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WBA/WBC/IBFウエルター級王者の公開練習

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 現地時間20日の13時開始予定で、WBA/WBC/IBF統一ウエルター級王者のエロール・スペンス・ジュニアがジムワークを公開した。冒頭で10分ほど質問に答えた後、練習を開始。

 シャドウ、ミット打ち、サンドバッグ打ちの3種メニューだったが、自らの動きを確かめながら、一つ一つ丁寧に動いた。

 ミット打ちではトレーナーのデリック・ジェームズが、仮想テレンス・クロフォードとなり、何度もスイッチしながら攻撃した。トレーナーの手を躱しながら、スペンスも間髪を入れずにパンチを出す様が印象的だった。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 スペンスの言葉をご紹介しよう。

 「ウエルター級統一王者を目指してきた。自分のキャリアを通して、ずっと追い求めてきたんだ。テレンス・クロフォードのような偉大な相手と頂上決戦で拳を交えられるのは無上の喜びだ。

 自分は長い間、ベストの相手と戦ってきた。ボクシング界のレジェンドたちを見ていると、最強のライバルと戦い、歴史に残る試合をしている。アリとフレージャー、レナードとハーンズ、デュランとレナード等々、俺もそうさ。テレンスは世界最高のファイターの一人だし、俺もだ。

 いつも通りトレーニングしてきたが、相手が相手なだけにメニューを強化した。テレンスは本当にファイト出来る男だし、素晴らしいファイトになると信じている。

 俺の負けを予想する声があることは知っている。でも気にならない。誰が何を言ってもいい。ただ、彼らが間違っていることを証明するよ。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 今回は注目度を実感している。どこに行ってもこの試合について聞かれる。誰もが望んでいた一戦だ。実現させなければいけないと思ったね。ウエルター級、そしてボクシング界で誰が一番強いのかを示す必要がある。この統一戦の勝者こそ、ボクシング界最高のファイターだ。

 俺が今までに獲得したベルトは、全て誰かから奪ったものだ。チャンピオンを次々と倒してきた。同階級の強豪と戦うのは大変なんだ。チャンピオンと、ベルトを持たない選手には大きな差がある。タイトルを保持する選手の方が、より多くのものを背負って戦っているのさ。

 体格がどの程度試合に影響するかは、リングに上がってみないと分からない。テレンスは強いと言われているよね。来週になれば答えが出るよ。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 素晴らしい試合になるのは間違いないから、是非俺たちのファイトを目にしてほしい。消耗戦になるだろうな。

 テレンス・クロフォードと似たような選手って、見当たらないよ。彼のスタイルは他の誰とも違う。シュガー・レイ・レナードはトミー・ハーンズと戦うまで、トミー・ハーンズのような選手と戦ったことが無かった筈。その逆もしかりだ。歴史的な試合って、そういうものなんだよ」

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 スペンスのトレーナーは、その手腕を高く評価されているデリック・ジェームズだ。51歳のジェームズは、スペンスの他にも、ジャーメル・チャーロ、フランク・マーティン、アンソニー・ジョシュア、ライアン・ガルシアなどを指導中である。

 2017年に『Ring』マガジンとYahoo Sportsから、2020年にはWBA、WBC、そして『スポーツ・イラストレイテッド』誌から、2022年にはESPN、アメリカ・ボクシングライターズ協会による最優秀トレーナーに選出された彼は言った。

 「エロールがプロになった時、彼は『ウエルター級王座を統一したい』と述べたんです。ここまで来るのに、多くの段階を越えねばなりませんでした。4冠統一チャンピオンは、彼が望んでいたゴールです。

 私たちの目標は、毎試合前進すること。この一戦では、エロールがキャリア内で成功するために使ってきたものを、全て出し切るつもりでいます。それが出来るか否かは、テレンス次第だと考えます。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 エロールの直近の試合後、私たちは多くのトレーニングやスパーリングを重ねました。リングではテレンスの動き、タイミングを計る必要がありますね。2~3ラウンドかかるかもしれませんが、それを理解したら、エロールはやるべきことを実行するのみです。

 向こう側のセコンドに誰がいようと心配はしていません。相手は誰だっていいんです。自分こそが最大のライバルですから。試合までの日々を私らしく過ごし、自分自身と戦い続けますよ。

 完璧なパフォーマンスが勝利に繋がります。エロールが勝つために努力しています」

 スペンスの公開練習の前日には、テレンス・クロフォードも同様に小一時間のトレーニングを見せた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20230721-00358665

撮影:筆者
撮影:筆者

 ついにゴングまで、残すところ1週間。現地時間火曜日には、29日の大一番に出場する両チャンプも、セミファイナル、そしてWBCバンタム級空位王座決定戦に出場する選手たちも、MGMグランドガーデンに到着する。

 日本も井上尚弥vs.ステファン・フルトン・ジュニア戦で盛り上がっており、ボクシングファンには堪らない週となりそうだ。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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