる千利休。安土桃山時代から時は流れ、幕府が江戸に移ってからも茶の湯は武士の、ひいては商談や談合の場として用いられることがほとんどだったとか。(外交に茶器を贈ることがあったくらいですから。)
さて。兵庫県姫路市にて、創業320年余の時を紡ぐ「伊勢屋本店」さん。姫路藩の菓子御用司として厚い信頼を寄せられていた和菓子屋さんですが、三代目が取り仕切る際に藩を上げての一大イベント・徳川家のご息女との婚礼に際して素晴らしいお菓子を作るよう命じられ、江戸の日本橋にお店を構えていた名店中の名店、金沢丹後という当時羊羹やお干菓子にも大変高度かつ最先端の技法を用いた和菓子屋さんへ修行に。
そこで培われた経験と感性から誕生し、姫路藩家老が命名したという高貴な銘菓「玉椿」をご紹介。
戦後、昭和天皇にも献上されたという由緒正しき御菓子は、可憐な薄紅色が愛らしい求肥餅。丁寧にひとつずつ包装されています。非常に細かい粒子の粉糖が舌先にあたると、心地よいひんやり感が出迎えてくれます。求肥といえどもさほどきつい甘さは皆無で、もちっとした歯応えも備わっているような。
しっかり包まれた黄身餡のまろやかで上品なコクは、一般的な黄身餡よりもどこかふくよかな印象。なるほど!全て手亡豆の白餡ではなく、白小豆こし餡もかけあわせているからなのですね。
あんこそのものの存在感が際立つ手亡豆のしろ餡の一部を白小豆のこし餡にすることにより、小豆の風味よりも旨味やふっくらとした豆らしい柔らかさが卵の個性をぐっと底上げしているよう。思わず目を閉じてしまいました。
また、先ほど述べたように適度な歯ごたえを残した求肥ですので、噛みしめるたびに素晴らしい黄身餡の甘露で口の中が満たされていきます。
当時とは材料の質も異なるかと思いますが、張りつめた空気の大切なシーンに玉椿が供されたら、その味わいに和やかな気持ちになりそうですね。
格式高いお茶席は勿論、肩の力を抜きたい時にも相応しい銘菓として末永く愛されてほしいと思います。
<伊勢屋本店・西二階町本店>
公式サイト(外部リンク)
姫路市西二階町84番地
079-288-5155
9時~18時