王者リヴァプールを撃破したアトレティコ。シメオネが決戦で仕掛けた罠。
最後まで目が離せない試合だった。チャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦、アトレティコ・マドリーは2試合合計スコア4-2でリヴァプールを下して、ベスト8進出を決めた。
ホームで行われたファーストレグを1-0で制していたアトレティコは、敵地アンフィールドでのセカンドレグで「守備から入る」プランで臨んだ。ファーストレグが行われる前の時点では、リヴァプールのラウンド突破というのが大方の予想だった。
それもそのはず、今季のアトレティコの公式戦得点数(37得点)はリヴァプールのモハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノの3トップの公式戦得点数(44得点)より少なかったのだ。今季、リヴァプールがそれまでに無得点に終わったのは昨年9月17日のチャンピオンズリーグのナポリ戦、12月17日のカラバオカップのアストン・ヴィラ戦の2試合のみだった。
だがアトレティコはGKヤン・オブラク(CL50試合出場/無失点27試合)、ステファン・サビッチ、フェリペ・モンテイロを中心に守り抜いた。そして、アトレティコは過去に9回中6回、1-0のスコアでラウンド突破を決めていた。
ファーストレグでリヴァプールのポゼッション率は73%だった。しかし、シュート数8本、枠内シュート数0本と決定機らしい決定機を作り出せなかった。アトレティコはデュエル勝数(69回)とボール奪取数(64回)でリヴァプールのそれ(デュエル数59回/ボール奪取数60回)を上回った。
■堅固な守備と英雄の誕生
ディエゴ・シメオネ監督はセカンドレグに【4-4-2】で臨んだ。ジョーダン・ヘンダーソン、フィルジル・ファン・ダイク、ジョー・ゴメスと「アンカー+2CB」の3枚でビルドアップするリヴァプールに対して基本的にはリトリートで迎え撃つ。11人全員が帰陣して、ボールをリヴァプールに明け渡す。リヴァプールのポゼッション率は高かったが、肝心のゴール前ではアトレティコ守備陣が隙を見せなかった。
また、サウール・ニゲス、トーマス・パーティ、コケの3選手が中盤でハードワークした。サイドハーフのサウールが「ボランチ化」する。これは昨季からシメオネ監督が試していた縦型ボランチの形だった。後半からはコケとサウールがポジションを入れ替え、2選手がスタミナを温存する格好で終盤に備えていた。後半10分には、ジエゴ・コスタに代えて、マルコス・ジョレンテを投入する。クアトリボーテ(4人のボランチ)という、シメオネ監督の真骨頂だった。加えて、ジョアン・フェリックスとアンヘル・コレアの機動力のある2トップに切り替えた。
リヴァプールはインサイドハーフのアレックス・オックスレイド・チェンバレンのところが、度々フリーになっていた。そこはアトレティコとしては「捨てる」部分として、バイタルエリアとペナルティーエリア内の危険なゾーンを優先的にケアした。クロスボールに対しては、ファーサイドは捨て、シュートを打たれた際にはGKオブラクのセービングに頼った。オブラクのこの試合のセーブ数9本は、2015-16シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグのバイエルン・ミュンヘン戦(セーブ数9本)とタイの数字だった。
そして、延長戦のマルコス・ジョレンテの2ゴールとモラタの得点が生まれた。M・ジョレンテはレアル・マドリー在籍時、公式戦39試合で2得点を記録したのみだった。その選手が、重要な一戦で2得点をマークしてアトレティコスの英雄となった。右MFとして新たな能力を開花させた。最終的に、シメオネ監督はホセ・ヒメネスを投入して5バックを形成。シメオネ監督の仕掛けた罠がはまり、見事に守り切った。
セカンドレグでは、リヴァプールとアトレティコのスタッツはまさに試合内容を表していた。ポゼッション率(71%/29%)、パス本数(712本/215本)、シュート数(35本/10本)、枠内シュート数(11本/6本)、CK数(16本/3本)、ボール奪取数(93回/81回)、デュエル勝数(79回/76回)、すべての面でリヴァプールが優っていた。
フィルミーノのゴールが決まった際、誰もが諦めかけただろう。だが、沈みゆく瞬間に、かつてないほどの力を発揮するのがシメオネ・アトレティコなのである。シメオネ監督はチャンピオンズリーグ70試合で指揮を執り、その戦績を39勝17分け14敗とした。近年2度決勝に進出して、いずれも準優勝に終わっているアトレティコが、現欧州王者を下して再び頂を目指そうとしている。