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土用の丑の日のうなぎ、果たして売り切れたか?閉店間際のスーパー・百貨店と、コンビニ、のべ12店廻った

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

2019年の土用の丑の日は週末だった。ニホンウナギは絶滅危惧種に指定されている。はたして、小売店で販売されているうなぎは、ちゃんと売り切れたのだろうか。土用の丑の日の当日である7月27日(土)と、その翌日の7月28日(日)、それぞれ閉店間際に、コンビニ・スーパー・百貨店などの小売店を廻ってみた。

調査したのは、以下、のべ12店舗。

2019年7月27日(土)スーパー2店舗(P、Q)、コンビニ2店舗(セブン、ファミマ)、百貨店

2019年7月28日(日)スーパー3店舗(P、Q、R)、コンビニ3店舗(セブン、ファミマ、ローソン)、百貨店

7月30日消費期限のうなぎが山積み

スーパーQは、数日後の7月30日に消費期限が切れるうなぎが山積みになっていた。

スーパーQで冷蔵ケースの中に山積みされているうなぎ(筆者撮影)
スーパーQで冷蔵ケースの中に山積みされているうなぎ(筆者撮影)

この状況は、7月27日(土)も7月28日(日)も、ほとんど変わらなかった。

セブンイレブンは1280円の中国産うなぎ蒲焼重が2箱

セブンイレブンは、7月27日の夜21時前の時点で、うなぎの蒲焼重(税込1,280円)が2箱残っていた。消費期限は7月28日の夜中の3時なので、販売期限が切れて棚から撤去され廃棄されるまでにあと4時間程度。ただし使っているのは中国産うなぎだった。

筆者が直接訪問した店舗とは別の、セブンイレブンのあるオーナーは、発注して納品したうなぎ重9個のうち、半数以上の5個が売れ残ってしまい、やむなく廃棄したとのことだった・・・。

販売期限が切れるまでにあと4時間のセブンイレブンのうなぎ蒲焼重(筆者撮影)
販売期限が切れるまでにあと4時間のセブンイレブンのうなぎ蒲焼重(筆者撮影)

百貨店は12の常設店と特設コーナーで蒲焼重やうなぎを販売

百貨店は、店内の鮮魚売り場など、12の常設店と、それ以外にも土用の丑の日特設コーナーなどを設置して、うなぎ蒲焼重やうなぎなど、22品目以上を販売していた。

価格帯としては、最も安いもので、うなぎおこわ850円、うな鶏丼880円、うな玉丼962円。

それ以外は、すべて1,000円以上。

最も高いものでは国内産の蒲焼で4,310円。

他も、国内産が3,996円、3,780円など、おおむね高価格帯のものが多かった。

仮にうなぎ関連22品目すべてを購入したとすると、総額55,006円(きも吸を除く、消費税込み)。

平均で2,500円/品目 となった。

百貨店の販売は22品目中20品が国内産のうなぎだった

百貨店で販売していたうなぎ関連22品目のうち、「中国産」と明記してあるのは2品目のみ。

他は、すべて国内産で、鹿児島産、宮崎産、愛知産、静岡産、高知産などとして、県名が明記されていた。

22品のうち、1品だけは都道府県名を明記せず、「国内産」とのみ、表示していた。

百貨店では、7月27日(土)の閉店間際にもたくさん残っていた。が、翌日28日が日曜日なので、28日(日)の閉店間際にも行ってみたところ、棚にはたくさんあったものの、前日の土用の丑の日の在庫よりは少なくなっていた。

百貨店で閉店直前でもたくさん置いてあるうなぎ(筆者撮影)
百貨店で閉店直前でもたくさん置いてあるうなぎ(筆者撮影)

ファミリーマートは予約制なのでゼロ

2018年の土用の丑の日と比較して、よい兆しも見られた。

コンビニのうち、ファミリーマートは、うなぎは予約制で販売することになったので、在庫はゼロだった。

うなぎ以外の通常のおにぎりや弁当の在庫状況は、同じファミリーマートでも、店舗によって違っている。2店舗を比較すると、1店舗は恵方巻きの時も大量に発注して夜中前でもたくさん在庫があった。もう1店舗は、普段から大量発注をしていない。

「うなぎ不使用」とうたったおにぎりを販売するなどして話題になっていたローソンでは、うなぎ蒲焼重の在庫は見られなかった。

スーパーPは8月下旬賞味期限の真空パックのうなぎを販売し、うなぎ蒲焼重は閉店間際に割引販売

消費期限が7月30日と迫ったうなぎを大量に山積みしていたスーパーQと違い、スーパーPは、8月下旬と賞味期限表示された、真空パックのうなぎを販売していた。

スーパーPは8月下旬の賞味期限のうなぎを販売していた(筆者撮影)
スーパーPは8月下旬の賞味期限のうなぎを販売していた(筆者撮影)

当日中に売り切らなければならないうなぎの蒲焼重は、3割引(30%引き)などの割引にして販売していた。

7月28日消費期限のうなぎ蒲焼重を3割引で販売していたスーパーP(筆者撮影)
7月28日消費期限のうなぎ蒲焼重を3割引で販売していたスーパーP(筆者撮影)

サラリーマン風の50〜60代男性が、うなぎ蒲焼重を手に握りしめたまま、数分間、その場で(買おうか買うまいか悩んでいたのか)立ち尽くしていた姿が印象的だった。高額のうなぎ蒲焼重は、3割引になってなお、それだけ買うのを悩む商品なのだろう。

スーパーRも、スーパーQほど期限が迫ったうなぎを大量に置くことはしていなかった。

すき家、うな牛(ぎゅう)の掲示物(筆者撮影)
すき家、うな牛(ぎゅう)の掲示物(筆者撮影)

総括:2018年より改善の兆しは見られた反面、あいかわらずの山積み、大量販売も

土用の丑の日の7月27日(土)と、その翌日の7月28日(日)に、閉店間際のスーパーと百貨店、そしてコンビニを、のべ12店舗、廻ってみた。

総括としては、2018年の土用の丑の日と比較して、ファミリーマートが予約制にしたり、スーパーが真空パックで賞味期限の長いものを販売したりするなど、食品ロスを減らそうとする兆しは見られた。

一方、消費期限の短いうなぎを、明らかに売り切れなそうな大量な数を店頭に置いているスーパーや、貴重な資源としてはみなしていないような百貨店も見られた。

京都市内のスーパー、八百一(やおいち)本館の店長さんを取材した際、

「ダイヤモンドは下に置かない」

という言葉をおっしゃっていた。

大切な食料品である野菜や果物を、店の床など、下の方には決して置かない。競合スーパーに比べて、高めの位置の什器(じゅうき:商品棚のこと)に置いて販売している、とのことだった。

八百一本館は、野菜や果物も、傷んでしまわないきれいなうちに、早めに見切り販売し、すべてを売り切る努力をしていた。

京都・八百一本館の野菜売り場。競合店より棚が高めに置かれている(筆者撮影)
京都・八百一本館の野菜売り場。競合店より棚が高めに置かれている(筆者撮影)

絶滅危惧種に指定されているニホンウナギ。ダイヤモンドぐらい希少なものだと認識していれば、たたき売りして捨てるようなことはしないだろう。

うなぎへの感謝を込めて、毎年、土用の丑の日は必ず休業し、うなぎの供養のためにお参りするという、うなぎ専門店、うな豊(とよ)さんの、食べ物への敬意と、自らの売り上げだけを考えることなく、資源を持続可能にしようとする姿勢を見習いたい。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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