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北朝鮮国営メディア、またもやミサイル発射について報じず 超異例の3回連続未公表

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
北朝鮮が12日に発射したとみられる多連装ロケット砲の「超大型放射砲」(KCNA)

北朝鮮国営メディアは5月13日、同国が前日12日に首都平壌の順安(スナン)付近から発射した短距離弾道ミサイル3発について報じなかった。

北朝鮮はミサイル発射翌日の朝に事実を公表することが多い中、これで4、7両日のミサイル発射に続き、3回連続でミサイル発射について公表をせず、極めて異例の事態となっている。

都内で働く北朝鮮国営メディアの関係者は13日、筆者の取材に対し、前日のミサイル発射について北朝鮮メディアが未だ報じていないことを認めたうえで、「理由は分かりません。平壌の朝鮮中央通信に直接電話して聞いてみたらいいのではないですか」と述べた。

北朝鮮がミサイル発射の事実公表を控えるよう方針を変えたのか。あるいは北朝鮮で初めて新型コロナウイルスの感染が公式に確認され、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が全都市にロックダウン(都市封鎖)を命じた影響なのか。さまざまな憶測が飛び交う中、今後の動向が注目される。

●日韓ともに北朝鮮が「超大型放射砲」発射と推定

韓国軍は12日、今回のミサイル3発が対南向けの多連装ロケット砲である「超大型放射砲」(米軍コード名:KN25)であるとの見方を示した。岸信夫防衛相も13日の記者会見で、「超大型放射砲の可能性を含めさらなる分析を進めている」と述べた。超大型放射砲であれば、2020年3月以来約2年ぶりの発射となる。超大型放射砲の口径は世界最大級の600ミリに及ぶと推定されている。

2019年9月10日、口径600ミリの多連装ロケット砲である「超大型放射砲」の発射管のそばに立つ金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記(国務委員長)(KCNA)
2019年9月10日、口径600ミリの多連装ロケット砲である「超大型放射砲」の発射管のそばに立つ金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記(国務委員長)(KCNA)

2020年10月10日の軍事パレードでは、4連装、5連装、6連装の3種類のKN25がそろって登場した。4連装と5連装のKN25は片側4輪の8輪車両の移動式発射台(TEL)に、6連装のKN25は装軌式TELにそれぞれ搭載されている。

2020年10月10日の軍事パレードで登場した4連装の「超大型放射砲」(KCNA)
2020年10月10日の軍事パレードで登場した4連装の「超大型放射砲」(KCNA)

2020年10月10日の軍事パレードで初登場した5連装の「超大型放射砲」(KCNA)
2020年10月10日の軍事パレードで初登場した5連装の「超大型放射砲」(KCNA)

2020年10月10日の軍事パレードで登場した6連装の「超大型放射砲」(KCNA)
2020年10月10日の軍事パレードで登場した6連装の「超大型放射砲」(KCNA)

●日韓当局の発表内容

韓国軍の合同参謀本部は12日、北朝鮮が同日午後6時29分ごろ、平壌の順安から朝鮮半島東の日本海に向けて短距離弾道ミサイル3発を発射したと発表した。北朝鮮のミサイル発射は今年に入って15回目で、10日に韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権が発足してからは初めてだ。高度約90キロ、飛距離は約360キロで最高速度はマッハ5(音速の5倍)だった。

一方、日本の防衛省は12日、北朝鮮が同日午後6時28分ごろ、北朝鮮西岸付近から3発の弾道ミサイルを東方向に向けて発射したと発表した。最高高度約100キロで、距離は通常の弾道軌道だとすれば約350キロ飛翔し、日本の排他的経済水域(EEZ)外である日本海に落下したと推定されると述べた。

北朝鮮が12日に発射した「超大型放射砲」とみられるミサイルの飛翔イメージ図(防衛省発表)
北朝鮮が12日に発射した「超大型放射砲」とみられるミサイルの飛翔イメージ図(防衛省発表)

韓国軍は、北朝鮮が超大型放射砲3発を約20秒間隔で発射したと推定している。

北朝鮮による過去の「超大型放射砲」(米軍コード名:KN25)発射実験(防衛省や韓国軍の情報をもとに筆者が作成)
北朝鮮による過去の「超大型放射砲」(米軍コード名:KN25)発射実験(防衛省や韓国軍の情報をもとに筆者が作成)

北朝鮮はこれまでも20秒の間隔で2発を連射したことは何度もあるが、3発の連射が確認されたのは今回が初めてだ。また、順安から発射されたのも初めてとなる。

●米議会調査局の指摘

米議会調査局(CRS)が先月発表した報告書「北朝鮮の核兵器とミサイル計画」は、KN25が「朝鮮半島において韓国と米国の軍事アセット(資産)に重大な脅威をもたらす」と指摘した。

また、同報告書は「KN25はロケットとミサイルの境界線を曖昧にする。しかし、それは、先進アビオニクス(航空電子機器)と慣性衛星誘導システム、空気力学的構造によって広範囲にわたる精密目標に破壊的な効果をもたらし、伝統的なSRBM(短距離弾道ミサイル)と同じ効果を挙げる」と記した。

さらに、同報告書は、北朝鮮が敵対国のミサイル防衛システムの能力を凌駕(りょうが)するため、KN25を使用して大量のロケットを一斉砲撃する可能性を示した。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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