海外観光客の受け入れ再開が決定 中国人はまた大挙してやって来るのか、来ないのか?
政府は6月から海外の観光客の受け入れを正式に決定した。1日当たりの入国者数の上限を現在の1万人から2万人にまで倍増させる予定で、行動管理がしやすい団体客から受け入れるとしている。具体的には6月10日からスタートする。
インバウンドの本格的な再開に向け、全国の観光業界や小売業界から期待の声が高まっているが、外国人観光客の中で最も人数が多く、コロナ禍前の2019年には約959万人が来日した中国人観光客も再び日本にやって来るのか、来ないのか。中国での受け止め方はどうなのだろうか。
中国でも大きな話題になったが
5月26日、日本の岸田首相が発表した外国人観光客受け入れ再開のニュースは、中国でも大きな話題になった。各メディアでは日本政府の方針を箇条書きなどでわかりやすく紹介。そこにはおおまかに以下の3つのポイントが書かれていた。
・日本政府はコロナの感染リスクに応じて国・地域を赤、黄、青色の3つに区分しており、中国は最もリスクが低い青色。ワクチン接種の有無にかかわらず、入国時のPCR検査、入国後の自宅等待機は不要。公共交通機関を使用できる。
・出国前72時間以内のPCR検査で陰性証明を取得すること。
・6月10日以降、団体ツアー(団体旅行)で来日が可能。ビザは必要。
これらをクリアすれば、観光目的での訪日旅行が実現できるとあって、中国メディアの記事につけられたコメント欄などを見ると「うれしい。また日本に遊びに行ける!」「ずっと日本に旅行に行きたかった。これは大きな前進だ」といった歓迎の声が多い。
だが、一方で「団体ツアーしかダメなのか……」「団体ではなく、早く個人旅行ができるようにしてほしい」といった声もあり、現在、日本政府が打ち出している「観光目的の入国は団体客のみ」という点がひっかかっているようだ。
現在のところ、観光庁が実施している実証ツアーは米国、オーストラリア、タイ、シンガポールの4カ国のみで、いずれも日本の旅行会社の添乗員が同行している。
政府は検証結果をふまえて各地のガイドラインなどを定め、本格的な観光客の受け入れに向けて準備を進める、としている。
団体旅行にはもう魅力を感じない
中国ではまだ上海を含む多くの都市でコロナのロックダウンが続いている状態であるため、そもそも海外旅行が復活できるのかについて明確なことはまだわからない。
だが、コロナ禍の前、つまり2019年末の時点では、訪日中国人観光客の約7割が個人旅行客で、団体旅行客は3割程度しかおらず、団体は減少する一方だった。
7年前の「爆買い」ブームの頃はその逆で、約7割が団体旅行客、約3割が個人旅行客だったが、彼らはスケジュールがタイトで自由時間が少ない団体旅行を嫌い、すぐに個人旅行に切り替えたからだ。彼らは団体ツアーではなく、家族や友人などと数人で個人旅行を楽しみ、旅行の幅をどんどん広げていった。
東京、大阪などの主要都市のみしか行けず、買い物を中心とした団体旅行での「モノ消費」ではなく、地方のマイナーな都市や温泉地などに足を運び、個人の好みに合った個人旅行で「コト消費」を楽しむという体験型の旅行を選んだのだ。
そのため、「団体旅行で行くような定番の観光地はもう飽きたし、つまらない。他の人に合わせる団体ツアーには参加したくない。だから、個人で自分が好きな場所に自由に行ける日が来るまで、日本旅行を我慢する」といった声も少なくない。
訪日外国人旅行客数の中で、中国に次いで人数が多い韓国、台湾、香港などの東アジアの人々の旅行スタイルも成熟化しており、団体旅行を敬遠する中国の人々と同様の気持ちを持っている。
今回、政府が発表した外国人観光客の受け入れ再開は、日本各地の観光地でも話題となっており「インバウンド復活への第一歩」であることは確かだ。
だが、訪日外国人全体の7割を占め、もはや団体ツアーに魅力を感じない中国、韓国、台湾、香港など東アジアの人々にとって、本格的な訪日旅行の実現は、まだ少し先の話になりそうだ。