[甲子園] 休養日ネタ/ヘルメット着用のルーツは、あの強豪にあり……?
第104回全国高校野球選手権は、ベスト4が決定。優勝候補・大阪桐蔭が敗れ、4校のうち下関国際(山口)以外は県勢初の優勝になる。ところで、打者の着用するヘルメットにちょっと違和感がないですか? そう、フェースガードつきのヘルメットだ。金具などで取り付けたこのガード、頬やアゴのケガを予防するもの。まず大リーグで流行し、日本のプロ野球でも2019年ごろから使う選手が急激に増えた。
高校野球では、一般財団法人「製品安全協会」が保証する「SGマーク」が付いた道具に限って使用が認められる。従来、ガードつきは「改造品」とみなされて使えなかったが、顔に死球を受けてケガをする例があとを絶たず、審査基準を見直してSGマークを取得。日本高校野球連盟も、2月に使用を認めた。
初めて使用されたセンバツでは、出場32校中半数近い15校で採用され、先発した打者のうち1人以上が使用していたという。「1人以上」ということは、全員がそろって使うのではなく、たとえば「ボールが見づらい」など使い勝手によって使用しない選手もいるということだ。また、安全性が向上するのは確かながら、ものによっては価格が通常品の2倍というものもある。義務ではないため、導入するかどうかは各校の判断に委ねられるわけだ。なるほど確かに、残ったベスト4のうち導入しているのは近江(滋賀)くらいか。
悲しい事故が原因で……
打者にヘルメットの着用が義務づけられたのは、1960年のセンバツからだ。そもそものきっかけは54年、6年前の秋季東京都大会にある。
頭に死球を受けた八王子工の木村功は、「大丈夫」と出塁はしたものの、意識がもうろうとしていたのかけん制でアウトに。その異常に気づき、すぐにベンチに寝かせたが、容体が急変して翌日帰らぬ人となった。
これを憂慮した東京都高野連は、アメリカのリトルリーグで選手がヘッドギアをつけているのを見て運動具店に発注し、都では55年夏から着用を義務づけた。そして56年のセンバツに出場した日大三がこれを持参し、着用の効用を説明。だが「着脱に時間がかかる」と、このときは使用されなかった。
近年はタイブレーク、投球数制限、休養日の増加……などなど、高校生の健康管理に次々と手を打つ高野連だが、一昔前までは改革に消極的なお役所体質だったといえる。それでも、日大三のヘルメットをきっかけに、全国で徐々に着用が浸透すると、甲子園でもようやく60年から義務化される。63年には走者にも及び、72年春からは片耳ヘルメットが義務化。それが両耳ヘルメットとなったのは94年春からで、09年にはベースコーチも着用が義務づけられた。
導入当時、ミッキーマウスのような両耳ヘルメットや、ベースコーチの着用というのは不慣れな光景だったけど、すぐに見慣れた。フェースガードつきヘルメットも、やがてはふつうの景色になるのかもしれない。