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シメオネとアトレティコの野心。大一番で共存した4人のボランチと、前線の新たな三銃士。

森田泰史スポーツライター
ユヴェントス戦で先制点を記録したヒメネス(写真:ロイター/アフロ)

本拠地開催のチャンピオンズリーグ決勝に向けて、機運が高まっているようだ。

アトレティコ・マドリーは20日のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦ファーストレグ、ホームでユヴェントスと対戦した。2-0と勝利して、セカンドレグを前に優位な状況に立った。

今季のチャンピオンズリーグ決勝はアトレティコのホームスタジアムであるワンダ・メトロポリターノで開催される。2013-14シーズン、15-16シーズンと、2度決勝に進みながら涙を呑んだアトレティコだが、虎視眈々と悲願のビッグイヤー獲得を狙っている。

■クアトリボーテ

シメオネ監督がユヴェントス戦で起用したのはコケ、サウール・ニゲス、ロドリ・エルナンデス、トーマス・パーティーだった。クアトリボーテ(4人のボランチ)である。

CMF型の4選手を中盤に配置する。シメオネ監督は、これまで頑なにこの戦術を採らなかった。

一方のサイドハーフが中盤の底の位置まで引いてきてビルドアップに参加する。ファルソ・ピボーテ(偽ボランチ)を作り、相手のプレッシングをいなす。縦型ボランチの機能性を高めながら、トマ・レマル、アンヘル・コレア、ビトロといったサイドアタッカーが必ずスタメンに名を連ねてきた。

アトレティコがチャンピオンズリーグの決勝に勝ち進んだシーズンでは、チアゴ・メンデスやガビ・フェルナンデスというポジショナルなMFが中盤の底にいた。ただ、機動力のサウール、ダイレクトパスが持ち味のコケ、回収力のあるロドリ、発電機の役割を果たすトーマスは彼らとは特徴が異なる。

■新たな可能性

シメオネ監督がクアトリボーテ形成を決心したのは、アルバロ・モラタの加入でアタッカー陣が充実したからだろう。モラタ、アントワーヌ・グリーズマン、ジエゴ・コスタ。この3選手の調和が、アトレティコに新たな可能性を示した。

シメオネ監督は4-4-2に固執してきた。だが彼の戦術に多様性を与えるとすれば、それはモラタ、コスタ、グリーズマンの共存に他ならない。リーガ第24節ラージョ・バジェカーノ戦で、初めて同時にピッチに立った3選手は、アトレティコスに化学反応を予感させた。この試合、アトレティコは前線に新たなトライアングルが形成されてから決勝点を挙げ、1-0の勝利を手にしている。

1-0。それはシメオネ監督のアトレティコにとって、代名詞のようなものだ。2011年冬に就任したアルゼンチン人指揮官だが、レアル・マドリーとバルセロナという2強との差は、予算においてもスポーツ的側面においても、深淵だった。その違いを埋めるべく、採られたのが弱者の兵法であり、1-0の哲学だった。

カウンターとセットプレーを武器に、守備力を高め、大崩れしないチームが構築された。シメオネ監督が築いた基盤は選手が入れ替わる中で脈々と受け継がれ、アトレティコスの帰属意識に深く入り込むまでになったのだ。

先のユヴェントス戦で、アトレティコはポゼッション率(36%/64%)、シュート数(13本/14本)、パス成功率(73%/84%)で劣った。だがコーナーキック獲得数(8本/7本)と被ファール数(16回/12回)で優り、得意のセットプレーから2得点を奪っている。

まだアトレティコのラウンド突破が決まったわけではない。ユヴェントスは強敵である。ただ、アトレティコはチャンピオンズリーグ83試合中40試合を無失点で終えている。実に48%の割合でクリーンシートを達成しており、堅固な守備は健在だ。

欧州屈指の盾にモラタ、コスタ、グリーズマンの「三銃士」が加わった。アトレティコは、ただただ高みを目指す。「試合から試合へ」が口癖であるシメオネ監督が、一歩ずつ前進した先に、メトロポリターノでの歓喜が待っているかもしれない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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