韓国の33歳女性議員・張惠英氏、米TIME誌「TIME 100 NEXT 2021」に選出
米国の週刊誌『TIME』が17日(現地時間)、ホームページを通じ発表した「TIME 100 NEXT 2021」に、正義党の女性議員・張惠英(チャン・ヘヨン、33)氏が選ばれた。韓国人では唯一の選出となった。
●大学中退、障碍者人権運動、映画監督、国会議員
「TIME100 NEXT」は2019年から発表されているもので、毎年世界で最も影響力のある100人を選ぶ同誌の看板企画「TIME100」の“次世代バージョン”と位置づけられる。いわば、未来を担う人物を選ぶものだ。
張氏は「ADVOCATES」分野の21人に含まれた。主唱者/提唱者という名が示す通り、いずれも社会の変革をけん引する人物が選ばれている。
同誌は張氏を、発達障害を持つ妹を施設から連れだし共同生活をする様子を描いたドキュメンタリー映画の監督として、また障碍者の権利を擁護する運動家として紹介すると共に、韓国で最も若い国会議員の一人として紹介している。
1987年生まれの張議員は、大学の有り様を批判し2011年に名門・延世大学を中退する。その後、妹・ヘジョン氏が預けられていた施設で入所者に対する虐待が行われていることを知り、障碍者の人権運動を始める。
その後、施設を出たヘジョン氏と共同生活を始め、その日常をYouTubeで公開し注目を集める。そして2018年にはヘジョン氏との生活をドキュメンタリー映画『大人になったら』にまとめ、観客から高評価を得た。
そして歌手やクリエイター、障碍者の人権運動をする傍ら、2019年10月に韓国の左派政党「正義党」に入党し、比例代表2番として20年4月の総選挙で国会議員となっている。
TIME誌はまた、張氏の議員活動を紹介しながらその最大の目標として「差別禁止法」の制定があるとした。外見、年齢、地域、学歴、家族構成、ジェンダーアイデンティティなどすべての属性による差別を禁止しようとするこの法案は、韓国の保守派教会などの強い反対にあい、成立までの道のりは険しい状態にある。
同誌はさらに、1月に張氏が所属する正義党の金鐘哲(キム・ジョンチョル、50)代表からセクシャルハラスメントの被害に遭ったことを告発した点にも触れている。金代表は党内で調査後に解任され、党を除名となった。
この過程で張議員は「性暴力の被害者」という事実に正面から向き合い、「被害者らしさはない」としながら、「性暴力を犯す男性は、一体どうすれば女性が自分と同等に尊重されて当然の存在だという点を学習できるのだろうか。私たちはこの質問を直視しなければなりません。そして必ず答えを見つけなければなりません」という主旨の文章を発表し、韓国社会に共感を呼んだ。
【参考記事】
左派政党・正義党代表、同党女性議員へのセクシャルハラスメントで解任
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20210125-00219342/
●「側にはいつもすべての市民の名前が」張惠英氏のメッセージ
今回の選出を受け、張氏は自身のフェイスブックに以下のように書き込んだ。全文を紹介する。
こんにちは。正義党国会議員の張惠英です。
今日、米国の時事週刊誌TIMEが発表した「TIME 100 NEXT 2021」の一人として私が選ばれました。
私の名前の側にはいつもあなたの名前があります。すべての人間の尊厳と平等、多様性と気候正義が息づく未来を夢見るすべての市民の名前があります。
未来を手に入れるために、私たちは現在と闘います。
相互尊重と協力を押し崩す私たちの内外の偏見と差別、暴力に立ち向かい、人間の尊厳を根っこから揺らす経済的な不平等に立ち向かい、人類をはじめとする地球上のすべての生命を脅かす気候危機に立ち向かい、私たちは毎日毎日みずからの位置で力一杯闘います。
多様性は不便さや脅威でなく、私たちの力です。だからこそ私たちはすべてのための差別禁止法の制定のために闘います。
地域社会で思い切り生きていく自由は、非障碍者だけの特権ではなくすべての市民の権利です。だからこそ私たちはすべての障碍の脱施設のために闘います。
すべての市民は互いを尊重し、共同体の未来を共に悩み決定していく同等の権利があります。だからこそ私たちはより良い民主主義のために闘います。
一人の市民から一人の政治家として私がこうしたすべての闘いを始められるよう、私を受け入れてくれた正義党と党員の皆さん、そして尊敬する市民の皆さんに果てしない愛と連帯のメッセージを贈ります。ありがとうございます。
2021.2.17
張惠英
なお今回、TIME誌が選出した「TIME 100 NEXT 2021」には、バイデン米大統領の就任式で詩を朗読した米国のアマンダ・ゴーマン氏や、英国の歌手デュア・リパ氏などが含まれている。また、日本からは漫画『鬼滅の刃』の作者・吾峠呼世晴氏も選ばれた。
100人のプロフィールは下記、TIME誌へのリンクから見られる。