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民間学童保育は「小1の壁」を救う?・選ぶ際に気を付けたいポイント

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
犯罪、SNSトラブル…子どもの世界には心配がある。学童保育のような関わりも必要だ(写真:アフロ)

来年4月に小学校に入学する家庭は、放課後の過ごし方を考えていると思います。保育園と違って学校は早く終わってしまい、公立の学童保育は、地域によっては満員…。子どもを狙った事件やSNSがらみのトラブルが報道される中、心配は尽きません。送迎や習い事のオプションが充実した「民間学童保育」を選ぶ際に、気を付けたいポイントを紹介します。

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〇入ってすぐ、運営体制に疑問

筆者は、民間学童を選ぶのに失敗した体験がある。

ある民間学童が、夜10時までやっていて自宅からも学校からも近い。ワンオペ育児の経験がある筆者は、わらにもすがる思いで入会した。1年時は公立学童に入れたので普段はそちらに行っていたが、仕事が夜遅くなる日もある。その民間学童では、簡単な勉強のプリントが用意され、娘自身も「ずっと遊んでいるだけでは、物足りない」と楽しみにしていた。

利用を始めたばかりで、トラブルが起きた。娘に聞くと、来るはずの迎えが来なかったという。責任者に電話したら、意外にも逆ギレされた。曰く、規約に書いてあるし説明会で何度も話したとのこと。後日、夫から冷静にメールもしたが、筆者がクレーマー扱いされた。

迎えが来なかったことが問題なのではなく、トラブル時の対応や、そこから見える運営体制に不信感を持った。他にもスタッフが足りていないのでは?と思う件があり、よく考えると、民間学童は無認可・無資格。個人経営も少なくない。信頼する家庭が数年前に利用していたので、比較・検討もせず入ってしまって反省した。

〇セーフティーネットとして必要

ビジネスチャンスとして民間学童が増え、最初は頑張るが拡大するとスタッフが足りなくなり、運営にほころびが出る。こんなパターンが想像できた。ギリギリの個人運営では、スタッフが足りなくなったら、いきなり閉鎖になりかねないとも思った。1か月たたないうちに、退会の手続きをした。

それから4月の中途半端な時期に、友達にリサーチしながら民間学童の見学を始めた。英語教育に力を入れている新しい民間学童が、いくつもあった。来年4月に小学生になる子の親が説明会に来ていて、すでに予約も入っていた。「保護者のわがままを聞きます」という充実のサービスだけれど、事業の拡大を考えたビジネスでもある。そういう目で見ると、どこも「帯に短し、たすきに長し」だった。

運営の疑問点は聞き、娘も連れて行って、悩んだ末にある民間学童に週1回だけ通うことにした。困った時に駆けつけてくれる身内がいない我が家は、公立学童のほかにもセーフティーネットが必要だ。リスク分散の対策としては、夜の延長や土曜の預かりも可能。駅も近くて、送迎は可能だが丸投げにせず、親が仕事帰りに迎えに行けるのも決め手になった。細かい問題はあるけれど、友達もできて娘にとって「もう一つの居場所」になっているようだ。

〇子ども自身の気持ちを大事に

こうして筆者が民間学童選びを経験し、周りの親たちに聞いた結果、長所も短所も見えた。「学童」という名前はついているが、低学年から「塾&習い事」の部分を求める親も少なくなく、勉強やレッスンを詰め込まれたら、子どもはのびのびできないかもしれない。

「安心できる場に預けたい。でも遊びばかりでは……」という親の思いに答え、経営側は「ニーズに合わせた預かりと、習い事プログラム」を提供してビジネスにするのが民間学童なのだ。民間学童を選ぶ際、充実のサービスだけでなく運営の体制や理念を確認すること、何よりも「子ども自身の希望に合った内容かどうか」を忘れないことが大事ではないだろうか。

(「講談社現代ビジネス」に掲載した記事より)

     ◇

このルポの後、少し時間がたち、筆者の周囲でも変化があった。まず、民間学童保育をやめる子が出てきた。理由は「英語が上達しない」「学校のクラブ活動を始めた」「オプションの活動に関心がなくなった」などだ。

〇公立学童保育に落ちて

逆に「2年生になって、公立の学童保育に入れなかったため、民間学童保育に行き始めた」という家庭もある。我が家も、2年生になる時、公立学童保育を継続したかったが、「不承諾通知」が来た。リスク分散のため、民間学童保育にも週1日だけ通っておいて本当に良かった、と思った。預ける親の都合ではなく、「やめなくていい、なじみの場所がある」ということが、子どもの心身にとって大事だからだ。

2年生以降の、公立学童保育に代わる場としては、小学校内にある「居場所」を選んだ。「居場所」も子どもが多く詰め込みだが、「孤育て」になりがちな我が家にとって、大切なセーフティーネットだ。娘も先生や友達と遊ぶのが楽しいようで、自然体で過ごしている。

一方で大人数の「居場所」を好まず、放課後を友達と過ごす子もいる。人間関係のトラブルや、ゲーム・スマホにハマるなど、新たな問題も見聞きする。こうした状況も、考えておきたいポイントの一つだ。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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